第26話 ロマンス小説
本棚の奥から見つけた一冊の小説。
ソフィアはソファへ腰掛けると、ゆっくりと表紙を開いた。
「少しだけ……読んでみましょう」
最初のページをめくる。
物語の主人公は、一人の村娘。
ある日、森で薬草を採っていた村娘は、突然魔物に襲われる。
絶体絶命。
その時だった。
一人の王国騎士が颯爽と現れた。
剣を抜き放ち、瞬く間に魔物を討ち倒す。
「もう大丈夫です」
差し伸べられたその手。
優しく微笑む騎士の姿に、村娘は恋へ落ちた。
「素敵です……」
ソフィアは思わず頬を緩める。
しかし。
二人の間には、大きな身分の差があった。
王国へ仕える騎士。
名もなき村で暮らす少女。
周囲は誰も二人の恋を認めない。
何度も引き離され。
何度も諦めようとする。
それでも。
二人は互いを想い続けた。
そして物語の終盤。
騎士は剣を置き。
村娘は故郷を離れる。
二人は手を取り合い、誰も知らない土地へ旅立った。
身分も。
名誉も。
すべてを捨てて。
愛する人と生きる道を選んだ。
物語の最後。
『身分ではなく、人を愛した』
『だから二人は、世界で一番幸せだった』
ぱたり、と本を閉じる。
ソフィアの頬を、一筋の涙が伝った。
「うぅ……」
「よかったです……」
涙は止まらない。
「身分なんて関係なく……」
「結ばれて、本当によかったです……」
ハンカチで涙を拭う。
しかし、次から次へと涙が溢れてくる。
「素敵なお話でした……」
しばらくの間。
ソフィアは一人、幸せな結末に涙を流し続けるのだった。




