それぞれの立場で
ロイドはエドガーの執務室を訪れていた。
「この前、街の近くの森でヘルビーストらしき影を見た。そろそろ片をつけないと、まずいかもしれないな」
「そうか……。こちらも予定どおり城壁の修復が進んで、討伐隊を編成する目処が立ってきたところだ」
「騎士団の訓練はどうだ?」
「正面から突進を受け止めるのは危険が大きい。できることなら、先制攻撃で敵の勢いを削ぎたい」
「なら、見つけるまでの動きが重要になるな」
エドガーは机に広げた地図へ目を落とした。
「街道沿いの警戒と迎撃は騎士団が担当する。森の探索については、冒険者ギルドに協力をお願いできないだろうか」
「分かった。だがヘルビーストを相手に索敵できる冒険者は限られる。人選と人数は…今いる面子を考えるとかなり厳しいが…調整してみよう」
「頼む。森で発見した場合は、街道沿いの斥候へ位置と進行方向を伝え、騎士団へ情報を引き渡すのはどうだろう?その報告を受けて先制攻撃できるよう迎撃に動く」
「冒険者は発見と報告に専念し、無理に戦わない。そういうことだな」
「ああ。発見後の連携を確実にするため、こちらも連絡手順を整えておく」
ロイドは地図を覗き込んだ。
「探索する場所も絞った方がいい。町から三キロほど先に泉があるだろう。比較的安全な休憩地になっている。泉の周辺までの区間で戦うのが効率的だと思う」
「騎士団も、その周辺を接敵地点の候補にしている」
エドガーが地図上の候補地を示す。ロイドは森の様子と照らし合わせた。
「なら、この辺りと泉へ向かう道沿い、それから森と街道の境目。この三か所を重点的に索敵すればいいんじゃないか」
「分かった。その三つを重点区域にしよう。騎士団にも伝え、報告に応じて動けるよう準備させる」
「森の地形を利用して、敵を開けた場所へ誘導できれば理想的だ。ただ、無理はさせられない。位置をつかむことを最優先する」
「誘導できるかどうかは、発見後の状況を見て判断しよう」
ロイドは頷いた。
「よし。とりあえず俺はギルドで人選を進めよう。そっちは騎士団の準備を頼む」
「討伐予定日はいつにする?」
「騎士団と調整した上でにはなるが、1週間後でどうだろう?」
「なるほど。了解した」
「ロイド殿…協力感謝する」
「よせ。自分たちの街のためだ。それより最近は寝れてるのか?だいぶ顔色に疲れが見えてるぞ。一人で抱え込むな」
「ああ…すまない。ありがとう」
エドガーは少し照れくさそうに笑った。
*
報告書
親愛なるエドガー様へ
ご依頼のありました、
ベルク・ウィリアムズ、
リナ・ウィリアムズ 夫妻の長男
ラルフ・ウィリアムズ
の鑑定の儀の結果について、ご報告申し上げます。
当日、鑑定の儀を担当したルース・サイツ司教補佐に確認したところ、ラルフ・ウィリアムズの守護鑑定石に示された結果は、
「天秤」「傭兵」
であったことが判明いたしました。
なお、担当司教補佐が病に伏せていたため、ご報告が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。
エドガー様に、神の御加護と平安あらんことを。
西ベネディクタ教会
サイモン・ロー




