75話 闇
ーベースキャンプの医療テントー
グリンス「…すぅ…」
あれから数日がたった、現実世界から持ち込まれた銃は誰のものだったのか、それは不明のままだが、皆それほど気にしていなかった、それよりグリンスが今の状態なことがインパクトがあったのだ。
ジェリック「グリンスが目を覚まさない程なんて…適応されてない銃はかなり驚異的だよ…。」
ヴァルド「ッチ…タークは何してんだ…なんであれっきり来ないんだよ…」
ヴァルドは腕を組みながらイラついた様子でいた。
マール「…最近…タークさんがタークさんらしくないんです…」
マールはグリンスを見ながらそう呟く。
ゲマナ「うん…ヴァルドはいなかったけど…マジでヤバかったよ…ターク…」
ヴァルド「…そんなの見れば分かる…」
セリーヌ「あいつどうしちゃったのよ…もう…」
皆の気が沈む、グリンスが今の状態になった他、タークは様子が変になってしまっていたのだ。
ザッ…ザッ…ザッ…テントの外を誰かが通りかかる音、靴の種類でタークだとセリーヌとヴァルドは気がついた。
ヴァルドは頭を掻いてはテントから出てタークに近付く。
ヴァルド「ターク…何故グリンスの様子を見に来ない…」
ターク「…」
タークはただ無言で振り返る。
ルニャ軍団も遠くから頭だけ出してそれを見ていた。
ターク「その気がないんだよ」
ヴァルド「ない?あぁん?お前の相棒だろうが!」
ターク「お前には分からねぇよヴァルド」
タークがそう言い放った瞬間、ヴァルドがタークの胸元を掴んで持ち上げる。
ヴァルド「お前がそんなにクソ野郎だとはな…」
ターク「で…どうすんだ?投げ飛ばすか?ん?俺は簡単に死ぬ…それが何になる…」
ヴァルド「っ…」
ヴァルドは言葉が出ずに力を緩めて離す。
ターク「ったく…」
タークはそこから去ろうとする、しかし一瞬、グリンスの横たわった姿が見えてしまう。
ターク「クソ…クソクソ!!」
タークは頭を抱えてその場から移動して水の溜まった樽に近付く、そして顔を洗おうと上から覗く、自分が揺れて反射している。
自分の顔を見る…。
…過去
ザー…雨の日だった。
反射している地面を見ていたターク。
孤児院の前。
タークは顔を上げて目の前の女性に目を合わせる、胸元のネームタグはMrs.ランデルと書いてあった。
ターク(幼少期)「ここは?パパと…ママは?」
ランデル「タークくん…今日からタークの家はここだよ…」
目の前の若い女性は傘を差したままタークの目の前にしゃがみこんで優しく微笑みかけた。
ターク「ううん…今日はママとパパとお出掛けするんだよ?僕の誕生日だもん」
ランデル「…そっか…とりあえず…中に入ろ?風邪引いちゃママとパパとお出掛け出来ないよ?」
タークはそんなランデルの提案を聞いて数秒考える。
ターク「うん…」
…ゴロゴロ!!外は雷が鳴っている。
施設に入る…少し設備が全体的に古い、ひび割れたソファー、色が剥がれた本棚、床のタイルにもヒビがある
そしえ目の前には黒いスーツを着た男が立っていた。
胸元に院長:ハセ
と書いてある。
ターク「あの人は…?」
ランデル「あの人はねぇ…ここの偉い人なんだよ?」
ターク「そうなんだ…」
目の前の男は微笑んで近付いてくる。
ハセ「こんにちわ…タークくん」
ターク「こ…こんにちわ…ママとパパは…いつくるの?」
そう聞くとハセはランデルを少し見てからタークの前に膝をつく。
ハセ「タークくんのママとパパは…もう来ないんだ」
ターク「…?来るもん、来るよ!だってまえはけーき買ってきてくれたんだもん!」
ハセ「…」
ハセは少し困ったように。
ハセ「…タークくんのママとパパは…」
「死んだんだよ」
うっ…うあーん!!!
