↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/225

拝啓天馬、男子ってこんなにめんどくさい生き物でしたっけ?Ⅰ

以前活動報告ではお知らせしておりましたが、そちらは見られない読者様も多いため、こちらでもお知らせいたします。

最終章はSSを2本終わらせてからになります。

ちなみに、前回の『マルクス の気苦労』が1本目で、今回が2本目です。

こちらも二回に分けて更新します。


 拝啓天馬、レミエルに図星を突かれたあの日以来、私は少し貴方に依存し過ぎているのでは、と思い至るようになりました。


 そこで、今日まで手紙を書くことを自重し、筆を取らぬよう努めておりました。


 ですが今回は心の中だけでの呟きなのでセーフ! という新ルールのもとお尋ねします。



『――――ねぇ、男ってこんなめんどくさい生き物でしたっけ?』



 この質問の返答が切実に欲しい。


 そう心底思いながら、ソフィーは目の前のヴィンセントに半眼を向けた。



 ***



 話は少し前の放課後に遡る。


 場所は金星専用のコモンルーム。そこに銀星の生徒たちも加わり、品種改良した種を売りさばく算段の最終調整をしていた時のことだ。


 話し合いは順調に進み、細かい枠組みまで決定すると、全員それまで真剣だった顔つきが一気に緩み、そこからは一息つく流れとなった。


 数人が茶を用意するため席を立ち、残った者達は談笑に花を咲かす。その姿に、ソフィーの口元が自然と緩む。


(金星と銀星は仲が悪いというのが定説だけれど、こうして和気あいあいとしている様子を見ると、一概には言えないわよね)


 ほほ笑ましく見つめていると、そこでふと、彼らに黒星との一連の騒動、レミエルとの一件を報告し忘れていたことを思い出した。


 ソフィーの理想とする淑女的行動としてはちょっと(?)不適切な面もあったためか、すっかり忘れていた。


 だが、こういうことは人づてではなく、ちゃんと本人から報告するべきだと、ソフィーは一部始終を彼らに伝えることにした。


「――――という感じに落ち着いたから、これで黒星たちが貴方たちに突っかかってくることもないはずよ」


 わりと大雑把な説明ではあったが、ラルスたちの顔に動揺はなかった。


 どうやら彼らは、黒星たちの振る舞いから、どうせそのうちソフィーによって完膚なきまでに叩きのめされるだろうと、予期していたようだ。


「黒星たちのことはともかく、レミエル様のことは驚きました」


 ラルスの驚嘆を滲ませた声に、ソフィーは王の剣に来た初日のことを思い出す。


 あの日、レミエルと挨拶を交わしたことをすっかり忘れていたソフィーだが、あの場にはラルスもいた。


「私、初日のメンバーの中にレミエルがいた記憶がいまも無いのよね。ラルスは覚えている?」

「はい、もちろんです。僕も事前には聞かされていなかったので驚きました。レミエル様にロレンツオ様、ジェラルド様……本当にそうそうたるメンバーで、生きた心地がしませんでした……」


 その時のことを思い出したのか、ラルスの俯く瞳は完全に怯えていた。


「ソフィー様は本当にレミエル様のことを忘れていらっしゃったのですか? ご挨拶時に、一番長くほほ笑んでいらっしゃいましたよ。お声も可愛らしく『承りました』と返答されて……」


 やはり第二王子は別格扱いで対応するのだと、ラルスは沈んだ気持ちになったことを思い出しつつ答えれば、ソフィーは口元に手を当て、眉間に皺を寄せた。


「やだ、それ完全に現実逃避しているじゃない」

「あれは現実逃避されていたのですか?!」

「昔、私の淑女教育をしてくださった講師に教わったの、『面倒な男性が相手の場合は言葉少なく、ほほ笑みを絶やさずに対応しなさい』って。それが一番無難なあしらい方だと。あ、でも現実逃避中でもちゃんと淑女としての矜持を持って接していたのね」


 満足げにほほ笑むソフィーに、そこにいた全員が思った。


 第二王子の存在を完全に忘れた結果、もめにもめ。目も当てられない惨状に結びついてしまいましたが!? ――と。


 しかし、こうも思い直す。


(((((まぁ、ソフィー様だからなぁ)))))


 妙な納得をされていることには気づかず、ソフィーはうんうんと頷くと、結果オーライとばかりに笑顔を向けた。


「黒星たちのことも片付けたし、レミエルとの一戦も終わったし。これでやっと当初の目的に突き進めそうだわ」


 最近ちょっと放置気味ではあったが、そもそもソフィーがここへ来たのは下水処理施設のために他ならない。


「想定外のトラブルもあったけれど……まぁ、許容範囲内よね!」


 すると、これになぜかラルスが目を輝かせた。


「では、もうリチュ対策のために、ヴィンセント講師のところに足を運ぶ必要も無くなったということですね!?」

「え? ……えぇ、そうね」


 思いのほか語尾を強く問われ、ソフィーは少し戸惑った。ラルスだけでなく、金星たち全員が安堵の表情を浮かべていたからだ。


(銀星の生徒たちが、自分たちの講師と争っている現状を憂いているということなら分かるけど、なぜ金星たちが?)


