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猟犬たち

燦然と輝いていた太陽は力尽きたかのように光を減じて地平線にすりより、広大な空には夕闇が忍び寄っていた。

うす青い空の大半が酸化し、錆び行くかのごとく濁った黄色から褐色へと変色している。その端から、暗い夜が世界を徐々に侵食しつつあった。

三人の修身士は、戦騎上で背を伸ばして遠くを眺めている。その前に、同じく馬上の人となった司令官がいた。厳しい顔付きで三人の修身士を振り返った。なだらかに波打つ砂丘の彼方に、ぽつんと黒い点が見える。司令官は点を指差し、言った。

「あれが、現地人のねぐらだ。やつらは強い光と暑さに弱い。日が出ている間は島ジャングルの中にこもっている」

緊張の面持ちで三人の修身士はうなずいた。説教使は、重傷で身動きもままならないため、後方で荷物を運ぶ兵士と共に休息している。ディメンズ校を出て以来、説教使以外のDT次元人と共に行動するのは初めてだった。

司令官は説教使と違って、無愛想で冷酷だった。いまだに騎乗に慣れない三人は、短い道中、容赦なく叱咤されつつここまで来た。マリアアリスは憮然とした様子で返事する。

「りょーかい」

司令官は不機嫌そうに言った。

「他の二人はどうなんだ?」

さなええりなは、すっかり脅え、意気消沈しているようだった。小声で答える。

「はいー!」

フィオナナンシーは平然とした面持ちを崩さない。

「オッケーでえす」

三人に、司令官は軽くうなずきかけた。

「話を続けるぞ。現地人は基本的に夜行性だ。今は黄昏時、ちょうど奴らが目を覚ますほんの少し前の時刻……つまり、もっとも眠りが深いときだ。さらにまだ日が隠れていない。現地人を襲撃するのに最も適した時刻と言うことだ」

司令官は言葉を切り、じっと三人の様子を疑うような目付きでみやる。

「わかったか? では行け」

三人はきょとんとした面持ちで司令官を見返した。怒りを帯びた声音で司令官は三人を怒鳴りつける。

「愚か者どもが! 突撃しろ!」

司令官の手が腰に吊るした短い棒を掴む。腰から引き抜き、空に拳を掲げる。虹色の光が空気を貫いた。花火が炸裂するような音が聞こえる。銃刀の刀身が高々と天を突いた。司令官のよく通る声が三人の体を貫いた。

「突撃!」

さっと刀身を振り下ろす。切っ先が丸いジャングルを指していた。

砂ぼこりが立ち上る。戦騎の四脚が足元の砂を蹴立てた。司令官の剣幕に背中を押されるように、三人は戦騎を走らせたのだった。

背中に固定された複腕機構の操作肢が、機体の操作盤に繋がっている。両腕に、身長を超すほどの長い棒を抱えた。DT次元の兵器、銃槍だった。肩の上に横たえ、先端をジャングルに向ける。戦騎の四脚走行で、激しく上下に体が揺さぶられた。

「クソが! ぐらぐらすんな!」

マリアアリスは一人悪態をついた。拡張知覚の会話画面シエロプを開く。

マ:「あいつ、なんなんだよ。うるさくね?」

さなええりな、フィオナナンシーもシエロプを展開する。

さ:「こわいです。いつも怒ってて、嫌な感じ」

フ:「流しとけばいいんだよ。センセーよりえらいっぽいし、逆らったら損だよ」

マ:「でもムカつく」

フ:「もめんなよ、こんなとこで。ヘタしたら死ぬよ?」

さ:「センセーはやく元気になって欲しいです」

フ:「ほんとだよ。あのエラそーなおっさんよりよっぽどラク」

マ:「早く帰りたい。今すぐ帰りたい。もう成績とかどーでもいい」

フ:「わかる」

さ:「がまんしましょう」

三人は無言のまま、拡張知覚を介して会話する。

島ジャングルがみるみる接近してきた。学校の授業で教わったとおり、三人は互いに支援できる程度、10メートルほどの距離を開けつつ、攻撃目標を包むように動いた。射程距離に入ると共に、担ぎ上げた銃槍の引き金を引く。


