Memory ~存在した証~⑥
沢恩が意識を取り戻した時、
彼は勇者たち三人と並んで歩いていた。
勇者はまるで昔からの仲間であるかのように、
自然に沢恩の名前を呼んでいる。
「……!?」
沢恩は胸がざわついた。
まるで、
本当に一度経験した出来事のようだった。
「どうしたの?」
隣を歩くサリスが少し不機嫌そうに聞く。
「……サリス?」
沢恩は戸惑う。
「なに?」
「私が幽霊にでも見える?」
サリスは少しむっとした。
「いや……その。」
沢恩は彼女を見つめる。
「なんか今よりずっと大人っぽい顔をしてたような……。」
「はぁ!?」
サリスは眉を吊り上げる。
「それどういう意味!?」
「まあまあ。」
勇者が苦笑しながら間に入る。
「また二人でケンカするなって。」
「ふん!」
サリスはぷいっと顔を背けた。
その瞬間――
「死なないで……
お願いだから……
死なないで……」
どこからともなく声が聞こえた。
沢恩は薄く目を開ける。
涙を流すサリスが、
目の前に立っていた。
巨大獣と戦った時に見た幻覚と、
まったく同じ光景。
そして、
その声は少しずつ遠ざかっていく。
もう一度目を開く。
今度は、
十年後のサリスのような女性が、
涙を浮かべながらこちらを見つめていた。
その瞬間。
無数の映像が脳裏へ流れ込む。
仲間たち。
鳥の魔獣。
あの狼。
巨大獣。
巨大獣を止めるために命を落とした魔法使い。
そして、
数え切れない黒い影。
突然、
誰かが沢恩の手を掴んだ。
「沢恩!」
「大丈夫!?」
サリスが心配そうに覗き込む。
「……え?」
沢恩は混乱したままだった。
「元に戻ったのか……?
しかも全然怖くない。」
「元に戻ったって何?」
サリスは首を傾げる。
「それに私は沢恩に怖く当たったことなんて一度もないよ?」
彼女には何のことかまったく分からない。
その時だった。
空中へ、
あの青いシルエットが現れる。
次の瞬間。
巨大な火竜が空を駆け抜けた。
燃え盛る炎がシルエットを飲み込んでいく。
「火竜……魔法。」
沢恩は呟く。
「それが火竜魔法なんだ。」
「へぇ……。」
サリスは空を見上げる。
沢恩はまた勇者の姿を見た。
勇者は笑っていた。
まるで、
「また助けてやったぞ。」
そう言っているようだった。
その笑顔は、
幼い頃に見たものとまったく同じだった。
「!」
サリスの瞳が強く光る。
彼女は沢恩の手を掴む。
「走るよ!」
二人は一気に駆け出した。
世界が音を立てて崩れていく。
砕ける。
裂ける。
消えていく。
その間も、
幻覚の中で聞いたサリスのあの一言だけが、
悪意のように何度も何度も沢恩の頭へ響き続けていた。
「きゃっ!」
二人は勢いよく転び、
現実世界へ投げ出される。
「沢恩!」
「サリス!」
ササス・サスサが慌てて駆け寄る。
「二人とも大丈夫!?」
「うん……
大丈夫。」
沢恩は答える。
しばらく休息を取ったあと、
ようやく彼は平静を取り戻した。
四人は再び依頼人のもとへ向かう。
道中、
誰一人として口を開かなかった。
それぞれが、
胸の中で見たものを整理していた。
誰も、
自分が幻覚で何を見たのかを語ろうとはしなかった。
……
「事情は分かりました。」
ササス・サスサが静かに口を開く。
「あなたの息子さんは、
あなた自身に会いに来てほしいと言っています。」
「……ああ。」
老人は涙を流しながら何度も頷く。
「行く。
もちろん行くとも……。」




