第17話 人気スイーツ店
街案内を頼りに歩いていると、一軒の人気スイーツ店が見えてきた。
店内は甘い香りに包まれ、多くのお客さんで賑わっている。
「ここですね」
ソフィアは少し緊張しながら店内へ入った。
ショーケースには、色とりどりのケーキが並んでいる。
「わぁ……」
思わず目を輝かせる。
「ショコラ」
「モンブラン」
「オペラ」
「こちらも美味しそうですね……」
どれも魅力的だった。
しばらくショーケースの前で悩む。
「ですが……」
ソフィアは財布を取り出した。
「一応、聖職者でも職務に応じたお給金はいただいているんですけど」
「ほとんど使う暇がないんですよね」
毎日仕事。
休みもほとんどなかった。
欲しい物を買う機会も、街へ出る機会もない。
財布の中には、お金がそのまま残っていた。
「今日くらいは」
「使っても誰も怒りませんよね?」
少しだけ周りを見回す。
誰も見ていない。
「……よし」
ソフィアは小さく頷いた。
「全部ください」
◇
窓際の席。
テーブルには、色とりどりのケーキが並んでいた。
「いただきます」
まずはショコラを一口。
「……!」
目を大きく見開く。
「美味しいです……」
続いてモンブラン。
オペラ。
季節のタルト。
どれも幸せな味だった。
「幸せです……」
自然と笑みがこぼれる。
その時だった。
「ねぇ」
「あの人……」
「聖王様に似てない?」
近くの席から、ひそひそ声が聞こえてきた。
ソフィアの手がぴたりと止まる。
「えっ……」
「まさか」
「聖王大聖女様が、こんなスイーツ店へ来るわけないじゃない」
「それもそうね」
「ははは」
二人は笑いながら話を終えた。
ソフィアは、ほっと胸を撫で下ろす。
(危なかったです……)
背中を一筋の冷たい汗が流れる。
(お願いですから……)
(今日くらい、休ませてください……)
そう願いながら、ソフィアはそっとショコラをもう一口頬張った。




