巨獣との決戦⑤
時が来た。
巨獣を縛っていた鎖が、轟音とともに砕け散る。
無数の魔法の粒子となり、空一面へ舞い上がった。
「オオオオオオオオォォォォッ!!」
巨獣の咆哮。
衝撃波だけで廃墟は完全に粉砕され、辺り一帯は何もない露天の戦場へと変わった。
「もう!?」
ササス・サスサも不意を突かれたように目を見開く。
巨獣は、たった四歩。
それだけで五千メートルもの距離を踏み越えた。
「グオオォッ!」
獲物を見つける。
その瞬間――
巨獣との決戦が始まった。
「Fire Bomb, Attack!」
沢恩が引き金を引く。
無数の炎の幾何学体が巨獣へ降り注ぐ。
毛並みに炎が燃え移った。
「よし!」
しかし。
次の瞬間には炎は消え去り、純白の毛並みは傷一つなく元へ戻っていた。
「はぁっ!」
ササス・サスサは支援用ロケットランチャーを構え、発射。
爆炎が空を照らす。
だが、それだけだった。
「やっぱりかぁ……。」
沢恩は苦笑する。
「この巨獣、熱血作品とか嫌いなんだな。
こっちがここまで頑張っても、防御力を下げてくれたりしないし……。」
「今それ言うことかよ!!」
崢拓はササス・サスサから受け取った機関銃を撃ちながら叫んだ。
……
巨獣は微動だにしない。
どんな攻撃も意味を成さない。
……
その後方。
サリスとグラセスは空中へ浮かびながら詠唱を続けていた。
無数の鋭い魔法が巨獣へ降り注ぐ。
しかし、命中した瞬間に砕け散り、傷一つ付けられない。
グラセスはさらに詠唱を重ねる。
「雲の息吹――」
空を覆う雲すべてが光線砲台へ変化した。
一斉砲撃。
さらに宇宙から巨大な隕石を召喚し、そのまま巨獣へ叩き落とす。
「今です!」
サリスは風雨魔法を発動。
雷鳴。
無数の落雷が巨獣へ降り注ぐ。
煙が晴れる。
そこには、全身へ大きな裂傷を負った巨獣の姿があった。
「今だ!」
ササス・サスサは傷口へロケット弾を撃ち込む。
「Final Beam, Attack!」
沢恩も最大火力を放つ。
全員が一瞬の隙を逃すまいと攻撃を重ねる。
しかし――
「ドォン!!」
巨獣が再び大地を叩いた。
超巨大な衝撃波。
全員が吹き飛ばされる。
さらに。
巨獣の一撃は沢恩へ直撃した。
天地が崩れ落ちる。
砕けた山そのものが彼へ降り注ぎ、巨大な岩石の下へ押し潰された。
周囲は炎に包まれる。
戦線は、一瞬で崩壊した。
そして。
巨獣の驚異的な再生能力によって、全身の傷は瞬く間に消え去る。
再び。
無傷の白い巨体だけが立っていた。
……
……
山の岩盤へ埋もれた沢恩。
声を出そうとしても、喉は動かない。
意識が遠のく。
その時。
彼は、自分の人生を最初から最後まで眺めるような感覚に包まれた。
そして――
ずっと思い出せなかった記憶へ辿り着く。
まるで魂だけになったような視点で。
幼い頃の自分を見つめていた。
目の前には。
巨大なゴリラのような姿をした残暴獣。
幼い沢恩は震えながら銃を構える。
「近寄るなぁぁ!!」
泣き叫びながら、白い魔法弾を何発も撃つ。
しかし。
まるで効かない。
「オオオオオオォォ!!」
残暴獣が咆哮する。
巨大な拳を振り上げ、幼い沢恩を叩き潰そうとした、その瞬間――




