77話 トラウマ
ターク「…俺は常に幸せだった…幼い頃に失った両親がいなくなった穴は、徐々に埋まってた…」
グリンス「…」
グリンスは静かに聞く、二人は夜空の星の空の下で丘の端で座りながら。
ー回想ー
15年前、孤児院
俺は徐々に子供ながらも何か不信感があった、いつもは勉強の時間は他の子供達と同じだったのに、いつの日か個室になってた。
それに、ランデルがいない時の問題が明らかにおかしかった。
ハセ「ふむ…これは凄い…」
ハセはタークが字を書いた紙を手に持ち微笑んでいた。
いつもの勉強の時間は算数だとか、字の書き方だとかそんなのだった、だが…いつの日かミステリー小説のトリックかって感じのものを書かされるようになった、この問題はどう対処すべきか…と…。
徐々に徐々に、不信感は増していった、ランデルは勉強の時間現れなくなったし、個室には柄の悪い連中が集まっていた、俺を観察していた。
ターク:4歳「ねぇ…ランデルは…?どこなの?」
ハセ「タークくん…心配する必要はないよ…勉強の時間が終わったら会えるから」
ハセは微笑んでそう言う。
そう言って前は毎日会えてたランデルとは週4日…週3日と…徐々に会えなくなっていった。
なんだか、昔孤児院に初めて来た時の事を思い出した、泣いたよ、俺は永遠に母親に撫でられないって分かったんだから。
ー1年後ー
ターク(5歳)「…ん…」
タークは部屋でどうも寝れなかった、寂しさとその日は雨が降っていたので気分が沈み込んでいたからだ、思考が止まらない。
一方、タークの知らない場所ではランデルとハセが院長の部屋で話していた。
ランデル「…最近、どうしたのですか?少し…柄の悪いような人が来てるようですし…徐々に機械や、備品が新品になってたり…。」
ハセは手を後ろに組ながら雨の当たる窓を見て言う。
ハセ「君にはもう話しても良いだろう…ハーツ夫妻の息子の彼は…特別だ、特別な人間なんだ」
ランデルは目を細めて聞く。
ランデル「…特別…」
ハセ「彼は…賢い、4歳…5歳であんなにも…賢いとは私も予想外だった、子供ならではの純粋な発想なのか、何かは理解できないが」
ランデルは少し食い気味に近付きながら聞く。
ランデル「何の話なんです?」
ハセ「柄の悪い連中…彼らがタークの新しい両親だ」
ランデルはハセに近づく足が自然と止まり眉間にシワを寄せる。
ランデル「なんですって?」
ハセ「契約は済んだ」
ランデル「…契約…?」
ハセは初めて窓を見る身体と頭をランデルに向かせる。
ハセ「彼らはギャザランギャング…壊滅寸前のギャングだ…何故か?統制していたギャランがついこの間抗争で亡くなった、残ったのは数百万ドルと計画の出来ないアホ共だ…」
ランデルは少し怒ったような、焦ったような声でさらに食い気味に聞く。
ランデル「そんな所にタークくんを向かわせるのですか?許されるはずがありません」
ハセ「ランデル…契約は済んだと言ったろう、残った数百万ドルは私の手元に来た、他の子供が綺麗なベット、オモチャ、ご飯を食べられるのは、実質私の判断と…タークくんのおかげだ」
雷が鳴る、点滅、ハセの顔は純粋な笑顔だった、しかし、純粋な悪だった。
ランデル「賛同できません、いくら使ったんですか…?ベット?ご飯?オモチャ?それならまだ少しのはずです…私の貯金で元に戻して返しましょう、今すぐに契約とやらを無効に─」
ハセ「ランデルくん」
ハセもまた食い気味に呟く、冷静な顔で見つめながら。
ハセ「君には話しすぎたみたいだ、しかし簡単に説明しよう、彼らギャングは新たなリーダー候補を手に入れ…私達は、子供達を幸せに出来る」
ハセは手を広げて微笑む。
