第29話 一人ご飯
料理を食べ終えたソフィアは、食器を洗い終えると、厨房を見回した。
調理台。
まな板。
包丁。
使った道具はすべて元の場所へ戻してある。
布巾で水滴を丁寧に拭き取り、小さく頷いた。
「立つ鳥跡を濁さず、ですね」
綺麗になった厨房を見て、自然と笑みがこぼれる。
料理は少し失敗してしまった。
火加減が難しく、少しだけ焦げてしまったのだ。
「もう少し綺麗に焼ければよかったですね」
苦笑しながら、お皿を持って私室へ戻る。
窓際の小さな机へ料理を並べると、静かに手を合わせた。
「いただきます」
意外に思われることも多いが、教会では肉食は禁止されていない。
生きるということは、命をいただくということ。
その尊さを忘れず、感謝して食事をいただくよう教えられている。
ソフィアもまた、聖女候補となった日、一つの誓いを立てた。
――この身は、人々のために尽くす。
――この命を、世のため、人のために使い切る。
だから食事は、楽しみのためではない。
明日も誰かを救うための力を得る、大切な時間。
野菜だけでは十分な活力は得られない。
だからこそ、肉や魚も感謝していただく。
そんな教えを、ソフィアは今も大切にしていた。
一口、料理を口へ運ぶ。
「……美味しいです」
少し焦げてしまったけれど、自分で作った料理はどこか特別な味がした。
思わず頬が緩む。
「また、作ってみましょう」
そう呟きながら、ソフィアは穏やかな夜を過ごすのだった。




