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73話 原点

ーガルド族領ー


ピヨピヨ…小鳥のさえずりが聞こえる。


ピシャッ!樽にたまった水で顔を洗う。


グリンス「ふぅ…」


後ろから足音…砂を踏む音。


マール「おはようございます」


グリンス「マールか、おはよう…」


マール「テントにタークさんはいらっしゃいますか?」


グリンスはテントの方向を見て少し考えてから。


グリンス「少ししたら行ってやってくれ…昨日は色々付き合わせたのでな…」


マールは少し目を細めながらメガネを直す。


マール「分かりました…」


一方…テント内では。


グシャッ!グシャッ!


???「ぎゃぁぁぁぁぁ!?!?」


ターク「うっ!?」


タークは飛び起きる…鮮明な夢がそうさせたのだ。


ターク「…(なんでこうも最近は…)」


タークは冷や汗のかいた頭を抑えながら傍に畳まれているシャツを見つけて手に取る。


ボタンを一つ一つ止めている、その時でさえ…。


???「やめて…やめて!!!」


声が聞こえてくる、過去のはずなのに。


ターク「っ…クソ…」


タークはテントを出る。


マール「あ…タークさん」


近くの焚き火の前で座っているグリンスとマールがこちらを見てる。


ターク「…おはよう」


タークは笑顔を見せて焚き火の方へ歩く。


その時…グリンスがクスッと笑いながら立ち上がり近付いてくる。


ターク「…ん?」


グリンス「ボタンがずれているぞ、ターク」


グリンスは微笑みながらタークの胸元、第二ボタンからしたまでボタンを治してくれる。


ターク「っ…すまん…」


グリンス「あぁ」


グリンスは上目遣いで微笑む。


グリンスはタークよりも背が高い、しかし…ボタンを直す時など膝を曲げ、タークより顔を下にした時の上目遣いは破壊力が高かった。


マール「タークさん、昨日の資料なんですが、少し書き漏れがありまして…」


ターク「え?すまん…どこだ?」


マールはタークに資料を見せながら指を指す。


マール「…この…モンスター撃退に使った武器の欄のチェックがなくて…」


ターク「あれ…書かなかったか…」


タークはナイフ…の欄に羽根ペンを近付けてチェックをしようとする…が、ナイフ…連想される。


毎度毎度生温かい血しぶきの感覚が。


ターク「…」


手が震える、チェックマークを書く場所にペンが定まらない。


その時、ぎゅっ…と、グリンスが手を被せてくれる。


グリンス「平気か?ターク…」


ターク「すまん…」


そのままシャッ!とチェックマークを書くをする。


ターク「ふぅ…(なんでこんなに…最近になって…)」


マール「タークさん、なんだか汗が凄いですよ…」


マールが布を額に当ててくれる。


タークは目を少し瞑り。


ターク「そ…そうか?分からないが……ちょっと休んだら治ると思う…その後狩りに行こう、グリンス…」


グリンス「…わかった…。」


タークはゆっくりと焚き火近くの椅子に腰を掛ける、そして目を瞑り記憶の整理をしようとする…だが、睡眠時間が足りなかったのか、精神的な疲れか…いつの間にか居眠りをしていた。


???「ターク!ターク!!!」


ターク「っ!?んっ?」


タークはビクッと身体を揺らして目を覚ます。


目の前にゲマナが立っていた、何やら焦っているようだ。


ターク「な…なんだ?何が?」


ゲマナ「グリンスの帰りが遅いの!」


ターク「は?だって…まだ…」


タークは空を見る…なんと既に夜になっていた。


ターク「っ…(俺はそんなに寝てたのか…いやそれより…グリンス!)」


タークは椅子から急いで立ち上がりベースキャンプの中央に行って見渡す。


辺りは慌ただしい、いつも決まった時間か、少し遅れてくるくらいのグリンスがいないのだ、右の狩人達は話し合っている、左の狩人達は小走りでベースキャンプの中を行ったり来たりして何かしている。


ターク「グリンス?グリンス!!」


いないことは理解しつつも声を出す。


ゲマナ「おかしいよね…マール…」


マール「えぇ…グリンスさんがこんなに遅れるなんて…」


タークは焦りながら二人の元に駆け寄り。


ターク「時間のオーバーはどれくらいだ…?」


マール「…約…三時間です…」


タークは心臓をキュッと締め付けられる。


三時間、グリンスのようなハンターが三時間も遅れているのは確実になにかあった証拠なのだ、タークが来てから狩人は既に二人行方不明になっていたりする、過去の例ではモンスターに連れられて消え…時間と共に骨が見つかった事もある。


ターク「オ…オーケー…オーケー…じゃあ…俺はあの道を…」


タークは振り向いて歩いていこうとする。


バシッ!何かにぶつかって尻をつく。


ターク「っ…くっ…」


顔を上げるとヴァルドがタークを見下ろしている、セリーヌは隣で腕を組んでいる。


ヴァルド「急ぐな…お前が一人で行ったところで死ぬんだろうからよ…」


セリーヌ「マール、私と来て、あと…ルニャちゃん!来なさい!」


ルニャ軍団「「にゃ?にゃ?にゃ?」」


全員がバラバラに背を立てて反応する。


セリーヌ「っ…あなたとあなた…来なさい!」


セリーヌは適当に二匹指を指す。


ルニャG「ニャイサー!」


ルニャD「にゃー!」


ターク「っ…俺は?」


ヴァルド「どうせキャンプで残れと言っても勝手に来るんだろ?俺と来い」


ヴァルドはタークに手をさしのべる。


ターク「ヴァルド…」


マール「私達は残りのルニャさん達を使って西を探します!」


ゲマナ「行こっ…マール」


二人はソニバルドに乗って走っていく。


セリーヌ「モタモタせずに来なさいよ!」


ルニャD「っ…パワハラにゃ…」


ルニャG「言ってる場合じゃないにゃ!クイーンが行方不明にゃ!」


セリーヌは二匹を引き連れて出発する。


ヴァルド「俺達は北を探す…良いか…ターク、グリンスに何があっても平静を保てよ…」


ヴァルドの瞳は本気の目だった、月明かりで輝きがあった。


ターク「………わかったよ」


タークはヴァルドと一緒にソニバルドに乗り北を探りに向かうのだった、他の狩人も総動員である、ベースキャンプ付近は夜でも暗くない、何故なら狩人達が松明やランタンを灯して探しているからだ。


やがて人気のないところまで来るタークとヴァルド。


ターク「っ…どこだ…どこにいる…グリンス!!」


タークは名前を叫ぶ。


ヴァルド「可能性としては…倒れていて返事がないか…それともここにはいないかだ…」


ヴァルドはソニバルドからゆっくりと降りてソニバルドにくくりつけていた大剣を手に取る。


ターク「…何故ここに来たんだ…?」


タークは不安を感じ続けながらソニバルドから降りる。


ヴァルド「前にグリンスが少し遅れた時はここの探索だったらしい…ってことは…可能性があるだろ?」


ターク「そういうことか…」


タークはランタンを手に辺りを照らす。


ヴァルド「ターク、事態は深刻だ」


ターク「っ?」


タークはヴァルドの方へ振り返る。


そこにはヴァルドが膝をついて落ちている何かに明かりを当てて見ている。


ヴァルド「グリンスの短剣だ…」


ターク「っ…」


続く

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