神なる者、降臨!?①
三人は静かに立ち尽くしていた。
沢恩は先ほどの出来事にまだ動揺しており、荒く息を吐きながら気持ちを落ち着かせようとしていた。
「サリス、まだパジャマのままなの?」
「えぇっ!?!?」
サリスは慌てて両手で顔を隠した。
「……沢恩」
意識がぼんやりと揺らぐ中、不意にサリスが自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
「サリス?」
「……どうしたの?」
「い、いや……なんでもない」
その時だった。
――ポツ。
――ポツ。
「あぁ……また雨が降ってきちゃった」
サリスは残念そうにつぶやく。
「一旦戻ろう」
沢恩が提案し、三人は足早に宿へ戻っていった。
その様子を、いつの間にかどこかの壁に両手を添えながら見つめていたフード姿の女がいた。
「ふふっ」
女は静かに笑うと、その姿は霧のように溶けるように消えていった。
……
淡い黄色の灯りだけが小さな空間を照らしている。
その光は周囲の闇まで柔らかな黄色に染め、どこか温かな雰囲気を作り出していた。
整えられた小さなベッドの上で、サリスは膝を抱えて座り、顔を埋めていた。
「んぅ……このネックレス、一体なんのためにあるんだろう……」
疲れたようにため息をつく。
吐息で膝がほんのり温かくなる。
『サリス』
その時。
優しい声が頭の中へ直接響いた。
「ひゃっ……!? だ、誰?」
『それは大切じゃないよ』
「えっ? でも、その声……わたしとそっくりなんだけど?」
『気のせいだよ』
「そんなわけないもん。わたし、感知魔法を使ったし」
『嘘だね』
優しい声は少しだけ笑った。
『まだ慣れていないから、私には通用しないよ』
「だから……結局、何が言いたいの?」
『沢恩を見捨てないで』
『みんなを置いていかないで』
「そんなこと、するわけないじゃん!」
『そのネックレスはね――心と心を繋げて初めて力を発揮する』
「心と心を……?」
『そう』
『目を閉じて、魂で触れてみて』
サリスは黙り込んだ。
俯いた彼女の顔には影が落ちる。
荒い呼吸だけが部屋の中へ静かに響いていた。
そして。
彼女はぐっと顔を上げ、力強く叫ぶ。
「…………わかんない!!」
……
ゴロゴロゴロォォォン!!
雷鳴が轟く。
「はぁっ……はぁっ……!」
荒い息遣い。
「早く! こっち!」
幼い少女の声が響いた。
沢恩が顔を上げる。
そこには、まだ幼い頃のサリスが、自分の腕を必死に引っ張りながら走っていた。
激しい豪雨が巨岩と大地を叩きつける。
夜明け前。
空は淡い青色に染まり始めていた。
「きゃあぁぁっ!!」
二人は夢中で走る。
ただ、前だけを見て。
「日の出までに着かないと!」
幼いサリスは泣きそうな声で叫ぶ。
「太陽が明るくなったら……わたしたち、見つかっちゃう!」
二人は必死に走り続ける。
けれど――
やがて重ねていた二つの手は離れた。
それ以来。
二人が再び手を繋ぐことはなかった。
……




