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魔法×テクノロジー!?未来異世界コンチェルト(銃が普及した未来異世界。それでも魔法は廃れず、勇者は今日も魔王討伐へ向かう。)  作者: 紫沐時


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平和の綻び

朝。空はすでに淡い青色に染まり始めていた。

目覚まし時計の鈍いアラームが部屋中に響く。

「ん……うぅ……ああああっ!」

アラームを止めようと手を伸ばした沢恩は、うまくつかめず、そのままベッドから転げ落ちた。

「父さん、母さん、おはよう。起きたよ」

沢恩は眠そうに目をこすりながら声をかける。

これから何をするべきなのか――。 彼の頭の中には、現実味のない夢や考えばかりが浮かんでいた。

朝食の席では、両親の優しい挨拶が、沢恩の食事をする音とともに穏やかに流れていく。

食事を終えた沢恩はスマートフォンを開いた。 ショート動画アプリでは、一本の動画がすでに百万回以上再生されていた。

「五年前の、あの日――」

映し出されていたのは、魔王との最終決戦の映像。 激しい戦いの記録が次々と流れていく。

沢恩は、その映像の中に自分の姿を探した。 しかし、どこにも映っていない。

映し出されるのは、魔王討伐を成し遂げた勇者パーティーばかりだった。

自室へ戻った沢恩は、大切にしまってあるゲーム機や漫画を眺める。 カーテンを開ければ、目の前には高層ビルが立ち並ぶ平和な街並み。

まるで五年前の出来事など、一度も存在しなかったかのようだった。

それでも、人々には分からない。

次は、いつ訪れるのか

「ねえ、もう着く?」


「(空を飛んでいる猫のスタンプ)もうすぐ! こうやって来てるから!」


「大げさすぎるでしょ(笑)」


「もう着くよ!」


「本当に? 車も何も見えないけど?」


「横に避けて!」


「なんで?」


「説明してる暇ない!」


「ちょっと待って……そのスタンプ、まさか事実を表してるんじゃ――」


メッセージを送った次の瞬間。


ドンッ!


