74話 堕ちて堕ちて
ーベースキャンプー
マール「そう…ですか…」
ヴァルド「あぁ…」
ベースキャンプ…焚き火近くのテーブルに置かれた短剣をヴァルド、セリーヌ、マール、ゲマナ、そしてタークが見る。
ルニャAがクンクンと鼻を動かしながら匂いを確かめる。
ルニャA「確かにグリンスのにゃ…」
ゲマナ「グリンス…何があったの…」
ゲマナがそう呟く。
セリーヌ「間違いなく…襲撃か何か…微塵も刃こぼれしてないから…この短剣は使用してないわね…」
タークは無言でその短剣を見下ろしながら。
ターク「人の仕業だ」
そう呟いた。
ヴァルド「あぁ?」
セリーヌ「ちょっと待って…人?人がグリンスを傷つけられるとでも?普通の狩人でさえ──…」
マール「あり得ます…グリンスさんは人間相手に双剣を抜いたりはしません…つまり…」
ヴァルド「っ…しかし誰が…」
皆が腕を組んでナイフを見つめている。
その時…。
???「皆…一つ可能性があるよ…」
皆がそこを見るとジェリックが真剣な目をしながらこちらに来る。
ヴァルド「可能性…?」
ジェリック「さっきセリーヌが言ってた通り…並みの狩人でもグリンスを傷つけたりするのは困難…でも…もし修正される前の武器だとしたら?」
ターク「っ…!」
タークが真っ先にハッとする。
ターク「他の転生者…」
ジェリックはうなずく。
ジェリック「グリンスがもし…持ってこられた銃で襲われたのだとしたら…生存の確率は…」
ターク「ま…待てよ…」
タークが割り込むように。
ターク「グリンスが死ぬわけねぇだろ…」
ジェリック「でも知ってるだろ…?君が持ってきた銃とか…適応されてなければこの世界のPITの銃より強力で─!」
ドン!!!タークがジェリックの服の胸元を掴み近くの木箱に押さえ付ける。
ターク「グリンスが死ぬわけねぇ!」
周りは呆然としていた。
ジェリック「っ…」
ジェリックも同じだった。
ターク「死んだと思いたければ、勝手に思っておけ、俺は探す」
タークはジェリックから手を離してその場を去る。
ゲマナ「ちょっ…ターク!!」
マール「危険ですよ!!」
ヴァルド「おい!!」
セリーヌ「っ…」
セリーヌが早歩きで近付いてタークの手を掴む、力強い…
タークはそれでも歩くのをやめようとしない。
セリーヌ「いい加減にしなさいよ!」
セリーヌがタークの手を引っ張り投げる、勿論タークは簡単に投げられ身体を地面に打つ。
マール「っ…!」
マールは口に手を当てる。
ゲマナは目を伏せる。
ターク「…」
タークは無言で立ち上がる、そして再び歩き出す。
ヴァルド「っ…」
セリーヌ「っ!ターク!!」
セリーヌは再びタークに近付こうとする…が…
ヴァルド「やめろ…もう…」
ヴァルドが止めにはいる。
ヴァルド「あいつになに言っても止まらねぇ…それこそ殺さない限り絶対に行くぞ…」
セリーヌ「っ…でも…」
セリーヌは悲しそうに呟いてヴァルドに顔を合わせる。
ヴァルド「それに…あいつが諦めてねぇのに…俺らが諦めんのもおかしいだろ」
ゲマナ「っ…そ…その通り…そうだよ!グリンスが簡単に死ぬわけないし!」
マール「…私達も…」
マールとゲマナは顔を合わせて頷く。
ヴァルド「行くぞ…セリーヌ」
セリーヌ「っ…」
セリーヌは顔を逸らしながらもヴァルドに従いついていく。
…そうして時間が経過する、事態とは真逆にのどかな鳥のさえずりが砂漠の外れの緑満点の森に響き渡る。
ササ…草むらを揺らし歩く、そこにいるのはターク。
そこはグリンスの短剣が見つかった場所だ。
ターク「…」
タークは無言で草をかき分けて地面を見ている。
やがてゆっくりしゃがむ。
そして何かを指で拾い上げる。
薬莢だ。
ターク「素人め…」
タークはそれを拾い上げる。
そうしてタークは一度ベースキャンプに戻っていく。
一方…ヴァルド達。
ソニバルドで森の中を移動中。
ゲマナ「もう朝か…グリンスがいないって変な感覚…」
マール「そうですね…」
その時…。
男1「っ…ここら辺のはずだって…探せよ…」
男2「いや…絶対に反対の方角だぜ…ここの草むらは見覚えがねぇよ…」
男3「短剣なんて放っておけよ…」
ヴァルド「おい、そこの奴…」
男1「っ!?おい…な…なんだ?」
ヴァルドとセリーヌは一瞬で挙動不審の男達の怪しさに気付いて武器を手にソニバルドを降りる。
ゲマナとマールも取り囲むようにソニバルドを移動させる。
ヴァルド「見ねぇ顔だな…」
男2「お…俺達は…迷子になったんだよ!こんな所来たことなくてよぉ!」
男3「あ…あぁ…そうだぜ…俺達は…何も知らねぇ…」
セリーヌ「別に何かを聞いた訳じゃないのに…何も知らねぇ…なんて、変な男ね?」
セリーヌ槍を片手に、もう片方の手を腰に怪しむように睨む。
男1「っ…やれ!!」
男達は銃を取り出す、ハンドガンだ、それぞれ種類が違う。
バババン!!銃声が鳴り響く、しかし、離れてもなければ狩人の正面、撃たれる事を認識できる状況では意味がない。
ヴァルドは大剣を盾のように銃弾を弾きながら突進していく。
そして男の一人に近付いては剣を振り表面で吹き飛ばす。
男1「ぐがっ!?」
男の一人がダウンすると他二人は焦りながらも今度はゲマナとマール…戦闘の出来なそうな方を狙う。
ヴァルド「セリーヌ!!」
セリーヌ「はいはい!」
セリーヌはゲマナとマールの前に立ち、槍の先でジャストで弾いていく。
やがて…カチっ!カチっ!
