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83話 鼓動

83話 鼓動


ルリィがターサーに伸ばしてた手が落ちる、垂れ下がる。


ターサー「……ルリィ…?」


目を閉じて目元から雫が地面に垂れ落ちる。


ターサー「っ…ルリィ…」


リリー「っ…ん!んんぅ!!」


ターサーはルリィを抱えながら揺らす、反応はない。


ターサー「おい…ルリィ…しっかりしろ!ルリィ!」


ターサーは地面にゆっくりと降ろす。


エプソンは撃たれた肩を抑えながら立ち上がり。


エプソン「…っ…瀕死での魔力酷使…まさか本当に…」


ターサー「っ…ルリィ…!おい!ルリィ!」


ターサーは心臓マッサージをし始める。


エプソン「ターサー…魔力の酷使だ…それは適切な処置じゃない…それに…もう──」


止まらなかった。


ターサー「ルリィっ…しっかりしろ…!ルリィ…おい…頼む…頼むから…」


ターサーは心臓マッサージを続ける。


ターサー「目を覚ませ…ルリィ…!…前と…前と

変わらない…これじゃあ…!」


蘇る声の記憶


???「ター…サー…?どうし…て…」


ターサー「誰かが…またっ…俺の為に…」


ギュッ…ギュッ…ルリィの胸を押し続ける…


それでもルリィの身体は勢いに釣られ少し跳ねるだけだった。


ジェリスはそんなターサーに目を伏せながらリリーに近付いて縄を切る。


縄が切れた瞬間だった、リリーも立ち上がり走り、転び…また立ち上がり走りルリィの元に駆けつける。


リリー「ルリィさん…!ルリィさん!!」


ターサー「っ…ルリィ!ルリィ!」


…その後。


二つの立てられた墓石の前に立っているターサー、ジェリス…リリー…


ジェリスは泣いているリリーをただ抱き締めていた、墓石に目を向けられなかった。


ターサーはそんな二人の前でただ墓石を眺め拳を強く強く握っていた、少し…肩を震わせながら。


色々な声が、記憶が蘇ってくる。


ー記憶ー


ルリィ「ターサーさん…」


ルリィが静寂の中優しい声でターサーに話しかける。


ターサーは目をゆっくり開いて返す。


ターサー「なんだ…」


ルリィ「私…たまに思うんです…誰かを取り戻せる魔法があったら良いな…って…」


…


ルリィ「道はこっち…あなたは強い…大事な人…そう言われる人生を送ってきませんでした…だから…大切な人を失う重み…幼い頃で最後ですけど…分かるんです…ターサーさん…私のお母様魔法の帽子はあなたを受け入れています…だから…ターサーさんを信じてついていきます…これが唯一のお母様の道案内ですから…」


ルリィは純粋な綺麗な女性だった。


そしてそんな女性を全力で守った男も。


ハウィ「は…はぐがぁっ…へ…平気…さ…ルリィ…無事で良かったと言うものだ…は…はは…」


ー


二人、良い人間を二人失った。


ターサー「…」


ただ拳を強く握って、墓を見つめ続け、涙が流れる。


ターサー「……また…代わりに…命が消えた…」


ジェリス「ターサー…」


ターサー「ハウィが…ルリィを守り…ルリィが魔法を使えて…俺を救った…全部繋がって俺"が"救われた…救われてしまった…」


ターサーは顔を動かさずただ涙を流しながら墓を見つめ続けている。


リリー「うっ…うぅっ…」


リリーは耐えられず泣きじゃくる事しか出来なかった…。


ポタ…ポタポタ…


雨が降ってくる、ジェリスはゆっくりとリリーを抱き抱えターサーを一瞬見るも声をかけられず近くの酒場に移動していく。


…


ハウィ邸は全焼…近くの酒場。


酒場の常連は立ってたばこを吸っていたがただ静かだった、ピアノの演奏もない、空気は完全に死んでいた。


ジェリスはただ窓から見える雨の中墓の前に立っているターサーを見ることしか出来なかった。


数分後…


ギィ…酒場のスイングドアが開く。


ずぶ濡れのターサーが静かにジェリスのテーブルに近付きゆっくりと椅子に座る。


皆ターサーを見る、一人の女性は周りに一瞥に何かを持って近付いてくる。


女性「…あの…これ…」


ターサー「…」


ターサーはゆっくり顔を上げる。


女性はゆっくりとテーブル…ターサーの目の前にあの帽子と、もう1つ…赤い宝石のネックレスを置く。


ターサー「…これは…」


女性「遺体を運ぶ時に近くに落ちてたの…きっと…ルリィちゃんのだと思うわ」


酒場のたばこを吸った男がゆっくりと煙を吐きながらカウボーイハットを取り胸に当て。


男「俺は…あの女が来た時…酷い扱いをしちまった…最終的に…あの女のおかげで俺達は助かった…それだってのに…情けない話だぜ…っ…」


男は目を伏せる、そして男が言ったことは町のほぼ全員に当てはまる事だった、この町に来た彼女をよく扱ったのはエプソンとハウィだけだった。


女性「それに…町長……みんなに良くしてくれてた町長が…」


リリー「うぅっ……いなくなっちゃった……」


リリーはゆっくり席から立ち上がり泣きながらターサーの腕に抱きつく。


ターサー「…」


ターサーは無言でただテーブルに置かれたネックレスと帽子を見ることしか出来なかった。


続く

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