神なる者、降臨!?②
――!
どうやら、それは沢恩が見ていた夢だったらしい。
ここ数日、沢恩は幼い頃の夢を何度も見ていた。
だが、今の出来事だけは違う。
自分には、こんな記憶はないはずだった。
「おはよう」
「おはよう」
沢恩とサリスは、いつものように自然と朝の挨拶を交わす。
「ん~……」
大きく伸びをしながら、ササス・サスサが部屋から出てきた。
どうやら風邪はすっかり治ったようだ。
「風邪なんて、この私には効かないんだから!」
そう言って胸を張る。
「しーっ」
ササス・サスサはこっそりとサリスへ合図を送った。
「おはようございます、四名のお客様。本日も激しい雨が続いております。十年前に異常降雨が頻発するようになって以来、今回は過去最悪の雨量となっています。必要な生活物資を配布しておりますので、お受け取りくださいね~」
宿のスタッフが四人へ説明する。
「はーい」
……
水面から突き出た巨大な岩。
四人はその上に立っていた。
荒れ狂う水面は、まるで大海原のように激しく波打ち、絶え間なく岩へ打ち寄せている。
「……なんなんだよ、これ」
こんな光景を見るのは崢拓も初めてだった。
「雨はまだ止んでない。このまま何もしなかったら、状況はどんどん悪くなるだけだよ……」
サリスは不安そうにつぶやく。
沢恩は何も言わなかった。
そのまま岩の上から飛び降りる。
一瞬だけ宙に留まり、風に服をはためかせながら――
ザブンッ。
水面へ着地した。
水位は肩のすぐ下まで達している。
沢恩は三人を振り返った。
「降りてきて」
静かな口調で言う。
「うん!」
サリスが迷わず飛び込む。
続いて崢拓も飛び降りた。
最後に残ったササス・サスサも、水の中へ飛び込む。
「で、どうする?」
崢拓が尋ねる。
「まず石像を一つ見つける。それをサリスに感知してもらって、残りを全部探し出す」
沢恩は即座に答えた。
こうして四人の賑やかな捜索が始まる。
「これこれ! これ石像じゃない!?」
「違うよ。ただ形が似てるだけ」
「おっ、一個見つけた!」
「そんなに大きくないってば!」
「今度こそ絶対これ!」
「それただの石ころ!!」
そんなやり取りを繰り返した末――
ようやく一体の石像を見つけた。
沢恩はそれを抱え、サリスの前まで運ぶ。
サリスは石像へそっと手を添え、目を閉じる。
感知魔法が発動し、残る石像の位置が頭の中へ浮かび上がった。
四人は再び走り出す。
――パリンッ!
最後の石像が砕け散る。
邪悪な赤い霧が空へ舞い上がり、その中から再びフードの女が姿を現した。
「ふふふ……あははははっ!」
女は四人を嘲笑う。
四人も警戒しながら彼女を見つめ返した。
「空を見なさい」
女が空を見上げる。
四人も同時に視線を上げた。
空はいつの間にか、巨大な渦を巻く真紅の世界へ変わっていた。
「……なんなの、これ」
ササス・サスサが息を呑む。
その瞬間。
沢恩は何かに気づいた。
拳銃を抜き、女へ向けて発砲する。
弾丸は命中した。
しかし女の身体は霧となって、そのまま消え去る。
「あははははは!!」
次の瞬間。
空に異形が現れた。
四枚の翼。
そして中央に巨大な一つ目。
翼の羽と羽の隙間にも、無数の眼球がびっしりと並んでいる。
悪魔は巨大な扇風機のように高速回転し、その衝撃波を四方八方へ放っていく。
その傍らで、霧が再び集まり、フードの女が姿を取り戻した。
「私は……不死」
「石像を壊したところで意味なんてない」
「神様は必ず降臨する。それが運命だから」
「神様は私たちを生まれ変わらせてくださる」
「この雨は……私たちの罪を洗い流しているの」
女はまるで呪文のように、同じ言葉を何度も繰り返す。
その時だった。
悪魔の翼にある無数の眼球が、一斉に赤い光線を放つ。
「みんな、避けろ!」
沢恩が叫ぶ。
光線は水面へ突き刺さり、灼熱の水しぶきを巻き上げた。
水温はさらに上昇する。
だが、崩れた街の瓦礫が足場となり、まだ移動する余地は残されていた。
「神を阻む罪人たちよ――審判のもとで死になさい」
「あははははは! あははははは!」
高笑いだけを残し、女は再び姿を消した。
「みんな、気をつけて!」
ササス・サスサが声を張る。
悪魔は太陽を覆い隠し、耳障りで邪悪な笑い声を響かせる。
「ニ……セ……モ……ノ」
悪魔が低く呟く。
その巨大な翼は、まるで空飛ぶ円盤のように回転し続けていた。
雨はさらに勢いを増す。
水位は刻一刻と上昇し、水面へ撃ち込まれる光線によって温度も安定して上がり続けている。
今、水へ落ちれば、ただでは済まない。
四人は互いに頷き合った。
「みんな!」
「戦闘準備!!」




