第3話 聖王大聖女のお仕事
聖王大聖女に就任して数日。
ソフィアの生活は一変していた。
朝。
目を覚ます。
朝食を済ませる。
そして、そのまま執務室へ向かう。
「おはようございます」
部屋へ入った瞬間、秘書が恭しく一礼した。
「本日の予定でございます」
机へ、一冊の分厚い予定表が置かれる。
ソフィアは恐る恐るページを開いた。
「えっと……」
「午前中は各国との外交会議」
「午後は教会運営会議」
「その後は災害対策本部との打ち合わせ」
「夕方から光魔法研究」
「夜は教皇様の補佐……」
読み進めるたびに表情が固まっていく。
「毎日これなんですか……?」
「はい」
秘書はにこやかに頷いた。
「聖王大聖女のお仕事ですので」
ソフィアは机へ視線を落とす。
外交。
教会運営。
災害対応。
光魔法研究。
教皇補佐。
もちろん、どれも大切な仕事だった。
世界中の人々を守るために必要な仕事ばかりである。
だから断るつもりはない。
ないのだが。
「仕事、多くありませんか……」
思わず本音が漏れた。
秘書は少し困ったように笑う。
「歴代の大聖女様方は、お一人で全てを担当されることはありませんでした」
「えっ?」
「ですが、聖王大聖女様は教会最高位のお立場ですので」
「全部なんですね……」
「はい」
ソフィアは静かに天井を見上げた。
「頑張ります……」
その小さな呟きを聞いた秘書は、思わず苦笑する。
聖王大聖女。
世界中の誰もが憧れる、史上初の称号。
その実態は――。
誰よりも仕事が多い役職だった。




