Memory ~存在した証~③
風はなおも吹き続けていた。
赤と黄金の木の葉が空いっぱいに舞い上がる。
その葉は風に乗り、まるで何かへ導くように、一つの方向へ流れていく。
「……追いかけよう。」
沢恩が静かに言う。
木の葉は空気の一部になったかのように流れ続け、
やがて空中で朽ち、
静かに地へ落ちて土へ還っていく。
風が止む。
舞っていた葉も再び地面へ戻った。
彼らが辿り着いた先は、先ほど見つけたあの小さな墓碑だった。
今度はさらに多くの黄金色の葉に覆われている。
この場所の葉だけは、朽ちることを知らないかのようだった。
墓碑の上には、どこからともなく穏やかな音楽が漂っている。
Kaelnonは小さな古びたハーモニカを手にし、
四人へ背を向けたまま演奏していた。
懐かしいようで、
どこか知らない旋律。
まるで二十年前の夢を奏でているようだった。
演奏が終わる。
Kaelnonの手にあったハーモニカは、
静かに一枚の木の葉へと姿を変え、風に乗って消えていく。
彼はゆっくり振り返り、四人を見つめた。
真っ白な服。
陽の光を受け、眩しいほどに輝いている。
その足が地面へ触れるたび、
虹花が一輪、また一輪と咲いていった。
「それで……」
Kaelnonは首を傾げる。
「君たちは、どうして僕のところへ来たの?」
その表情には、はっきりとした戸惑いが浮かんでいた。
「君を連れて帰るためだ。」
沢恩は真っ直ぐ答える。
「ずっと、そのために来た。」
「……もしかしたら。」
Kaelnonは静かに言う。
「君たちのほうが、何かを勘違いしてるのかもしれない。」
「!」
その瞬間。
Kaelnonの背後から違和感が走る。
「カサ……カサ……」
落ち葉の中から、何かが動く音。
「ガアァッ!」
一体の急奔獣が茂みを突き破り、飛び出した。
「え?」
Kaelnonが振り返る。
だが急奔獣は一直線に彼へ飛びかかった。
「まずい!」
崢拓が叫ぶ。
彼は耳元へ手を伸ばした。
サリスに頼んで小型化してもらっていたバイクは、耳飾りとして身につけられている。
耳飾りを外すと、
バイクは一瞬で本来の大きさへ戻った。
崢拓はKaelnonを抱き上げ、
そのままバイクへ飛び乗る。
「ブォォォン!!」
エンジンが唸る。
バイクは大地を駆け抜け、
黄金の落ち葉を無数に巻き上げた。
左右の森からは、
さらに多くの急奔獣が姿を現し、追いかけてくる。
「行くよ!」
サリスは空へ飛び上がり、
二人を追った。
その後方では、
ササス・サスサが静かに狙撃銃を構える。
狙うべきものはただ一つ。
バイクと二人に当てさえしなければいい。
だから彼女の引き金に、一切の迷いはなかった。
「はあっ!」
サリスは高く右手を掲げる。
掌が光り、
巨大な魔法陣が空中へ展開された。
次の瞬間、
色とりどりの魔法弾が雨のように降り注ぐ。
同時に、
沢恩が追尾弾を撃ち放つ。
魔法弾と追尾弾が空中で重なり、
巨大な爆裂魔法へと変わった。
「ドォォォン!!」
爆炎。
火柱。
衝撃波。
無数の急奔獣が吹き飛ばされる。
それでも。
なお新たな急奔獣が森の奥から現れる。
まるで終わりが存在しないかのように。




