第18話 市場
人気スイーツ店を後にしたソフィアは、王都市場へやって来ていた。
市場は大勢の人々で賑わっている。
屋台からは美味しそうな香りが漂い、商人たちの威勢の良い声が響いていた。
「活気がありますね」
ソフィアは辺りを見回す。
その時、ふと不安になる。
「万が一……」
「この変装でも気付かれたら怖いですね」
帽子を少し深く被る。
それでも何となく心配になり、近くの屋台でフード付きの上着を見つけた。
「これをください」
その場で羽織り、鏡代わりに店の窓を覗く。
「これなら……」
「流石に大丈夫でしょう」
ようやく安心したソフィアは、市場を歩き始めた。
八百屋。
花屋。
雑貨屋。
露店。
どの店も活気に溢れている。
行き交う人々の姿も様々だった。
楽しそうに買い物をする女性たち。
腕を組みながら歩く恋人同士。
親子で笑い合う家族。
その光景を見つめながら、ソフィアは小さく呟く。
「普通の女性は……」
「こうやって過ごしていらっしゃるんですね」
何だか少しだけ羨ましかった。
その時だった。
「あっ」
一軒の露店が目に入る。
色々な小物が並ぶ中に、一際目立つ商品があった。
『祝・史上初! 聖王大聖女就任記念』
「…………」
ソフィアは固まった。
よく見ると。
髪飾り。
木彫りの置物。
小さな人形。
さらには「聖王大聖女饅頭」まで並んでいる。
「恥ずかしいです……」
思わず顔を覆う。
そして、もう一つ気付く。
「というか……」
「私、許可を出した覚えがないんですけど!?」
もちろん、その小さな抗議は誰にも届かなかった。
市場には今日も、平和な笑い声が響いていた。




