侵略の時
「ねぇ、何してるの?沢恩。」
まだ寝ぼけた様子のサリスが尋ねた。
「今日……曇りなのか?」
沢恩は空を見上げながら、天気予報アプリを何度も確認する。
「もう、そんなのどうでもいいじゃん。天気予報なんて外れること、よくあるでしょ〜。」
サリスはぶつぶつと呟いた。
「そうだ!昨日ネットで、目を懐中電灯みたいに光らせる魔法を覚えたんだ。見てみる?」
そう言うと、サリスは返事も待たずに魔法を発動した。
「おい!俺の目に向けて照らすな!」
沢恩は叫びながら、部屋の中を走って逃げ回る。
前回の騒動以来、二人はあまり外へ出る気になれず、そんな調子で毎日を過ごしていた。
そして五日が過ぎ、サリスは自分の住む街へ帰らなければならなくなった。
出発する前、沢恩は少し考えた末、指輪を身につけていくことにした。
「今日は何も起きないよね……」
サリスが小さく呟く。
「そのセリフやめろ。お前がそう言うと、毎回ろくなことにならない。」
沢恩がすぐ隣で返した。
「ちょっと!ひどくない!?」
サリスは不満そうに声を上げ、二人はまたいつものように言い合いを始める。
「また飛んで帰るつもりじゃないだろうな?この前なんて、母さんに『なんで背中が曲がってるの?』って聞かれたんだぞ。」
沢恩は真面目な顔で言った。
「もう!私を何だと思ってるの!」
サリスは頬を膨らませ、手に持った列車の切符をひらひらと振る。
「でもさ、このまま帰るだけじゃつまんないし……最後にもう一回、君の服をつかんで飛び回っちゃダメ?」
サリスはお願いするように言った。
「ダメ。」
沢恩は即答した。
「……なあ、空が妙に暗くないか?なんか、何かが空を覆ってるみたいな……」
沢恩が何気なく尋ねる。
「ただの雲でしょ。」
サリスも何気なく答えた。
二人はそのまま、ゆっくりと歩き続けた。




