85話 銀髪の…。
85話 銀髪の…。
緑の爽やかな草原…蹄の音を抑制しサッとした音に変えていた。
低く垂れ込めた雲の下、遠く…前に人影が見えてくる。
風が砂埃を巻き上げ、ターサーは目を細めながら馬を走らせ、腰のホルスター、ハンドガンに手を掛ける。
ターサー「…(推定5.2feet …武器は杖…魔法使いか…?)」
近付くに連れて姿が鮮明になっていく。
髪が銀色、ショートヘア、銀色の瞳、華奢、美しい顔立ち、フリフリした袖で肩の露出した服、狂暴な敵には見えなかった。
ターサーは旅人だと判断しその場を走りすぎようとする、そんな時だった。
???「っ…!ちょ…ちょっと待って!」
ターサーは呼び止められ再び銃に手を掛けターンするように馬を急停止する、馬は地面に跡を残しながら止まる。
ターサー「なんだ」
ターサーの声は警戒していることを一発で伝える。
???「ボ…ボクは怪しい人じゃないよ!」
杖を持ちながらも手を上げる目の前の少年。
ターサー「…何故俺を止めた?」
???「あ…っと…その…ボク…数日間ずっと放浪してるんだけど…全然進展なくて…」
ターサーは目を細めながら警戒を解かずに。
ターサー「ここら辺には町の1つない、地図は持ってないのか」
少年は目を逸らしほほを赤めながら。
???「……ない」
ターサー「…そうか……」
ターサーは考えるように顎を撫でる。
ターサー「わかった…乗れ…」
ターサーは帽子を前の方に移動させ優しく馬の後ろを叩く。
???「あ…ありがとう…お兄さんは…魔法使い…じゃないよね?でも…凄い魔力こもった帽子…」
少年は乗らずに不思議そうに帽子を見ている。
ターサー「いや、これは…」
ターサーが答えに困っていると少年はよっこらしょと言わんばかりに乗ってくる。
ターサー「名前は」
ターサーはゆっくり馬を走らせて首を後ろに向けそう聞いた。
アルル「え?あ…アルル…ボクの名前はアルル…お兄さんは?」
アルルは首を傾げて聞いてくる。
ターサー「ターサーだ…」
アルル「なるほど…ターサーくんは…」
ターサー「何?」
アルル「え…だからターサーくんは…」
ターサー「ターサー"くん"?」
どちらも謎の生物を見るかのように目を合わせ続ける。
アルル「あ、ごめん…えっと"ターサーくん"は…」
ターサー「何が変わったんだ」
…
しばらく馬を走らせていると。
アルル「はぁー…やっぱり馬って快適だねー!よーしよし!良い子だよー!」
アルルは少し高い声で背後に乗りながら馬を撫でている。
馬「ヒヒン…」
馬が鳴く。
アルル「あ…この子お腹減ってるみたい」
ターサー「分かるのか?」
アルル「そう言ってる…」
ターサー「え?」
アルル「だから、そう言ってるんだってー!」
アルルは少しジト目になりながら言う。
ターサー「……そうか…」
ターサーはゆっくり馬を止めて。
草原の中に一本だけ立つ木が葉を揺らしている。
ターサーはその木をチラリと見る。
ターサー「馬に餌をあげがてら…少し休もう」
アルルは機嫌良く手を上げ
アルル「賛成ー!」
ターサー「…。」
…
馬に乗せたPITのコンパクトな椅子を二つ置きターサーは片方に座りアルルに1つ袋を差し出す。
ターサー「ん…」
アルル「なにこれ」
ターサー「干し草だ…言葉が分かるんだろ?だったらお前があげて翻訳してみろ」
ターサーは差し出した干し草の入った袋をせかすようにもう一度揺らす。
アルル「…いいけど」
アルルはゆっくりそれを取り干し草を取り出して馬の口に近付ける。
アルル「ほーらご飯だよー…こんな貧相なご飯でごめんねー…」
ターサー「貧相で悪かったな!」
アルル「ふふっ…」
馬はアルルの手に乗せられた干し草を食べていく。
ターサー「で…なんて言ってる?」
アルル「えーっと…[ヒヒン!ヒヒン!美味しい!美味しい!ヒヒン!ヒヒン!]だってー!」
ターサー「…バカにしてるな?」
アルル「…バレた?」
アルルはクスッと笑いながら。
アルル「でもまぁ…本当の所は、結構満足してるみたい、なんなら好物二位だってー!」
ターサー「そんな事まで分かるのか?」
ターサーは感心したように、少し笑いながら。
ターサー「一位は?」
アルル「んー?なるほど…クッキーだって!」
ターサー「誰が食べさせたんだ…」
…
その後、再び馬を走らせながら。
ターサー「結局…どこに向かえば良い」
アルルは少し言いにくそうにしながら、しがみつく手に力をいれ。
アルル「ボクに旅向いてなかったし…欲を言うと…家まで…」
ターサー「…数日間放浪している事を考えると…家は大分遠い気がするが…」
アルル「うん…」
少し静寂、馬の息と走る音だけが鳴りながら。
ターサー「分かった、仕方ない…少年一人置いて行くわけにはいかないしな」
アルル「は?ストップっ!!!!」
アルルがストップと言うと同時に馬がブレーキを効かせ止まり出す。
ターサー「っ?」
アルル「今なんていった?」
ターサー「…?…分かった、仕方ない…」
アルル「そこな訳ないでしょ!その後!!」
ターサーは戸惑いながら。
ターサー「少年一人置いて─…」
アルル「ボク!!女の子!!間違えないで!!」
ターサーは少し焦るように。
ターサー「そ…そうだったのか…すまん…つい…」
アルル「どこの男が肩出しファッションしてんのよ!!!」
ターサーはゆっくり振り返りまじまじ見る。
ターサー「…確かに…。」
アルルは腕を組み拗ねたようにそっぽ向いて呟く。
アルル「なんでこうも毎回間違われるかな…」
それが聞こえたターサーもまた呟く。
ターサー「やっぱり俺に非はないじゃないか…」
アルル「何か言った!?」
ターサー「いや…何も…」
そうして騒がしい旅が続いた。
馬を走らせること数十分。
会話も途切れ、聞こえるのはあの草を踏む蹄の音と、草を揺らす爽やかな風の音だけだった。
夕日が二人を照らし影を長く伸ばし始めていた頃、アルルがターサーの腰につけた袋から何かはみ出てる事に気付く。
アルル「っ…こ…これ…」
ターサー「…?」
ターサーは馬を走らせながら少し後ろを向く、アルルが自分の腰後ろを見てることに気付く。
アルル「魔法使いの石…」
ターサー「っ?」
アルルの視線の先…それはルリィの遺した赤い宝石のネックレスだった。
ターサー「…珍しいのか?」
アルルはじっくり眺めた後。
アルル「ま、まぁ…ね…ど…どこで手に入れたの?」
ターサー「…それは答えられない…先に言っておくが…盗んだ訳ではない」
アルルは少し戸惑うように。
アルル「え…えと…ボクのお家に本があるから…一緒に調べよっか…」
ターサー「…」
ターサーにとって、新情報を知るチャンスだった。
続く。