======================

 形態 :銃 FUEGO(発射)

======================


排炎が銃口から噴出した。虹色に発光する弾丸が黒くわだかまるジャングルへ消えた。

一瞬の後、複数の白い爆炎が瞬いた。砕けた植物のかけらが空中に舞い上がり、扇のように広がった。次々と斥力弾がジャングルに打ち込まれ、丸い輪郭が削り取られてゆく。三人はジャングルを迂回するように距離を保ちつつ、射撃を続ける。

戦騎の足元で、砂が弾けて飛沫を飛ばした。小さな波紋が跡に残る。遅れて銃声が聞こえた。現地人の反撃だった。

マ:「来た! 気をつけて!」

フ:「マリこそ、カッカし過ぎて飛び出すなよ」

マ:「わかってるって。さなはOK?」

さ:「こわいです! もし弾が当たったら、わたしたち手当てしてもらえるんでしょうか?」

マ:「当たんないって! 怪我したら助け合うから大丈夫」

フ:「安請け合いすんなよ。“助け合い”って、“全次元つながり運動オーディメンズ・ホール・ボンド”気取りかよ、キメェ」

マ:「うるせー、マジメにやれって! あたしたちでなんとかできるとこはしてこうぜ」

フ:「わかったよ。さなも後ろに逃げないで」

さ:「がんばります」

三人は、ジャングルとの距離を保った。戦騎の足元を、散発的な銃弾がえぐった。AO次元人の銃は強力だが射程距離が短い。戦闘時には、相手に気付かれず接近する能力によって武器の欠点を補っていた。

空全体が茶色を帯び始めていた。白かった砂漠も、倦み疲れたような赤褐色へ染まっている。地平線の彼方は、痣のような紫色のしみに縁取られていた。

突然、フィオナナンシーが戦騎ごと左右に揺れた。金属が打ち合わせられるような甲高い衝撃音が耳をつんざく。

「危なあい! 戦騎に当たったあ!」

フィオナナンシーが悲鳴を上げる。

「逃げるな! 行け!」

いつの間にか三人の背後に陣取っていた司令官が鋭く命令する。

さなええりなはとっさに首をすくめた。すくそばを、小枝をへし折るような音が聞こえた。弾丸が至近距離を通過する音だった。戦騎の足元に着弾する銃弾は、確実に数を増していた。

マリアアリスは戦騎の足を止めた。目を細め、ジャングルを注視する。砂煙に覆われたジャングルから、なにかかすかな影がすべり出た様な気がした。マリアアリスの胸を、巨大な木槌が一撃するような衝撃が走った。

「あっ!」

マリアアリスの上半身が馬上でのけぞった。体勢が崩れる。戦騎から転げ落ちそうになった。かろうじて複腕がマリアアリスの体を支える。苦悶の表情を浮かべ、マリアアリスは走り続ける戦騎にしがみつく。恐怖に震えながら、衝撃を感じた箇所を手で探った。

複腕機構を固定する為の支持腕に着弾したようだった。打撲の痛みはあるが、命にかかわるけがではなかった。背筋に張り付いた悪寒が、急速に解凍されるように消えていった。

にわかに現地人の攻撃が激しくなっていた。

司令官が叫んだ。

「奴らが来るぞ、貴様らの体に土弾(泥だんご)をぶち込みにな! 接近戦だ! 剣を出せ!」

現地人は、銃弾として砂漠の砂にジャングルに生える植物から得られる樹液を混ぜて固めたものを使用している。司令官をはじめとするDT次元人たちはそれを泥だんごと称していた。

三人は銃槍を両手で掴んだ。長い穂先が閃光を発する。様々な色の波紋が無数に連なり、ゆらゆらと動いている。

三人は、拡張知覚の質量波感知映像に目を凝らした。輪郭の曖昧な白い人間型の塊が手足を激しく動かし、転がるように近づいてきた。三人は、奇怪な白い矮躯に、身の危険に対する恐怖と同時に、異質なものに抱く怒りを覚えた。

