第21話 恋って素敵ですね
劇場を出ても、ソフィアの目はまだ少し赤かった。
「恋って……」
夕暮れの街を歩きながら、小さく呟く。
「素敵ですね」
互いを想い合い。
支え合い。
困難を乗り越え。
最後に幸せを掴む。
そんな二人の姿は、とても眩しく見えた。
「少しだけ……」
「憧れます」
思わず頬が緩む。
そんな時、一軒の本屋が目に入った。
「あっ」
店先には大きく並べられた本がある。
『大人気ロマンス劇『永遠の約束』小説版』
「小説もあるんですね」
ソフィアは嬉しそうに店内へ入った。
棚には第一巻から最終巻まで、綺麗に並んでいる。
「全部揃っているんですね」
少しだけ迷う。
「続きが気になりますし……」
「何度でも読み返したいですから」
小さく頷いた。
「全部ください」
店員は少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに笑顔になる。
「ありがとうございます」
一冊ずつ丁寧に紙袋へ入れていく。
会計を済ませようとした、その時だった。
店員はソフィアの顔を見るなり、優しく微笑んだ。
「あの劇をご覧になったんですね」
「えっ?」
ソフィアはきょとんとする。
「目、真っ赤ですよ」
「きっと、いっぱい泣かれたんでしょう?」
「……はい」
少し恥ずかしくなって頷く。
店員はくすりと笑った。
「分かります」
「私も初めて観た時は、同じでしたから」
「本当に良いお話ですよね」
その言葉を聞いた瞬間。
劇の最後の場面が脳裏に蘇る。
幸せそうに笑う主人公たち。
祝福の鐘。
涙ながらの誓い。
「うぅ……」
ぽろり。
また涙が零れた。
「あっ、ごめんなさい!」
ソフィアは慌てて目元を拭く。
店員は苦笑しながら、そっとハンカチを差し出した。
「思い出しちゃいました?」
「……はい」
ソフィアは照れくさそうに笑う。
「何度思い出しても……素敵なお話です」
店員も優しく微笑む。
「ぜひ、小説でも楽しんでください」
「ありがとうございます」
ソフィアは紙袋を大切そうに抱きしめた。
中には、『永遠の約束』全巻。
恋って、本当に素敵なんですね。
そんなことを思いながら、ソフィアは夕暮れの街をゆっくりと歩いていくのだった。




