第38話 魔法石暴走
カタカタカタカタッ!
店内へ並ぶ魔道具が、一斉に激しく震え始めた。
「なっ!?」
店員の表情が青ざめる。
「どうして急に……!」
照明。
送風機。
給湯器。
魔法石を動力源とする魔道具すべてが、不規則に魔力を放出し始めていた。
店内へ熱風が吹き荒れる。
火花が飛び散る。
悲鳴が上がった。
「きゃあっ!」
「危ない!」
「逃げろ!」
客たちは慌てて出口へ殺到する。
ソフィアは振動する魔道具を見つめ、小さく呟いた。
「違います……」
店員が振り返る。
「え?」
ソフィアは、一つの魔道具を指差した。
「魔法石ではありません」
「器になっている魔水晶です」
店員は目を凝らす。
「あっ……!」
透明な魔水晶の表面へ、小さな亀裂が入っていた。
「そんな……」
「昨日点検したばかりなのに……!」
ソフィアは静かに説明する。
「魔法石は大量の魔力を放出します」
「ですが、それを安定させるのが魔水晶です」
「魔水晶へ亀裂が入ると、魔力の流れを制御できなくなります」
その瞬間だった。
ビシッ!
亀裂が大きく広がる。
ゴォォォォッ!
魔法石が暴走を始める。
「まずい!」
店員が叫ぶ。
「皆さん、店の外へ!」
客たちは我先に避難する。
ソフィアも避難を促した。
「慌てなくて大丈夫です」
「順番に避難してください!」
やがて店内から人影が消える。
……はずだった。
「ママぁ!」
幼い子どもの泣き声が響く。
店の奥。
棚の陰に、小さな男の子が一人、取り残されていた。
暴走する魔法石。
爆発まで、もう時間は残されていない。
ソフィアは迷うことなく、その子へ駆け出した。




