東京 14
しのは焼き芋を皮ごとあっという間に食べ終えた。
私は風呂敷からハンケチを出し、そこに剥いた皮をつつんで懐にしまった。
私はしのより食べ終わるのが随分遅くて、しのは私が食べるのをじっと待っていた。
そして言った。
「あんた、随分といいところの子なんだろうね。だから目をつけられて盗まれるほどの大金もってたわけか」
私は黙っていた。
しのも少し黙り込み、そして上目遣いに私を覗き込み言った。
「あたしたち細民の暮らしは、気楽だけどそんなにいいものじゃない。捕まることもあるし、悪いやつに目をつけられて売られる仲間もいる。住む所も狭くて不潔だ。あんたには向いてない気がするよ」
そう言ってしのは続けた。
「こっちの方向、西のほうには絶対に行っちゃだめだよ。柄が悪い飢えた男たちがいっぱいいるからね、特に橋を渡った向こうは危険だ。怖い目にあうって友達が言ってたんだ。でも、この通りをまっすぐ北のほうにあがると大聖堂があってあそこは運が良ければ親切な人が炊き出ししてくれる時があるし、いろいろ面倒を見てくれる優しい人がいる。それに駅の近くは人も多いし身なりがいい連中が多いからまあ安全なほうだよ。鴨が多い場所でもあるんだけどね。悪いけど、あたしらのしまに連れて行ってやりたかったけど、連れて行ってはあんたが苦労すると思う。悪い事は言わないから、家に帰りなよ。あたしと来るよりそのほうがきっとましなんじゃないかって気がするんだ。」
しのはそう言って盗んだ男物の財布を私にぎゅっと押し付けて、あっという間に走り去った。
私はろくにお礼を言うことすらできなかった。
そして、私はまた一人になった。




