霧の沼沢②
申し訳ございませんが、気力の限界でこの章を書き終えることができませんでした。明日には必ず補完させていただきます。ところで、これが私のXアカウントです:https://x.com/lyhu348214
沼地地帯。
「うわっ……ここ、ぬかるんでて足にまとわりつく……」
ササス・サスサは顔をしかめた。好き好んで泥の中を裸足で歩く者などいない。
「えへへ、私は飛べるもん。」
久しぶりに子どもっぽくはしゃぐサリス。
「すごいな、その縮小魔法。俺のバイク、キーホルダーくらいの大きさになってるじゃん。」
「えへへへへ、すごいでしょ!」
サリスは胸を張って得意げに笑う。
「……ってことは、元に戻すのも簡単なんだよな?」
そう尋ねた崢拓に対し、サリスは無言でぷいっと顔を背けた。
「え? おい!!!」
――魔王城。
「My Lord.」
カストロフィが深く一礼する。
「この世界に勇者パーティーはいくつある?」
「非常に少ないです。およそ五百ほどかと。」
「……少ないな。」
「それでも、陛下の幻影が暇つぶしに作った玩具一つで、一隊壊滅寸前まで追い込まれました。」
「今の人類はそんなにも弱いのか。ハハハハハ!」
「陛下は文明の終焉に君臨した、最後にして究極の魔王。文明が始まったばかりの人類など、相手にもならないでしょう。」
「当然だ。」
「ですが……」
「どうした。」
「壊滅しかけたその小隊に、どうしても見覚えのある気配と容姿の者が二人いました。」
「……何?」
魔王の額に汗が浮かぶ。
「薄い灰紫色の瞳を持つ少年と、金髪に赤い瞳の少女です。」
「……ありえん。そんなはずはない。」
――沼地地帯。
「うわぁぁ!! いつになったらここ抜けられるのーー!!」
空をふよふよ飛びながら、サリスは手足をばたつかせて不満を爆発させる。
「もうすぐだから安心しろ。」
スマホのナビに表示された「残り三万メートル」を見ながら、沢恩は適当なことを言った。
「……ちょっと。」
ササス・サスサが声を潜める。
「今、何か聞こえなかった?」
「サァァ……」
風が草木を揺らす音。
「グワァッ!」
車ほどもある巨大なカエル型魔獣が、泥の中から飛び出した。
「グォアッ!」
長い舌が高速で薙ぎ払われる。
「わっ!」
ササス・サスサは素早く跳び上がって回避。
「!」
沢恩も後方へ宙返りする。
「シュッ!」
空気を裂く音。
崢拓のナイフが巨大な舌へ突き刺さった。
「グワァッ! グワグワグワ!!」
蛙の魔獣が怒り狂って吠える。
「……なんか、めちゃくちゃ悪口言われてる気がする。」
沢恩はそう呟きながら銃を構え、ササス・サスサも携帯機関銃を取り出した。
「ぷちゅっ。」
魔獣はぬめる皮膚と柔軟な身体で攻撃を避け、おまけにその見た目だけで四人を少し気持ち悪くさせた。
「Chase and Fast――Attack!」
沢恩は弾丸を切り替える。
無数の追尾弾が蛙魔獣へ殺到し、命中寸前――
「グワグワ。」
まるで飛んできた蚊でも飲み込むかのように、一瞬で丸呑みにしてしまった。
サリスが手を振る。
植物魔法。
無数の蔓が蛙魔獣を拘束する――が、全身を覆う粘液によってあっさり滑り落ちた。
「グワ! グワ!」
「うるさい!」
沢恩はたいまつを一本、その口の中へ放り投げる。
「グワアアア!! グワグワグワ!!」
炎に慌てた蛙魔獣は泥の中を転げ回りながら逃げ始めた。
「今だ、小娘!」
ササス・サスサが叫ぶ。
「うん!」
サリスは再び蔓を伸ばし、今度は逃げる蛙魔獣をしっかり拘束した。
「Ice Beam――Attack!」
沢恩は引き金を引き続け、氷霧のビームを放つ。
蛙魔獣は一瞬で巨大な氷像へと変わった。
「次は私だ!」
ササス・サスサは一番重い機関銃を振り上げる。
「せぇぇい!」
「パリーン!」
氷像は粉々に砕け散った。
戦闘終了。
「……勇者って、普段からこんな危険なのか?」
崢拓が呆然と尋ねる。
「Of course.」
沢恩は即答した。
「やったー!」
サリスは嬉しそうに沢恩のところへ駆け寄り、ぱんっと両手でハイタッチした。
その日の夜。
「またテント生活かぁ……。」
サリスは少し残念そうに肩を落とす。
「一人増えたけど、テント足りるの?」
「十二張り持ってきて、全部収納魔法に入れてある。甘い物ばっか食べる生活習慣終わってる奴がいなければ、多分足りる。」
沢恩は顔も上げずに答えた。
「俺ん家より豪華なんだけど……。」
崢拓がぽつりと呟く。
――魔王城。
「My Lord。前代の魔王を討った、あの勇者ですが……」
カストロフィが口を開く。
「あの三人と、今のあの二人……まさか。」
「ありえん。」
魔王は即座に否定した。
「奴らは一つ前の時代の人間だ。」
「ですが、気配も容姿も一致しています。ただ一つ奇妙なのは、灰紫色の瞳の少年が、私のことをまるで覚えていないことです。演技には見えません。……転生、でしょうか。」
「……ありえない。」
「でしたら、一度試してみましょう。」
「……いいだろう。一度だけお前に従う。」
魔王は虚空を見据える。
やがて、今の文明周期における第一代魔王――石器時代以前より存在する古き魔王が姿を現した。
「お前だ。」
「オゥ。」
「行って、あの四人を試してこい。」
「オォッ!」
第一代魔王は短く応え、そのまま魔王城を後にした。
夜は更ける。
四人は静かにテントで眠りについた。
誰一人として、明日待ち受ける出来事を知る者はいなかった。