沢恩は何かに思い切りぶつかられ、その場に倒れ込んだ。


「うぐっ……」


「うっ……」


二人はほぼ同時にうめき声を漏らした。


「は、早くどいてぇぇぇぇ!!」


地面に押しつぶされた沢恩が悲鳴を上げる。


「む、無理! どうにもできない!」


サリスも困り切った表情で叫んだ。


彼女の体勢もかなり悲惨だった。


頭は沢恩の背中に乗ったまま、足だけが壁について逆立ち状態。


まさに身動きの取れない格好である。


二人は何十人もの人間が同時に口論しているかのような大騒ぎを繰り広げた末、ついにサリスが支えきれず、そのまま沢恩の横へ転げ落ちた。


「久しぶり!」


サリスは満面の笑みで言った。


「うわぁ……何やってるんだよ、お前。」


沢恩は呆れたように文句を言う。


「実は最近、飛行魔法を覚えたんだ! 私は世界一の魔法使いになるんだから!」


サリスは胸を張って宣言した。


「へぇ、やっぱりお前って生まれつきの魔法使いなんだな。」


「当たり前でしょ! あんたもそうじゃない!」


二人はいつものように言い合いを始める。


「でも難しすぎるんだよ。お前だって飛行魔法一つ覚えるのに十二年もかかったじゃん。子どもの頃なんて、魔法の勉強ばっかりしてる時間なんてなかったし……」


……


そんなふうに騒ぎながら、ようやく二人は今日の予定をスタートさせた。


向かった先は遊園地だった。


しかし、二人にとっては、どのアトラクションもあまり新鮮には感じられない。


お土産を買い、いくつかのアトラクションで遊び、軽食を食べる。


ジェットコースターに乗るくらいなら、サリスに沢恩をつかんで空を飛んでもらったほうが、よほどスリルも恐怖も味わえる。


ほかのアトラクションも、昔から何度も遊び尽くしていた。


「あっ、あそこに当時の勇者パーティーの銅像がある! 一緒に写真撮ろうよ……えっ、お金かかるの!? じゃあやめよう。」


サリスは終始しゃべり続けている。


「知ってる? 俺さ、実は勇者パーティーの人たちと会って話したことがあるんだ。」


沢恩は少し自慢げに言った。


「えっ、本当!? 聞かせて!」


サリスの目がきらきらと輝く。


「もちろん。あれは確か……」


沢恩は、五年前の出来事を久しぶりに語り始めた。


「うーん……」


話を聞き終えたサリスは腕を組み、少し悔しそうに言う。


「今は平和な時代だから、覚えられる魔法に制限があるだけ! 火竜魔法くらい、私だってきっと使えるもん!」


そう言ったかと思えば、すぐに話題を変えた。


「でもさ、あの時の沢恩、すっごくかっこよかったよ! 自分で作った氷を自分で溶かしちゃったところなんて、もう最高! あははは!」


サリスは楽しそうに笑い出した。


二人はじゃれ合いながら動物園へとやって来た。


園内へ足を踏み入れた瞬間、二人の表情が固まる。


展示エリアの檻の中にいたのは、かつて人類を襲った牙獣や鉄身獣などの魔獣たちだった。


「昔は人間を襲っていた魔獣が、今は見世物になってるのか……。」


沢恩は思わず鳥肌を立てた。


サリスは当時戦場には立っていなかったが、地下シェルターで過ごした日々を思い出し、どこか居心地の悪そうな表情を浮かべる。


「だよね……なんだか変な感じ。」


サリスも同意した。


その時、園内のテレビからニュースが流れる。


「近年、牙獣および猛攻獣の個体数は、毎週〇・〇一%という極めて不可解な増加傾向を示しています。」


沢恩は、空気そのものに嫌な気配が混じっているような感覚を覚えた。


「今日は動物さんたち、ずいぶん元気ですねぇ。」


近くの来園者がそんなことを言う。


ドン……。


ドン……。


鈍い衝撃音が何度も響く。


そして――


ガシャァァン!!


巨大なガラスが砕け散った。


牙獣が鋭い爪でガラスを叩き割り、そのまま外へ飛び出してきたのだ。


「っ!」


沢恩もサリスも反応する暇はなかった。


二人は他の来園者たちと一緒に、安全な場所へ突き飛ばされる。


その直後、一人の女性が空高く跳び上がった。


彼女は牙獣の頭部へ何度も蹴りを叩き込み続ける。


約十分に及ぶ激闘の末、牙獣はついに気絶した。


女性は周囲へ安全を知らせるように手を挙げ、そのまま立ち去ろうとする。


「うわぁぁぁ……なんで休みの日に限ってこんなことになるのよぉ……。」


去り際、小さな声で愚痴を漏らしていた。


「すごい……あの人、本当に人間なの?」


サリスが驚いたように呟く。


「いや、人間じゃない。エルフだよ。」


沢恩はようやく息を整えながら答えた。


「え?」


サリスは首をかしげる。


「少し褐色の肌で、肌の露出が多い服を着ていて、靴もあまり履かない。それに腕力も桁違いだ。耳は見えなかったけど、それだけで十分判断できる。」


「えぇ……教科書の内容、まだ覚えてたの?」


サリスは呆れたように言ったが、恐怖はまだ抜け切っていない様子だった。


来園者たちは休憩室へ避難し、一部では心理カウンセリングも始まっていた。


動物園はすぐに封鎖された。


沢恩とサリスもようやく落ち着きを取り戻したものの、手の震えだけは止まらない。


もう遊ぶ気分ではなかった。


一刻も早く、安全な場所へ帰りたい。


「もう……大丈夫、だよね?」


サリスが恐る恐る口を開く。


その瞬間――


通りの方から悲鳴が聞こえた。


「……終わった。」


サリスが青ざめて呟く。


大通りでは、一体の鉄身獣が暴れ回っていた。


ダダダダダダッ!!


銃声が連続して響く。


沢恩は遠くから見て、すぐに気づいた。


「あれ……さっきのエルフの人だ。」


しかし、弾丸は鉄身獣の硬い装甲に弾かれ、まるで効いていない。


彼女も時間を稼ぐことしかできていなかった。


「慌てないでください! こちらへ避難してください!」


人間の同僚たちが必死に住民を誘導する。


「こちらへどうぞ!」


一人のスタッフが二人の目を覆い、そのまま安全な方向へ導いた。


その時――


ドォォン!!


激しい爆発とともに、足元の道路が崩れ落ちる。


しかも、鉄身獣はこちらへ一直線に突進してきていた。


「待ちなさいっ!」


エルフの女性は新たに火炎放射器を受け取る。


高熱を装甲へ伝導させ、鉄身獣を倒すための専用装備だ。


「そこの金髪の子!」


戦いながら、彼女はサリスへ叫ぶ。


「転移魔法とか使えるんでしょ!?」


徐々に押され始めている。


「友達を連れて、二人とも早く逃げなさい!」


その言葉で、サリスははっと我に返った。


沢恩の服の襟をつかみ、そのまま無理やり飛び上がる。


「うわあああっ!」


何度も建物や壁にぶつかりながら飛び続け――


ようやく沢恩の家の前へとたどり着いた。


サリスは遠方から遊びに来ていたため、今日は沢恩の家に泊まる予定だった。


「ただいま……!」


沢恩は息を切らしながら両親へ事情を説明する。


ようやく一息ついた二人は、スマートフォンを開いた。


ニュース速報が表示される。


> 「市街地で鉄身獣が出現。専門対策員ササス・サスサが現在も対応を続けています――」




沢恩は静かにスマートフォンを閉じ、その場へ力なく座り込んだ。


サリスもまた、小さく手を組み、静かに祈る。


この町に住む誰一人として、今日の出来事がただの偶然だったのか、それとも何かの始まりなのかを知る者はいなかった。

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