雨の止まない街!?⑤
……
無形空間
……
「Fireball, attack!」
沢恩は拳銃を抜き、間髪入れずに反撃へ転じる。
「Bomb!」
しかしカストロフィは片手を軽くかざしただけで、その攻撃をすべて受け止めてしまった。
「お前は戦ってまだ数年だろう? 俺は何千年も戦場を生き抜いてきた。俺を倒そうなんて――身の程知らずもいいところだ」
余裕たっぷりに攻撃をかわしながら、カストロフィは笑う。
「……」
沢恩は歯を食いしばり、鋭い視線で睨み返した。
「Wind and Poison, attack!」
風魔法で毒球を拡散させ、毒液のような粘液へと変化させて襲いかからせる。
「ブチュッ!」
だが毒液はすべて魔法障壁に弾かれた。
「なかなか頭は回るみたいだな。でも――そんなもの効か……」
「ドンッ!!」
言い終わる前に、崢拓がバイクで思い切り突っ込んできた。
「Nice!」
沢恩が親指を立てる。
「当然だ――うわぁぁっ!?」
返事をしかけた崢拓だったが、怒り狂ったカストロフィにバイクごと掴まれ、そのまま豪快に投げ飛ばされる。
「生きてるかー!」
沢恩は両手をメガホン代わりにして叫んだ。
「おいお前、人を敬うって言葉を知らないのか!」
カストロフィはとうとう完全にキレていた。
「いててて……」
腰を押さえながら崢拓が戻ってくる。
「なあ俺たち、生きて帰れる可能性ってあると思う?」
「お前のことなんか覚えちゃいない。俺の標的は二人だけだ。このガキと、あの金髪の小娘。
だが、お前は勝手に巻き込まれた。なら、ついでに殺してやる」
カストロフィが片手を掲げる。
無数の魔法陣が空中に展開された。
――その時。
漆黒だけが広がる空間に、一枚の巨大なスクリーンがゆっくりと浮かび上がる。
画面の向こうには、顔の見えない魔王が静かに玉座へ腰掛け、こちらを見下ろしていた。
「我が魔王よ……四千年経っても誰一人信用しないんですね。俺のことまで」
カストロフィは肩をすくめてぼやく。
魔王は何も答えない。
ただ、無言で戦況を見つめていた。
「これは面倒だな……ん?」
その一瞬の隙を逃さず。
「Final Beam! Attack!!」
沢恩の拳銃から極太の光線が放たれ、カストロフィへ一直線に突き刺さる。
不意を突かれたカストロフィは、その一撃をまともに受けた。
「バキィッ!」
腕輪が砕け散る。
全身から煙が立ち上り、腕の服が裂け、その下から青緑色の皮膚が露わになった。
「…………」
カストロフィは黙ったままだった。
「我が魔王。どうかご退席を。この程度なら、俺だけで片付けられます」
深く頭を下げる。
「……では、任せよう」
魔王は静かに画面を閉じた。
「くそっ……あのボケ老人め! 脳みそにまともな思考回路が残ってないのか!」
カストロフィは苛立ちを隠さず毒づく。
そして二人を見下ろしながら鼻で笑った。
「ふん。興が削がれた。
今日は見逃してやる」
「……?」
「……?」
「なんだ、その顔は」
「〈通知:弾薬残数ゼロ〉」
「…………ゴホン」
咳払いを一つ。
「さっさと消えろ。
その気になれば、今からでもお前たち二人くらい殺せる」
「沢恩、どうする?」
「今のうちに退こう」
二人はすぐさまその空間を後にした。
残されたカストロフィは、大きく息を吐く。
「はぁ……。
あの魔王のジジイ、本当に昔から何も変わらない」
壊れた腕輪を見つめる。
「新しい魔王に憑依した時も、昔の側近は全員始末した。
蘇った部下は全員疑う。
……俺までな」
静かに腕輪を外し、小さく笑う。
「これさえ壊れれば、俺の能力は全部失われる。
本当に何を考えてるんだか」
そう呟くと、カストロフィは仮面を外し、力なく腕を下ろした。




