東京 13
歩きながら彼女は私の身の上を知りたがったので、簡単に、今日田舎から出てきたこと、頼りにしていた知人と連絡がつかず、しかもたった今お金を巻き上げられて行く所もないことを話した。
彼女は黙って聞いてくれて、そして私に空腹かと聞いた。
空腹ではなかった。
いろんなことがありすぎてお腹がへったと感じる余裕すらなかったのだ。
私はただ首を横にふったが、彼女は私をじっと見て言った。
「食べたほうがいい、顔が青いよあんた」
そう言って急に駆け出して人混みに紛れ、そしてまたこちらへ戻ってくる。
彼女は左手をこそっと見せる。
そこには男物の財布が握られていた。
「掏ったのさ。簡単だよ、教えてあげるから。とりあえず何か食べよう。」
怖かった。
話には聞いたことはあったものの掏摸を見たのは初めてだったし、その盗んだお金で何かを買って食べることなど想像したこともなかった。
でも一文無しになった私は、そうでもして生きていくしかないのかもしれない。
彼女はしのと名乗った。しのはいつの間にか焼き芋を買ってきて、私に渡してくれた。
焼き芋の暖かさと甘さで、頭がぼうっとなる。
いろんなことがありすぎてまだ気持ちがまとまらないままこの東京のどこかの町にいる。
小銭は少しはあるとはいえ一年は暮らせるつもりのお金を失い、身元を保証してくれるものもおらず、手に職もなく働いた事も何もない。
そういう湧き上がる不安は今一瞬だけ甘い芋と、しのの名乗った少女が隣にいてくれることで薄れる。
一
人じゃないということがこんなに心強いのかと思う。
そして、いとはどうしているだろうかと考える。
私はいとをあの家に連れてきてそして勝手に置き去りにして逃げ出してきた。
いとは、秘密をかかえたままきっと一人でいるのだ。




