第28話 料理
その日の夜。
ソフィアは教会の寄宿舎にある共用厨房を訪れていた。
「せっかくのお休みですし……」
「今日は、お料理に挑戦してみましょう」
普段、この厨房は神官や修道女たちが自由に利用している。
もちろん、ソフィアも利用することはできる。
もっとも――
「いつ以来でしょう……」
ソフィアは苦笑する。
聖王大聖女となってからは仕事に追われる毎日。
食事は給仕や秘書が用意してくれるため、自分で料理をする機会はほとんどなかった。
「女性として、お料理くらいはできなければ恥ずかしいですよね」
料理本を開き、ぱらぱらとページをめくる。
「さて……」
「何を作りましょうか」
その時だった。
「せ、聖王大聖女様!?」
厨房にいた修道女たちが、一斉に立ち上がる。
「どうしてこちらへ!?」
ソフィアはきょとんと首を傾げた。
「今日は、お料理を作ろうかと」
その一言で、修道女たちの表情が変わる。
「お、おやめください!」
「私どもがお作りします!」
「聖王大聖女様に包丁など持たせられません!」
口々に止められ、ソフィアは思わず苦笑した。
「いいんですよ」
「今日は休日ですから」
「たまには、自分で作ってみたいんです」
修道女たちは顔を見合わせる。
「で、ですが……」
ソフィアは優しく微笑んだ。
「失敗しても、それも勉強です」
その笑顔に押され、修道女たちはようやく観念したように苦笑する。
「……分かりました」
「ですが、危なくなったら、すぐお手伝いしますからね」
「はい」
ソフィアは嬉しそうに頷き、料理本をもう一度開いた。
「さて……」
「何を作りましょうか」