近くのソファーの下で子供らしく丸まって泣いているターク、そこから少し離れてハセとランデルが話していた。
ランデル「あの子の両親は…どうして亡くなったのですか…?」
ハセは雨の降る外を窓から眺めながら。
ハセ「彼の両親はジェンキンス・ハーツとリルア・ハーツだ…」
ランデル「ハーツ…あの研究者の…ですか?」
ハセ「あぁ…彼らは出張先から帰る道中に飛行機事故に遭ってしまった、厳密には…事故じゃないが…」
ハセはゆっくり俯く。
ランデル「どういう意味ですか…それに…あのハーツ夫妻の息子さんがなぜこんな孤児院に…」
ハセ「…」
ハセは俯く。
ハセ「…私が知りたいくらいさ…とにかく…ランデルくん、君に任せたよ…。」
ランデルは俯きながら。
ランデル「分かりました…」
そうして横目で見る…タークは子供らしく丸まりまだ涙を流していた。
ランデル「タークくん…」
ランデルは優しい声をかけて傍に正座する。
ランデル「今から暖かいベットで一緒におねんねしよ?ねっ?」
ターク「っ…ぅっ…ママとがいい…」
ランデル「……。」
やがて泣き疲れて眠ったタークをそっと抱っこして連れていくランデル…。
この孤児院は少し古い、受け入れられる人数が少ないので将来的に意味をなさず潰れる可能性があった、タークは有名な研究者の二人の息子ということで注目されていた、が…その分他の親に受け入れさせるのは問題があった。
孤児院の中でちょっとした特別扱いがあった、タークはタークだけの個室で眠るのだった、初日はランデルにベットに運んでもらい、少しの間傍にいてもらった、タークは一度も起きずに朝を迎えることが出来たのだった。
ー朝ー
回想は過去のまま…15年後に進む
ターク:20歳「ん…」
タークは黒いフレームに白い高級なベットで目を覚ます、いつものタワマンの天井。
ターク「…ふぅ…」
タークはため息を吐いてベットから起き上がる。
今回は黒のシャツにグレーのスーツ、シャツの襟は出して被せている…どれも高級品、そしてコーヒーを淹れてカーテンを開けて景色を見る。
ターク「…(今日も始まったか…)」
ヴー…近くの棚の上に置いていたガラケーが鳴る。
ターク「…」
タークは近付いてコーヒーをゆっくり置いて一呼吸置いてガラケーを開く。
ターク「もしもし…」
電話先「もしもし…ボス」
低く礼儀正しい声だった。
…
タークはいつも通り部下に報告を受けて仕事をしにいく、駐車場に行っては高級車の黒いセダンに乗りエンジンをかける。
ミラーの角度は完璧だったがそれをずらして自分の目を見る。
それは冷たい目だった、自分の中の幼いような心はそれに嫌悪感を抱いていた、しかし…それは巨大すぎた。
駐車場から車が出ていく。
…
ー事務所前ー
車を駐車スペースに止める、街中のビルの五階が事務所だ。
チーン、エレベーターが五階に着くと開く、タークはゆっくりと革靴の音を鳴らして進んでいく。
事務所は大きくはない、目立たない場所、しかし木目調の廊下、赤いカーペット絵や観葉植物、全て完璧に掃除と手入れされている。
タークは革靴を鳴らし続けてゆっくり廊下を歩いて1つの部屋の前で止まる、扉の横に寄りかかった部下に一言。
ターク「ここか?」
男「はい、ボス」
男は仕事の依頼の内容の書かれた小さな紙をタークに渡す。
ターク「分かった」
タークは小さな紙を受けとると次に…手をドアノブにかけて止まり。
ターク「俺がゆっくり壁を二回ノックしたら仕事だ…」
そう言ってから部屋に入る。
部屋には椅子に縛られた男がいた、タークは目の前の一人用の茶色い革のソファーに座り足を組む。
ターク「…さて…」
タークは先ほど貰った一枚の小さな紙を取り出す。
ターク「これはカンペはいらないな…」
タークは真剣な目で言う。
ターク「俺達にもう関わるな…はい、か、いいえ…だ、俺はいいえをおすすめする…
ちなみに…俺達ってのは俺じゃなくて俺のクライアントの事だ…俺は無関係」
男は縛られ、頭から血を流しながらも鋭い目でこう言う。
男「断る」
ターク「そうか…」
タークは一呼吸してまた話し始める。
ターク「あんた…妻と娘がいたな」
男は一瞬で顔を変えて。
男「妻と娘には手を出すな!」
ターク「いやもう殺された、今」
タークは部屋の中にあるカメラの位置を指差す。
男「っ…」
ターク「俺としても心苦しいよ、無関係な娘と妻が殺されたんでね」
男「ふざけるな!」
ターク「ふざけるな」
タークは男に被せるようにそう言った。
ターク「その気持ちは良く分かる、まぁ言わせてもらえば、お前のスパイ業を潔く諦めてたら、スパイにそんな概念あるか知らんが定時に帰って嫁さんと合流できた訳だ…」
男「っ…!このっ…このっ!」
男は悔しさを溜めたような声をし、涙を流しながらロープをほどこうと暴れる…
ターク「……。言っておくが…断った時点で、二人を殺す予定だったらしいが…お前もその一人だ…あと少ししたら殺される…ここで」
男「……」
ターク「だが1つ土産として言っといてやる…クライアントは今お前の妻と娘を拉致するので精一杯で、俺の部下が金を奪い取ったのに気付いてない、組織は潰れるだろうな…」
男「っ…?」
ターク「だからその歯に隠した秘密のデータとやらは俺に渡さなく良い」
男は驚いたような顔で。
男「な…なぜ…」
ターク「部屋に入った瞬間、お前の咬筋の右だけ少し大きく膨らんでいた、何か隠している」
男は縛られたまま俯くように…。
男「…そうか」
ターク「お前から金が出るなら俺の部下でお前の妻と娘の拉致を止めても良かったが、そういう仕事じゃないし…大事な部下が怪我をするのは嫌なもんでね…すまない…」
タークは一息ついて。
ターク「時間だ…」
タークは立ち上がり傍の本棚を…トン…トンっと強めに二回ノックしドアに向かう、入ってくる消音器のついた銃を持った部下と入れ違い部屋を出ていく…。
バッガシャ!…と銃声が聞こえる中タークは歩みを止めずに廊下を歩いていくのだった。
続く




