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史上初の聖王大聖女ですが、休暇の過ごし方が分かりません!!  作者: Atelier Lotus


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第1話 聖王大聖女

 ルミエール教会総本山。


 世界各国の国王や王族、各教会の代表者、数多くの聖職者たちが大聖堂へ集っていた。


 祭壇へ、一人のエルフがゆっくりと歩み出る。


 現教皇――サンセリテ。


 数百年にわたり教会を導いてきた、世界最高位の聖職者である。


 大聖堂を見渡したサンセリテは、静かに口を開いた。


「本日ここに、新たな時代の始まりを宣言します」


 場内が静まり返る。


「彼女は現代最高峰の光魔法使い」


「数々の奇跡を成し遂げ、人々を救い続けてきました」


「人は彼女を――」


「『大聖女ミュゲの再来』と呼びます」


 どよめきが広がる。


 伝説の大聖女。


 千年にも及ぶ魔王時代へ終止符を打った英雄。


 その名を「再来」と称される者など、歴史上存在しなかった。


 しかし、サンセリテは続ける。


「そして」


「私は、もう一つの称号を贈ります」


 祭壇の前へ立つ、一人の女性へ視線を向けた。


 二十三歳。


 現代最高峰の光魔法使い。


 聖女ソフィア・アルテミス。


「彼女は、人々を救うだけではありません」


「人々へ寄り添い」


「人々の未来を照らし続けました」


「その姿は」


「まさに『初代大聖女エリアネの再来』」


 再び、大聖堂がどよめいた。


 世界へ平和をもたらした始まりの大聖女。


 教会の歴史そのものとも言える存在。


 二人の大聖女の名を同時に冠する者など、前代未聞だった。


 サンセリテは厳かに宣言する。


「よって」


「本日をもって、ソフィア・アルテミスへ」


「史上初」


「聖王大聖女の称号を授けます」


 その瞬間。


 大聖堂は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。


「おおおっ!」


「史上初の聖王大聖女……!」


「まさに新たな教会の歴史だ!」


 誰もが祝福する中。


 当の本人だけは、小さく首を傾げていた。


「……あの」


 遠慮がちに手を挙げる。


「聖王って何ですか?」


 一瞬で、大聖堂が静まり返る。


 ソフィアは困ったように続けた。


「それと……」


「二回も『聖』って付いてますよね……?」


 その場にいた全員が思わず顔を見合わせた。


 そんなことを気にする者は、世界中で本人しかいない。


 サンセリテだけが、穏やかに微笑む。


「後ほど、ゆっくり説明しましょう」


「は、はい……」


 よく分からないまま、ソフィアは頷いた。


 ◇


 盛大な就任式を終えたソフィアは、ようやく自室へ戻ってきた。


 部屋の扉を閉めるなり、大きく息を吐く。


「はぁぁぁ……」


 張り詰めていた緊張の糸が、一気にほどける。


 そのまま靴を脱ぎ、ベッドへ勢いよく倒れ込んだ。


「うぅぅ……」


 柔らかな布団へ顔を埋めながら、両足をばたばたと動かす。


「聖王大聖女って何ですかぁ……」


 ごろん、と仰向けになる。


 天井を見つめ、小さく呟いた。


「聖王って何なんですか……」


「そもそも」


「二回も『聖』って付いてますよね……」


 意味が分からない。


 大聖女なら分かる。


 聖者も分かる。


 だが、聖王大聖女とは一体何なのだろう。


「長すぎませんか……」


「名乗るだけで息切れしそうです……」


 もう一度、ごろん、と寝返りを打つ。


「それに……」


「私には荷が重すぎますよぉ……」


 枕へ顔を埋める。


 就任式では必死に笑顔を作っていた。


 けれど、本当は今にも逃げ出したい気分だった。


 現代最高峰の光魔法使い。


 史上初の聖王大聖女。


 周囲が向ける期待は、あまりにも大きい。


「エリアネ様やミュゲ様の再来だなんて……」


「そんなの、絶対に違います……」


 布団をぎゅっと抱き締める。


 幼い頃、憧れた聖女。


 二十三歳になった今、その夢は確かに叶った。


 けれど。


 その夢は、想像していたよりもずっと重たかった。

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