その百
三千八百二十八
昭和の恐慌を子供時代に、そして終戦後の物凄いインフレを青年時代に経験して来た父は、
「資産は三つに分けて貯めるんだ。不動産、金、預貯金」
と言っていました。無論、私は子供の頃その実感など分かりませんでしたが、今となってそれがよく理解出来ます。父の判断は堅実で、実地に即したものでした。お金も文字通り紙切れで何の役にも立たなくなる事が、世の中幾らでもあるのですね。実際。日本以外の国では、そういう事は今も頻繁に起こっているのですから。
お金の価値が固定していない、全く意味をなさず役に立たない、そういう状況をいつも仮定しておく事は大切な事だと思います。この私がいつになく実用的な事を言う様ですが、その『柔軟』な精神が大切だと言いたいのです。今現在当たり前である事がこの先も鉄板的にその価値を変えない、そういう思い込みを意識して警戒する事は、いつも私が言っている通りなのです。これは既に財産だけの話ではありません。
三千八百二十九
若しも若者が居て、自分の未来が拓けない事を悩んでいるのだとしたら、私は多分斯う言うでしょう。
「君は君が進みたい道に進めない事を悩み苦しんでいる。しかしそれは君だけではなく、多くの人が経験するものだ。それよりも君は、君が進む事の出来る道を生きるべきだ。すると其処には今の君が思ってもいない生き甲斐が在る。そしてそれを自分に与えられた使命に、君はする事が出来る」
何とありきたりな忠告でしょう。しかし私が心から伝えたい事はそういう事なのです。
今になって思います。父が私に言った数少ない忠告は、皆ありきたりなものでした。しかしそれらは全て、迚も迚も深いものだったのです。涙と感謝と共に、私は今も亡き父と生きるのです。
三千八百三十
市民税がかなり安くなったとか、個人売買で何かそれなりの額のものが売れたとかが理由ではなく、何かに気が付いてそれで笑顔になりたいものです。自分が忘れていた自分の大切なものを思い出した、今まで全然気が付かなかったけれども実はあれは迚も重要な事だったと分かった、そんな事を根拠に。
それは市民税や個人売買の比ではありません。そんな瞬間刹那の話ではなく、もっと自分の一生に亘って永く重要なものこそが、心から喜ぶに値するものです。値しないもので愚かにも喜んでいると、罰として虚しさが来ます。そんなものに、如何なる程度に於いても実際に自分を左右させてはなりません。
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