第37話 魔道具店
休日。
七日目。
市場を歩いていたソフィアは、一軒の新しいお店の前で足を止めた。
「魔道具専門店……ですか」
店先には様々な生活魔道具が並んでいる。
自動でお湯を沸かすポット。
室内を涼しくする送風機。
明かりを灯す照明具。
どれも一般家庭向けの便利な魔道具だった。
「少し見ていきましょう」
店内へ入ると、若い店員が笑顔で迎える。
「いらっしゃいませ!」
「何か気になるものはございますか?」
ソフィアは一つの卓上ランプを手に取った。
「綺麗ですね」
「こちらは魔法石式になります」
「魔法石式ですか?」
店員は頷いた。
「はい。昔の魔道具は魔術師が直接魔力を流さないと動きませんでした」
「ですが現在は魔法石が動力源になっていますので、魔法が使えない方でも簡単に使えるんですよ」
「なるほど」
ソフィアは感心したように頷く。
「こちらの中へ入っているのが魔法石です」
店員は小さな赤い結晶を見せる。
「火属性の魔法石ですね」
「魔法石は単一属性の魔粒子だけを蓄えた特殊な結晶です」
「通常の魔石より効率良く魔力を放出できますので、魔道具の動力として広く利用されています」
ソフィアは興味深そうに結晶を見つめた。
「では、魔力を使い切るとどうなるのですか?」
「魔水晶になります」
店員は透明な結晶を取り出す。
「こちらです」
「内部の魔力は空になっていますが、結晶そのものは壊れていません」
「再び魔力を充填すれば、何度でも魔法石として使えます」
「とても合理的なんですね」
「ええ」
「最近は魔法石式の魔道具が主流になっています」
ソフィアは店内を見回した。
「本当に便利な時代になりましたね」
その時だった。
カタカタ……
一つの照明具が小さく震え始める。
「……あれ?」
店員が首を傾げる。
次の瞬間。
カタカタカタカタッ!!
店内に並ぶ魔道具が、一斉に激しく振動を始めた。
「なっ……!?」
異変に気付いた店員の顔から、みるみる血の気が引いていくのだった。




