第36話 今日は絶対遊びます!
休日。
七日目。
休暇、最終日。
朝日が差し込む私室で、ソフィアは鏡の前へ立っていた。
両手を軽く握り、小さく気合いを入れる。
「今日は絶対に遊びます!」
昨日。
サンセリテと約束した。
休むのも仕事。
今日は仕事を忘れ、一人の女の子として休日を楽しむこと。
「今日は仕事禁止です」
自分へ言い聞かせるように頷く。
ソフィアは長い銀髪を後ろで一つにまとめた。
その上から、つばの広い帽子を被る。
さらに丸眼鏡を掛け、フード付きの外套を羽織る。
鏡に映るのは、どこにでもいそうな旅人風の女性だった。
「これなら大丈夫ですね」
小さく頷き、身だしなみを整える。
王都の大通りは、朝から多くの人で賑わっている。
露店。
パン屋。
花屋。
子どもたちの笑い声。
いつもは馬車の窓から眺めるだけだった景色を、今日はゆっくり歩いて楽しむ。
「今日は普通の女の子として楽しみましょう」
そう口にしてから、少しだけ首を傾げた。
「まあ……」
「普通の女の子と言われても、よく分からないんですけどね」
思わず一人で苦笑する。
それでも今日は考えすぎない。
気になったお店へ入って。
気になった景色を眺めて。
気になったものを楽しむ。
そんな一日にしよう。
「それでは、行ってきます」
ソフィアは穏やかな笑みを浮かべながら、休日最後の一日を楽しむため、王都の街へと歩き出すのだった。