ランデル「…このクズ…!」
ランデルは怒った様子で院長部屋を出ようとし扉を開ける。
しかし
ランデル「っ…」
目の前には大きな筋肉質の男二人、片方はバットを持ち、もう片方はロープの束を持っていた。
ランデル「何を─…」
ボカッ!!!ランデルは頭を殴られ気を失う。
次の日…
俺は雨の酷かった夜の翌朝、院長に珍しく呼ばれた。
タークは小さい手ながらも院長の部屋のドアをノックする。
返事がなかった、俺は仕方なくドアノブに手を伸ばしてドアを開けた。
そして入っていく。
すると…。
「いー!!新しいボスのお出ましだー!」
「まだガキじゃねぇかよ」
「ふぉー!!俺達も一線を越えたなぁ!!」
「あの強盗計画を書いたのはあのガキなんだぜ!」
見覚えのあるような柄の悪い連中が大勢いた、俺に対して深いな声量で声を上げていた。
俺は足をすくませながらも前に進んでいく、ハセが立っていたからだ。
ハセ「皆、静かに」
ハセは手を上げて周りを静かにさせる、そして俺の前に膝をついて微笑みを見せてくる。
ハセ「君は…いつだって、最高の息子の一人だよ…ターク」
ハセはいつもよりさらに優しく頭を撫でてくれた。
ターク「…うん」
俺は幼いながらもその奇妙さに何か感じていた。
ハセ「だけど、そんな君を僕より愛してくれる新しい両親を見つけたんだ…それが、彼ら」
ターク「えっ…?」
タークはそれを聞いた瞬間に周りを見渡す、これも幼いながらも普通とは思えない両親達だった。
ターク「ぼ…僕…嫌だよ…僕ここにいる、ここにいるもん…」
ハセ「タークくん、君は行かなきゃならない」
それを言った時のハセは既に笑顔じゃなかった、それどころかテーブルからナイフのようなものを取り、近くの柄の悪い男に渡す。
男「任せろ、おい…坊主、今から入団試験はじめっぞ…てめぇの脳みそは頼りになるが、試験は試験だ」
俺は何を言ってるのか分からなかった、脳が混乱していた、いつか…また暖かい家庭に行けると思ってた、しかしこれは違う…違う…違う違う…。
けど周りの歓声も止まらず、男は俺の前にナイフを落とす。
男「拾え…10…9…8…」
ターク「っ…」
俺はそのカウントダウンが脅しだと分かってすぐに拾う。
男「…女を」
男は近くの柄の悪い男にそう言うとなにやらトランシーバーでどこかに連絡を取っていた…その数分後。
柄の悪い男二人がロープので縛られたランデルを連れてきて目の前に押して倒してきた。
ターク「っ!まま!」
タークはナイフをその場に落として駆けつけようとする、が後ろ首を掴まれる。
ターク「うっ」
男「試験だって言ったろーが」
男は再びナイフを持たせてくる、しかし今度は銃を取り出した、俺はヒーロー漫画で見慣れていたからそれが脅威的な物だと理解していた、殺される…と。
ランデル「タークくんっ!」
ランデルは頭に血を流しながらこっちを見てくる、怯えきった顔をしていた。
ターク「っ…!まま!」
しかし周りは相変わらず汚い歓声、銃を突きつけてきている男、ここで再びナイフを離して近付こうとすれば殺されるだろうと分かっていた。
男は銃を俺に突きつけながら言う。
男「刺し殺せ…」
ターク「っ…」
タークの心臓の鼓動が一気に速くなる、その場の雰囲気が本気で殺さないと明日はないと教えてくるからだ、頭が回る感覚、周りの声が聞こえなくなる…
でも、暖かい家庭、スープ…褒めてくれるママ…キャッチボールしてくれるパパ…それがいつかまた手に入るかも…そう考えるとランデルの方へ足が向かっていた。
タークにとって新しいママのランデルだったが、一年だ、少しの欲がタークを動かしていた。
ランデル「タークくん、やめて…やめて…!