戦騎の機首を巡らし、三人は白い人影へ接近した。長い槍の切っ先を押し付ける。人形から白いもやが立ち登った。動かなくなった白い物体のそばを、素早く駆け抜ける。

マリアアリスは戦騎の上に伸び上がった。ジャングルの向こう側に目をやった。

マ:「ジャングルの向こうにいっぱい居る!」

フ:「どんくらい」

マ:「今見てるのの倍」

フィオナナンシーは一瞬の後、文字列を入力した。

フ:「頼む」

マ:「まかしといて!」

マリアアリスの戦騎は、ジャングルの向こう側へと駆けた。フィオナナンシーとさなええりなは、夜闇のベールに覆われてほのくらくなった砂上を縦横に駆け巡る。地面すれすれに刃を振るい、次々と現地人を両断していった。

怖気づいたのか、現地人たちの戦列はあっさり崩れた。巧妙に隠れていた、滑らかな砂漠のわずかなしわから転げだす。三人に背中を見せ、まっすぐ走り出した。

機敏に戦況を把握した司令官が逃げ散る現地人の中に、戦騎を乗り入れた。

呆然とするさなええりなとフィオナナンシーの目前で、懸命の様子で足を動かす現地人の上に刀身を振り下ろした。雷に打たれたように、現地人は全身を硬直させ、石ころのように地面に倒れた。

司令官はさなええりなとフィオナナンシーを振り返り、剣先で遠ざかってゆく現地人を示した。

弾かれたように、フィオナナンシーは戦騎を前進させた。

フ:「ついてきてよ! さぼんないで」

ぎこちない動きで、さなええりなはあとに続く。

さ:「もう現地人は逃げてるじゃないですか。これ以上続ける必要ないでしょう」

マ:「司令官に言えよ」

さなええりなは不服そうな表情を浮かべた。恨みがましい目付きでフィオナナンシーを見る。

二人は見る間に逃げ散る現地人に追いついた。フィオナナンシーの持つ銃槍の切っ先は地を這うように下を向いていた。穂先がひょいと持ち上がり、現地人の背中に吸い込まれる。すくい上げるようにフィオナナンシーは銃槍を水平に掲げた。穂先が現地人の上半身を縦にすっぱりと断ち切った。現地人からもやのような血霧がほとばしった。内部から不定形の物体が溢れ出し、ぐしゃりと体が崩れていくかのように見えた。

さなええりなは慎重に前方を駆ける現地人との距離を縮める。槍を構え、通り過ぎざまに穂先を引っ掛けた。

かすかな手ごたえが銃槍の柄を通じて腕に伝わってくる。現地人は地面に倒れたようだった。さなええりなの胸に嫌悪感に重苦しくわだかまる。

戦騎を旋回させ、後方へ残された現地人へと目をやる。

さなええりなは息を呑んだ。

現地人が片足を立てて、しゃがんでいた。その毅然とした姿に違和感を覚え、目を凝らす。腰だめに銃器を構えていた。

驚く間もなく、さなええりなは横に突き飛ばされた。戦騎のシートから腰がはずれ、落下寸前になる。勢いに翻弄され、乱暴に絵の具をたたきつけた線のようにぶれた視界の端に、フィオナナンシーの姿が垣間見える。

フィオナナンシーが戦騎を体当たりさせたのだった。

銃声が轟く。フィオナナンシーは戦騎の上で体を丸めた。

「フィナ!」

さなええりなは戦騎から飛び降りた。身をかがめたまま動かないフィオナナンシーに駆け寄る。フィオナナンシーは肩に手を当て、苦しげな表情で顔をゆがめていた。指の間から血が滲んでいる。眉根を寄せ、心配そうに見上げるさなええりなに言った。

