72話 大木の住民
ピヨピヨ…鳥のさえずり、風のせせらぎ…のどかな場所、大きな木の中をくりぬいて家がある、丸太の椅子、木の本棚、テーブル…階段で上に上がれば部屋がある、使わないけど沢山。
頑丈な枝に取り付けるように床があり、不思議なことに上から景色を見渡せる風呂がある、露天風呂、これはマジリカならではなのだ。
そんなのどかな大木の家の二階…開いた窓。
???「すぅ…」
ある女性が眠っていた。
机に本を枕にうつ伏せに。
そこに一匹…パタパタと鳥が羽ばたいてくる、白い鳥、くちばしは青色…美しい鳥。
トントン、そんなくちばしで女性の銀色の綺麗髪の頭を叩く。
長い睫毛がピクリと動きゆっくり目を開ける。
???「ん…なに…?」
その女性は程よいショートヘアーで銀色の瞳をしていた。
…
ーハウィ邸ー
トントン!!今度は強い音。
ジェリス「ったく…なんで俺が壁の修理なんか…」
ジェリスは釘を咥えてネイルハンマーで叩いている。
キッチンにいたルリィは鍋をお玉でかき回しながら言う。
ルリィ「でも、助かりますよー?私じゃあそんな力仕事無理ですもん」
ターサー「シュードのような大きな犯罪はこの町ではあまりないんだ、保安官事務所で居眠りするよりマシなはずだ」
リリーは椅子に乗りテーブルの上を麻のクロスで頑張って拭きながら。
リリー「良いじゃないですかー?ルリィさんみたいな美女のお助けになれるんですよ?」
ルリィ「美女だなんて…大袈裟ですよー…」
ルリィは照れながら微笑む。
ターサー「間違いないな」
ルリィ「…」
ルリィはムッとしてターサーを見る?
ターサー「…?」
ジェリス「まぁ…仕方ない…"ターサー"のいう通り…やることがないしな…」
ルリィは鍋をかき回す速度が上がり、少し呟く。
ルリィ「なんですか…二人して…もう…」
一方…ハウィは…。
エプソン「ハウィ…もう少しでまともに歩けるようになるが…化膿切り取り後だから渡したガーゼを…」
ハウィ「分かっているさ…しかし…君は本当に見たことない医療道具を持っているな…」
ハウィは改めて見渡すような仕草で。
ハウィ「全く…PITの技術とやらは…」
エプソン「個人的に思うに…もっとマジリカにも輸入して欲しいね…ここの医療器具はPITの病院に比べたらクソ以下だ…」
ハウィはため息を吐く。
ハウィ「PITは古いのを送りつけてると聞いたぞ…」
エプソン「…型が落ちてるだけだ」
…
ーハウィ邸ー
ルリィ「はーい♪出来ましたよー♪」
ルリィはお皿にシチューを入れてテーブルに置く。
リリー「わぁー!いただきまーす!」
ルリィのシチューは絶品なのでリリーはフライングする。
ジェリス「あー…ルリィ…スプーンがないが…」
ターサー「俺もだ」
ルリィ「あー…忘れてましたー…ごめんなさーい」
ルリィは明らかに顔に薄く影を浮かべ笑顔で渡す。
ジェリス「ど…どうも…」
ジェリスとターサーは少し顔を見合わせてからシチューに視線を向けて食事をする。
ーガルド族領ー
ターク「…」
無事グリンスとも結ばれた…悩みはなくなったと思っていたタークだったが、気付けばボーッと焚き火の前に座っていた。
何度も流れるのだ。
???「やめて…」
「そいつ殺すだけで認めてやる」
「早くやっちまえ」
「「やーれ!やーれ!やーれ!」」
ブシュッ!!!血が飛び散る、温かい感覚。
ハッとする。
グリンス「ターク」
グリンスはタークの座っているベンチの隣に座る。
ターク「っ…グリンスか…」
グリンス「顔色が悪いが…何かあったのか?」
グリンスは心配そうに顔を傾けて聞いてくる。
ターク「いや…別に…」
グリンスは微笑む。
グリンス「そうか…」
グリンスはタークの身体に手を這わすようにして首後ろに手をかける。
グリンス「…ん」
最近の朝はグリンスが柔らかい表情を向けてこうしてキスをしてくる。
前まで恋愛経験の浅かった彼女だがすぐに学んだようだったし、それを幸せと感じるみたいだった。
ターク「グリンス…俺は話す…話すと言って結局話していなかったな…」
グリンス「話す…?なんの事を…?」
ターク「…過去だ…俺は…話さないと気が済まない所まで来た…なんというか…その…」
グリンス「後ろめたい事なのだろう?」
ターク「あぁ…」
タークはそれを聞いて俯きながら頷く。
グリンス「今度こそ聞いてみせる…いつが良い?」
ターク「朝から変な気持ちにさせたくないし…夜に…」
グリンス「夜はダメだ…」
タークは首をかしげる。
ターク「どうして?」
グリンス「特別な時間がある」
タークの手を握る。
ターク「分かったよ…じゃあ…夕方の綺麗な時間に…出来たらみんなにも話したい」
グリンス「分かった…ゲマナ、マール、ヴァルドとセリーヌ達にも伝えておく」
ターク「ありがとう」
続く。