やめて!!!!」
ターク「う…うぁっ…うぁぁ…」
「やれぇ!!」「やっちまぇ!」「ぶち殺せ!!」
「ひゃっはっーー!!!!!」
ターク「う…うぁ…うぁぁぁぁ!!!」
ランデル「やめて…やめて!!!」
グサッ!!生暖かい血が顔に…。
ー現在ー
ターク「っ…だから…俺は…」
グリンス「…もういい」
グリンスは再びタークを抱き締めながら頭を撫でていた。
グリンス「…君の過去は、普通じゃない…だから無理もない…君の辛さ、苦しみ、それを考えるだけで私も心が苦しくなる」
タークはグリンスの頭を撫でる手を止めて少し離れる。
グリンス「っ…?」
ターク「…っ…俺はどうすれば良かった…?」
タークは泣きそうなような怯えるような顔で聞く。
グリンス「…それは…」
グリンスは目を下に向けて考える。
グリンス「私の傍に君がいる、この事実だけしか…」
タークは頷きながら。
ターク「分かってんだ…答えなんて…なかったのかもしれない…」
その時。
カッ…カッ…背後から音がする。
グリンス「…?」
ターク「っ…?」
二人は振り返る。
そこには木の杖を地面に叩きながら歩いてくるヨボヨボのお婆さんがいた。
ターク「っ…誰だ…?」
グリンス「何者だ」
婆「そこの…若者…二人よ…」
グリンスとタークは顔を見合せる。
婆「ワシは…マジリカという国から来た…魔法使い、今…過去の話を感じてここに来た…ワシは魔法を使えばさらに長生きできる、しかし…魔法は過去の話をしている人間のみにしか使えない」
ターク「っ…急に来てなんだよ…こいつ」
グリンスは一歩前に出てタークを守るようにして聞く。
グリンス「その魔法は、使ったらどうなる」
婆「過去の追体験じゃ…」
婆は手を合わせて開いて光る石を出してタークに投げ渡す。
ターク「っ…?」
婆「期限は24時間じゃ…それまでに扱え…」
婆はそう言い残すと再び杖を地面に叩きながらどこかに行く、二人が瞬きをした瞬間消えるのだった。
二人は辺りを見渡す、しかし…何処にもいない。
ターク「記憶の…追体験…(俺がまたあの時の記憶を…?)」
タークは手のひらにある渡された石を見ながら。
グリンス「ターク、ひとまず帰還しよう…深く考えない方がいい」
グリンスはタークの手を握って優しく引く。
ターク「……あぁ」
そうして二人はベースキャンプに帰る。
ーベースキャンプー
ゲマナ「あ…帰ってきた…」
タークとグリンスが手を握り合って帰ってくるのを見てゲマナは微笑みを漏らす。
ゲマナ「…やっぱり愛って最高って感じ」
その場で笑って見ていたのはゲマナだけじゃなかった、マールもジェリックも、ルニャ軍団達も…ヴァルドセリーヌも他のハンター達も。
マールは微笑みながら近づく。
マール「お疲れ様です、グリンスさん、タークさん」
ターク「あぁ…」
タークは前とほとんど同じような笑顔を返す、マールはそれにホッとしていた。
そのままタークは少し考えるようにしてマールにいう。
ターク「マール…ゲマナ、ヴァルド、セリーヌ、ジェリックを呼んどいてくれ…話したいことがある」
グリンスはそれを聞いてタークを見る。
グリンス「話すのだな」
ターク「…やめた方がいいかな」
グリンス「君と二人きりの秘密かと」
グリンスはクスッと微笑み続ける。
グリンス「彼ら彼女らはきっと君を理解してくれる、話すことによって君の心が軽くなるのなら止めたりはしない」
ターク「…分かった、話す」
マールは二人を交互に見渡しながら。
マール「真剣な話なのですね、呼んでおきますね」
ターク「ありがとう」
マールはその場でお辞儀して皆を呼びに行く。
…そうしてキャンプの焚き火を囲みながら話したのだった、過去の事と、冷酷な自分のこと。
ゲマナ「ふーん」
最初に声を出したのはゲマナだった。
ゲマナ「別にさ…私達が本当に知ってるのは今のタークだし、気にしないかな」
次にマール。
マール「私もです、タークさんには…酷い過去と、酷い人間時代がありました…でも中身はずっとそれを止めようとしていた、それなら私はその中身のタークさんを信じます」
タークは二人の言葉を聞いてただ目を見開いていた。
しかしそれだけじゃなかった。
ジェリック「正直…すっごい事だけど…君がこの世界に来たのはきっと意味があって、それは君の良い内面が関係する気がするんだ」
ヴァルド「おめぇは弱いけどよ…他は優れてんだ…クズでもやり直せるってとこ、やってやろうぜ」
セリーヌ「…まぁ……あなたなら…なんだって出来るわよ…」
ジェリックはまっすぐ目を見て言って、ヴァルドは少し笑いながら腕を組んで言っていて、セリーヌは目を逸らしながら腰に手をついて言ったいた。
ターク「みんな…」
グリンス「…もう君は一人じゃない」
グリンスはタークの肩に手を置いて。
グリンス「暖かい場所は、ここだ」
グリンスは優しさ純度100%の微笑みを見せてくれた。
タークは涙を堪えながら鼻をすすり。
ターク「あぁっ…そうだなっ」