「なあにやってんのお? 早く仕留めなよお!」

銃撃を加えてきた現地人をあごで示す。さなええりなは我に返ったように現地人へと顔を向けた。

再び銃声が響く。フィオナナンシーの戦騎の表面で、固いものがぶつかる音が聞こえた。フィオナナンシーは怒声を上げた。

「早く!」

同時にシエロプに文字列が表示される。

マ:「怖いかも知んないけど、がんばってよ!」

現地人は身をひるがえした。銃を抱えて遁走する。とっさにさなええりなは追い立てられるように追跡を開始した。銃槍を携え、自らの両脚で走る。

唐突に現地人が動きを止める。素早く振り返った。虚ろな銃口が、さなええりなを見据えた。

さなええりなは、転倒するように地に伏せた。地表をなめるかのごとく、地面すれすれに銃槍を薙ぐ。銃声が、さなええりなの鼓膜を圧倒した。

現地人の体が、ぐらぐらと揺れ動いた。支えを失った棒切れのように音もなく倒れ伏す。

現地人のそばに、さなええりなは近寄った。ぞっと体を震わせる。さなええりなの足元に、現地人の銃と両手が落ちていた。その向こうで、現地人が体をくねらせている。その下で、血を含んだ砂が、じゃりじゃりと音を立てていた。現地人はまだ生きていた。おのれの手にかけ、死にゆく相手を見たのはこれが初めてだった。

さなええりなは顔をそむけた。頭を打ちのめされたような衝撃に立っていることがやっとの有様だった。もつれる脚を懸命に踏みしめ、半ば朦朧と自分の戦騎まで戻った。

フィオナナンシーがさなええりなのそばに寄る。肩から流れていた血液は少量だった。すでに黒く凝固している。虚ろな面持ちのさなええりなを怪訝そうな顔で睨みつけた。

「大丈夫う?」

片腕を引っ張った。騎乗したさなええりなは脅えたような顔付きで、小さくうなずいた。

フィオナナンシーはさなええりなの腕を掴んだまま、強引に戦騎を走らせた。

フ:「しっかりしなよ! ぼやぼやしてると、司令官に目をつけられるよ」

さ:「わかったから手を離してください。自分のペースで歩きたいです。司令官なんか、どうでもいいです」

フ:「ひどい目に合わされるかもしれないよ」

さ:「今は、もうなんでもいいんです。むしろ、ひどい目にあいたい気分です」

フ:「だめだって」

さ:「フィオには、関係ないでしょう? マリのとこに行けばいいじゃないですか」

フ:「あいつはきっと大丈夫。さなはなんかほっとけない」

さなええりなはフィオナナンシーの横顔を見た。フィオナナンシーは険しい表情で、左右を見回している。さなええりなは口中でひそかにつぶやいた。

「わたしを見てくれるの……?」

さなええりなは、フィオナナンシーと並んで駆け出した。


疾走するマリアアリスの残した足跡に沿って、点々と現地人の死体が横たわっていた。マリアアリスはまっすぐ目標まで戦騎の速度を上げた。上下に動く現地人の背中がたちどころに大きくなった。もはや手馴れた動作で背中を一突きする。現地人はその場にばったりと倒れた。マリアアリスは快哉を叫ぶ。

「九つ!」

地に伏した現地人を追い越した。速度を落とし、次の獲物を探す。ジャングルの向こう側にいた現地人は、武器を持っていないようだった。マリアアリスは反撃されることなく、次々と現地人を屠っていた。

彼方に、マリアアリスは新たな獲物を発見した。身をかがめ、吹き付ける風を避ける。急速に戦騎が増速する。

現地人は疲労の為か、ほとんどよろめき歩いていた。悠々と追いつき、銃槍を一振りする。首が横に飛んだ。

マリアアリスは一仕事済んだようにため息をついた。現地人は四方八方に逃げ散り、これ以上追うのは困難のようだった。背後を見ると、ジャングルが意外なほどに小さく見えた。すでに夕暮れが一帯をほの暗い闇に閉ざしている。シエロプの画面に入力した。