弾が切れる。
ヴァルド「おっと…お前達の魔法は…もう切れちまったようだぜ?」
ヴァルドは大剣を背中にしまって手を腰にかける。
真剣な顔である。
男2「っ…なっ…そのっ…ゆ…許してくれ!」
ヴァルド「とりあえず…」
ヴァルドは男二人を片手に一人ずつ首から軽々持ち上げて。
ヴァルド「俺達の拠点に来てもらうぜ。」
ゲマナ「マール…そっち持って…」
マール「は…はい!」
ゲマナとマールは残りの一人を一緒に持ち上げてソニバルドに乗せる。
…
ーベースキャンプー
タークは椅子に座りながら拾った薬莢を確認している。
その時…
タッタッタッ!と…ソニバルド四匹の足音が聞こえてそちらの方を見る、ヴァルド達が男を連れて来ている。
それに気付いたタークは立ち上がりゆっくり近付いていく。
ヴァルド達はキャンプの端で男たちを縛り膝立ちさせている。
ヴァルド「さてと…何から話してもらうかな…」
ザッ…ザッ…ザッ…足音を立てて近付いてくるターク。
ヴァルド「おい…ターク、何してんだ…ここは俺が…」
タークはただ無言で手のひらをヴァルドに見せて男三人に近付く。
一呼吸置いて薬莢を手に持ち聞く。
ターク「これに見覚えは?」
男1「っ…」
ターク「45、お前のそのズボンに挟んでる銃は、それに見える」
男1「っ…ぅっ…」
ゲマナ「ターク…」
不安そうに見ているゲマナ。
しかしそれはゲマナだけではない。
マール「…」
皆同じだった。
ターク「銃の種類なんてどうでもいい、まず…どこで手に入れた?」
男3「それは──」
ターク「お前には後で他の事を聞く」
タークは食い気味に答えるとすぐ男1に視線を戻す。
男1「……ど…洞窟だ…こんな武器が色々あったんだ…!」
ターク「それはどこだ?」
男1「ひ…東の…砂漠の…丘の近く…」
それを聞いたヴァルド。
ヴァルド「…テンパリン…狩人を何人か向かわせる…」
ヴァルドはそう言い残して早歩きで去る。
タークは近くに置いてある木の棒を手に取る。
ターク「さて、デザートだ、緑髪の女を知ってるか」
男1「…な…なんの事だ」
バキッ!!!次の瞬間、男1が血を垂らして倒れている。
男2「っ…ひっ…」
マール「はっ…タ…タークさん!」
マールは口を抑えながら止めようと歩こうとするもすくんでしまう。
ゲマナ「ちょ…ちょっと…」
セリーヌ「何してるのよ…」
セリーヌはいつものタークと違う様子に足が動かなかった、しかし恐怖ではなかった。
ターク「次だ、緑髪の女は─…」
男2「知ってる!!知ってる!!」
ターク「どこ?」
男2「お…女もさっきの洞窟の中だ!あ…あのバカ…なんで答えなかったんだ…あ…あはは!ほら…言ったから…頼むから…命は…─」
バキッ…木の棒で叩く…簡単に首が折れる。
ゲマナ「っ…酷い…」
男3「っ、こ…答えたじゃねぇか!!な…なんでだよ!」
男3は震えながらタークを見上げている。
ターク「あぁ、そうだな」
バキッ…
マール「っ!」
マールは目も隠していた。
ゲマナはただその光景を見ていた。
セリーヌはただ無言でタークの背中を見ていた。
…
1時間後…。
洞窟の前で立っているターク。
中から聞こえる声。
狩人1「あったぞ!言ってた銃だ!」
ジェリック「まだ未使用だ…だから強力だったんだね…」
ジェリックは銃を持って観察していた。
狩人2「っ!グリンスだ!おい!いたぞ!」
ターク「…!」
タークは小走りで洞窟に入っていく。
ヴァルド「グリンス!」
ターク「っ…」
タークとヴァルド、そしてジェリックも駆け寄る。
ジェリック「脚に被弾してる…」
グリンスは目を瞑っていて呼吸が浅い。
ヴァルド「あいつら…何が目的だったんだ…」
ジェリック「狩人の武器は高価だから…きっとそれだと思う…」
ジェリックは近くに置かれたグリンスの双剣を見ながら言う。
タークは無言で近付いて膝をついてグリンスの
頭を撫でる。
ターク「グリンス…」
ジェリック「タークくん…まだ意識はあるよ…ただ…お腹にも被弾してる、見るからに重傷…グリンスだからこそ耐えてる…苦しんでる状況…」
タークは無言のままグリンスをお姫様抱っこして持ち上げる。
続く。




