第41話 荷が重すぎます
翌日。
休暇を終えたソフィアは、教皇執務室を訪れていた。
窓から差し込む朝日が、静かな部屋を優しく照らしている。
サンセリテは穏やかな笑みを浮かべながら口を開いた。
「休暇はいかがでしたか?」
ソフィアも柔らかく微笑む。
「とても充実していました」
「街を歩いて、本を読んで、お料理もして……」
「最後には、少し騒ぎもありましたけど」
二人は思わず笑い合う。
しばらく穏やかな時間が流れる。
やがてソフィアは、少しだけ俯いた。
「サンセリテ様」
「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
ソフィアは膝の上で手を重ね、小さく息を吸う。
「聖王大聖女は……」
「私には荷が重すぎます」
静かな声だった。
「私は、歴代の大聖女様方のような人間ではありません」
「光魔法も、決して突出しているわけではありません」
「皆さんが思っているような、立派な聖女ではないんです」
休暇中、街で人々から向けられた尊敬の眼差しが脳裏をよぎる。
聖王様。
聖王大聖女様。
その呼び名を聞くたび、胸が苦しくなった。
「本当は……」
「皆さんが思っているほど、大した人間ではないんです」
ソフィアは自嘲気味に微笑む。
「だから、この肩書きは……」
「私には、荷が重すぎます」
部屋は静まり返る。
サンセリテは何も言わず、静かにソフィアを見つめていた。




