神なる者、降臨!?③
「ブゥゥゥン――!」
悪魔の翼が回転し、空気そのものが歪んだような異音を響かせる。
「アハハハハハハハハッ!」
どこからともなく聞こえてくる笑い声が、空間を引き裂くように広がっていく。
サリスは両手を掲げた。
掌から緑色の魔力が溢れ出す。
「ウィンドアロー、アタック!」
無数の緑色の魔法の矢が悪魔へと飛翔する。
「Zing――」
乾いた音が鳴った。
放たれた魔法はすべて弾き散らされ、跡形もなく霧散する。
遠くの悪魔はなおも翼を回転させ続ける。
まるで太陽そのものへ成り代わろうとしているかのようだった。
巨大な眼球には次第に血走った赤い筋が浮かび上がり、不気味な嘲笑を漏らす。
その眼前には無数の魔法陣が円を描くように展開される。
次の瞬間、それらは細かく分裂し、一斉に四人へ降り注いだ。
――ドォン!!
魔法弾は水面へ触れた瞬間に爆発し、水温はさらに上昇する。
……
「おい、しっかりして!」
サリスは誰かの肩を激しく揺さぶる。
「これでもう二回目だよ……!」
不安そうに、そして戸惑いながらその顔を見つめていた。
……
水位は誰の目にも分かるほどの速度で上がっていく。
「Fast、Attack!」
沢恩は高速弾を連続で撃ち込む。
弾丸は悪魔の眼球や翼へ命中し、火花を散らした。
「ヘヘヘヘヘ……」
悪魔はゆっくりと四人へ近づいてくる。
ササス・サスサはサリスの腕を掴み、悪魔の進路から引き離した。
その隙に――
「今だ!」
崢拓は高所から飛び上がり、そのまま悪魔の背中へ着地する。
弱点を探そうとした、その瞬間。
「!!?」
背中いっぱいに無数の眼球が一斉に開いた。
崢拓は思わず体勢を崩し、水面へ落ちかける。
「危ない!」
ササス・サスサが腕を掴み、引き戻した。
「上へ逃げろ!」
沢恩が叫ぶ。
「水温、もうほとんど熱湯だよ!」
感知魔法で状況を把握したサリスが警告する。
四人は崩れた建物を足場にしながら、ひたすら上へ登っていく。
「Fireball、Attack!」
高層ビルの残骸から、沢恩が悪魔の眼へ向かって魔法を放つ。
――ドォォン!!
爆発だけが響く。
しかし、何一つ効いていない。
悪魔は沢恩を捉えた。
巨大な瞳孔に強烈な光が集まり始める。
「っ!」
他の建物へ逃げれば、三人を巻き込む。
だから沢恩は最も危険な選択をした。
さらに上へ走る。
「ダッ、ダッ、ダッ、ダッ!」
荒い息を吐きながら駆け上がる。
背後では光線が建物を次々と破壊していく轟音が鳴り響いた。
「はあっ!」
その隙を突き、ササス・サスサは機関銃を乱射する。
崢拓も同時に援護射撃を開始した。
しかし――
「ゴォォォッ!!」
悪魔は光線の出力をさらに引き上げる。
――バキィィン!!
建物はついに耐え切れず、完全に崩壊した。
「ああああっ!」
沢恩の身体が宙へ投げ出される。
――ドボン。
水へ落ちた。
しかし、不思議と熱さは感じなかった。
「……?」
沢恩はゆっくり目を開く。
そこは水中ではない。
黒と紺に包まれた空間。
視界の縁だけが白くぼやけている。
その先に、一人の少女が立っていた。
未来のサリスだった。
「目を覚まして……全部――」
そこまで言いかけた瞬間。
彼女の声は少しずつ濁り始める。
「何なんだ……ここは?」
沢恩が問いかけようとした、その時だった。
身体が何者かに強く引きずられる。
「うわっ!」
再び目を開く。
気づけば自分は宙に浮いていた。
サリスが魔法で身体を支えてくれている。
四人は再び合流していた。