 正直、ヴィンセントと金星たちとでは関りはあまりない。あっても、学院内の廊下ですれ違う程度ではないだろうか。


 ソフィーの困惑を感じ取ってか、ラルスが言いよどむ。


「えっと……、ソフィー様がヴィンセント講師の元に日参されていることは、早い段階から聞き及んでおりました。そのことで、僕たちはずっと心配していたんです……」

「あら、私が誰かと争っているなんてここでは日常ではない。そんな心配なんて」


(ん? いまのセリフ、自分で言っていてなんだか悲しくなったわね)


 争いが日常など少しも嬉しくない。


 ちょっぴりむなしい気持ちになっていると、ラルスが銀星たちにチラリと視線をやる。そして、言いにくそうに口を開いた。


「いえ……、僕たちが危惧していたのは争いごとのほうではなく」

「? では、いったい何を危惧していたの?」

「そ、その……ヴィンセント講師にそういった()()があるというわけではありませんが、銀星はその……」

「ん?」


 やたらと歯切れの悪い言葉が続くが、ラルスはゴクリと唾を呑み込むと、意を決したように声を張り上げた。


「幼女趣味な方が多いんです!!!!!」

「……………………へ?」


 思いもよらぬ発言に、ソフィーはぽかんと口を開いたまま固まった。


「ようじょ、……しゅみ?」

「はい! 銀星の幼女趣味は、貴族間でも有名な話なんです!!!」


(え? 幼女趣味って、え??)


 前世でも聞いたことのある言葉だが、祐の人生においては馴染みのないものだったため、脳が理解するまでに時間がかかる。


 そんな混乱のあまり疑問符を飛ばすソフィーより、先に異を唱えたのは銀星のファースだった。


「ちょっと待って下さいっ! なんですかそれは!? 銀星全体に対する根拠のない誹謗は止めて下さい!!」


 主語がヴィンセントだけを指すものではなく、銀星全体に対しての発言だったことに、ファースは慌てふためいた。


 しかし、すぐにラルスが応戦する。


「だってそうじゃないですか! 銀星の方々は、平気で自身より二十以上年の若い少女と婚儀を交わして、それを幼女趣味と言わずしてなんというのですか!?」

「ち、違っっ。ご、誤解ですからね、ソフィー様! 確かに銀星は年の離れた女性を妻に迎えることが多いですが、それは研究ばかりに気を取られて婚期が遅れてしまうからなんです! 銀星は長子でも結婚が遅く、次男以下になると四十で結婚というのもよくある話で、そのせいで年の差が開いてしまうだけです! 幼女趣味なわけではありません!!!」


 ファースが珍しく切羽詰まった声で、唖然とするソフィーに一気にまくし立てる。


 一通り叫ぶと、キッとラルスを睨みつけた。


「大体、それで言えば金星の方々の方が、幼児趣味じゃないですか!」

「えぇ!?」

「確かに金星は若い時に結婚するので、婚姻時においては年の差はありません。がっ、その分離婚率が高くて何度も婚姻を繰り返しているじゃないですか! 結果、かなり年下の少女と再婚するのが金星でしょう!」

「なっ、なっ、ぼ、僕の父上は母上一筋ですよ! 一緒くたにしないで下さい! ソフィー様、違いますからね!」


 同時に二人から無実を訴えるような瞳を向けられ、ソフィーは回転が普段の二分の一以下に落ちていた頭を必死に動かした。


(えっと……つまり、ヴィンセント講師は私の命令に従ったせいで、生徒たちからあらぬ疑惑をかけられているということ???)


 困惑するソフィーをよそに、事態はラルスとファースの口争いだけに収まらず、他の生徒たちも応戦し始めた。


「前々からおかしいと思っていたんですよ! ヴィンセント講師はやたらとソフィー様を見つめていましたし!」


 彼が食堂でソフィーをガン見していた姿は、他の生徒たちからも目撃されていたようだ。


 これに、銀星たちがしどろもどろになる。


「そ、それは……あの方の嗜好と銀星全体の嗜好は別でしょう! 一緒にしないで頂きたい!」


 ヴィンセントがソフィーをガン見していたのは、その前にソフィーとひと悶着あったことが原因で、別段それ以上の意味などない。


 銀星たちはそのことを知っているだろうに、なぜかその点については言及せず、自分たちとは違うと言うことで切り離している。


(そこはちゃんと説明してあげないの?)


 気づけば、さっきまでの和やかな雰囲気は一変し、なにやら険悪な空気が立ち込め始めた。


 口々にギャンギャンと叫ぶ彼らを前に、ソフィーは遠い目で虚空を見つめた。


(早急にヴィンセント講師を解放して差し上げないと……)


 まさか、自分が彼を脅したことが原因で、こんな事態になるとは思ってもいなかった。


 こちとら日本で育った常識を記憶として持つ、元男だ。


(さすがにロリコン疑惑は気の毒過ぎるわ!!!)


《お知らせ》(*'▽')

コミカライズ第23話を更新して頂いています(*'▽')

https://comic-earthstar.com/episode/2550689798731871958

マルクスが初登場するので、ぜひご覧いただきたいです!

沼にハマっていくラルスも見られますよ!

ちなみにこちら、サイト内で(説明文の下辺り)ファンレターを送るシステムがあるらしく、森先生の元へ届くようです!

キュン♥とされた方がいらっしゃったら、ぜひ送っていただけたら幸いです(*´ω`)✨

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております 完璧淑女への
― 新着の感想 ―
[一言] 更新楽しみにしています!
[良い点] ロリコン疑惑は流石にやめてさしあげてくださいw [一言] 銀星=研究バカ 金星=仕事バカ なので、まぁ結婚に問題があるよね君等
[一言] ヴィンセント講師の幼女趣味。その前に皆さん、ツルペタなだけでソフィーは幼女ではありませんよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。