第32話 勉強しましょう
午前中。
私室で紅茶を飲みながら過ごしていたソフィアは、小さく頷いた。
「そうですね」
「勉強しましょう」
せっかくの休日。
何もしないのは、どこか落ち着かない。
勉強なら、自分のためにも、人々のためにもなる。
そう思い立ち、ソフィアは教会の大図書館へ向かった。
歴代の聖女や魔術師たちが集めた、膨大な蔵書が並ぶ静かな空間。
本棚には、
魔法理論。
魔法式。
魔法陣。
魔道具工学。
歴史書。
古代魔術史。
様々な専門書が整然と並んでいる。
「今日は、こちらにしましょう」
ソフィアは一冊の魔術書を手に取った。
題名は、
『現代魔法式概論』
閲覧席へ腰を下ろし、静かにページをめくる。
「なるほど……」
「魔法式を少し改良するだけで、消費魔力を抑えられるんですね」
次に手に取ったのは、
『魔道具工学入門』
「こちらも面白そうです」
魔法石による魔力供給。
魔法陣の構造。
魔道具の仕組み。
どれも興味深く、ページをめくる手が止まらない。
さらに。
『古代魔術史』
三千年前の魔術体系。
失われた古代技術。
現代へ受け継がれなかった魔法理論。
「昔の方々は、本当に素晴らしいですね」
感心しながら読み進める。
新しい知識を得るたびに、胸が少しだけ高鳴る。
勉強は嫌いではない。
むしろ好きだった。
「勉強なら、無駄になりませんね」
そう呟くと、ソフィアは再び本へ視線を落とした。
――この時はまだ。
その勉強が、いつの間にか”仕事”へ変わっていくことに、本人はまだ気付いていなかった。




