第19話 恋愛劇
市場を歩いたソフィアは、街案内に載っていた劇場へやって来た。
劇場の前には、多くの人が集まっている。
「人気なんですね」
入口の大きな看板へ目を向ける。
『本日公演 永遠の約束』
その横には、さらに大きく書かれていた。
『全ナルシス王国民が泣いた!』
ソフィアはその言葉をじっと見つめる。
「全ナルシス王国民……?」
少し考える。
「本当に泣けるのでしょうか?」
首を傾げた。
「流石に全員は言い過ぎのような気もしますが……」
しばらく考え込む。
「ですが」
「これだけ人気なのですから、本当に泣いてしまうのかもしれません」
ソフィアは観劇券を一枚購入し、劇場の中へ入った。
席へ腰を下ろす。
周囲を見渡せば、若い女性や恋人同士の姿が多い。
皆、開演を心待ちにしているようだった。
ソフィアは膝の上へパンフレットを広げる。
「これが巷で人気のロマンス劇なんですね」
あらすじへ目を通す。
身分違いの恋。
すれ違い。
困難を乗り越えながら育まれていく愛の物語。
「恋愛がテーマなのですね」
恋愛。
それは本で読んだことはある。
けれど、恋愛劇を観るのは初めてだった。
「楽しみです」
そう呟いた時。
劇場の照明がゆっくりと落ちていく。
静寂が訪れる。
やがて幕が上がり、一つの恋物語が始まった。