マ:「もう帰る」

さ:「お疲れ様です☆」

フ:「そっちはどうなの」

マ:「けっこうやった。もう充分だよ。なんか飽きた」

フ:「こっちももうめんどくさいんだけど、司令官のオッサンがまだきばってて切り上げらんない」

さ:「ほとんど逃げられちゃいましたよね~」

マ:「あいつ、ウザいわー。もうちょっとこっちでニ、三人始末してからにするわ」

フ:「サボんなよ!」

マ:「サボってねーよ。スコアいくつ? マリ、九人」

フ:「五人」

さ:「二人」

マ:「ドヤッ! ドヤヤァァ!」

さ:「すごいです! 天才ですね!」

マ:「あーペタうざす。もう戻ってくんな、でなきゃ死ね!」

マリアアリスは銃槍を担ぎ、ジャングルへ向かって戦騎を走らせる。ぼんやりとした質量波感知映像に首を傾げた。視界を通常の光波感知映像のみにする。

司令官がマリアアリスに駆け寄ってきた。剣の中ほどまで、貫かれた物体がぶら下がっている。歓迎するような喜色の滲んだ声音で、マリアアリスに言った。

「よくやったな。一番に食っていいぞ」

剣をマリアアリスに突き出した。マリアアリスはまじまじと剣に突き刺さった物体を凝視した。ぎゅっと心臓を強力な力で締め上げられたかのような痛みが胸を穿った。マリアアリスは小さく悲鳴を上げ、顔をそむけた。

足だけが宙に浮いていた。膝から下を切断され、赤い切り口が丸く口を開いている。垂れ下がった布のような皮膚に、表面がとけかかって流れ出しそうなバターの塊のような脂肪が貼りついていた。

司令官はマリアアリスの反応を不思議そうに見つめている。

「どうした? 遠慮するな。わたしが最もいい部分を切り分けてやったのだぞ」

マリアアリスは呼吸を乱して後ずさりした。声もなく頭を振った。

司令官は気が差したように剣を下ろした。その背後で、さなええりなとフィオナナンシーが気後れしたように立っていた。

奇妙にゆがんだ笑みを浮かべ、司令官は並んでいるさなええりなとフィオナナンシーのほうへ現地人の脚肉をかかげる。

「どうだ? 貴様らは食わんか」

刀身が消えた。支えを失った脚は砂上に落下する。司令官が斥力波発振装置をOFFにしたのだった。

「調理しないと食えないとでも? 全くお上品なことだな。だが、貴様らの食うものはAO次元ここでは、それ以外ないぞ」

冷淡に言い捨て、司令官は戦騎の機首を巡らせる。その場を後にした。

「げほっ!」

耐えかねたように、さなええりながせきこんだ。転げ落ちるように戦騎から降りる。地面にしゃがみこみ、開いた口から粘る液体を吐き出した。

「大丈夫?」

心配そうな声を、マリアアリスは出した。戦騎を降り、さなええりなに駆け寄る。さなええりなの丸めた背中を優しげにさすった。

司令官あいつ、ちょっとおかしいよね。マリもあんなの見せられたら、フツーに引くわ。センセー早くよくなってくれたらいいよね。そしたら、あんなのから守ってくれるのに」

苦しげに息を切らしながら、さなええりなは何度もうなずいた。

「うん!……うん!……」

ぞくりとフィオナナンシーは背中を震わせた。辺りは濃い紫色の闇に覆われている。夜の到来と共に、苛烈な寒気が砂漠を急速に凍てつかせているようだった。

薄いピンク色に染まった砂丘と、暗い空の境界線に、ちらちらと揺らめくいくつかの光がまたたいた。司令官とその部下、そして説教使の一行のようだった。黒い闇が凝固したかのように、ジャングルはフィオナナンシーたちのかたわらにうずくまっている。現地人を襲撃したのは、安全な場所で一夜を過ごすためだった。フィオナナンシーは次第に大きさを増す光の環へ目を凝らした。


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