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魔法×テクノロジー!?未来異世界コンチェルト(銃が普及した未来異世界。それでも魔法は廃れず、勇者は今日も魔王討伐へ向かう。)  作者: 紫沐時


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巨獣との決戦③


広場――大地。


「ブゥゥン……」


サリスは掌に灯る光を、グラセスへ見せた。


「ふむ……」


グラセスは真剣な表情で、その光をじっと観察する。


やがて静かに口を開いた。


「あなたの掌には、ごく普通の『光』しか宿っていません。」


「まだ、それでは足りません。」


「じゃあ……私は何をすればいいんですか?」


サリスは尋ねる。


「まずは、その魔法を維持し続けてください。」


グラセスは穏やかに答えた。


「え? あ……はい。」


サリスは素直に頷き、そのまま魔法を維持する。


それは決して楽ではなかった。


全力で走り切り、もう一歩も動けないほど疲れ切ったあと、それでもなお走り続けろと言われているような苦しさ。


全身が悲鳴を上げている。


それでも。


巨獣を倒すために。


もっと強くなるために。


サリスは歯を食いしばった。


「……?」


ふと目を開く。


そこは真っ白な世界だった。


掌を前へ伸ばすと、遠くに黒い線がぼんやりと浮かび上がる。


「これって……わっ!」


サリスは近付いた瞬間、勢いよく何かへ頭をぶつけた。


「いたぁっ!」


額を押さえながら頬を膨らませる。


どうやら――迷宮らしい。


「迷宮……?」


「向こうまで行けばいいのかな……?」


小さく呟き、


「よーし!」


「突き進みます!」


拳を握り、迷わず歩き出した。



一時間後――



「うぅ……気持ち悪い……」


サリスは吐き気を堪えながら地面へ倒れ込む。


「進めば進むほど分かれ道が増えて……全然出口が見つからないよ……」


一度、引き返すことにした。


しかし。


ようやく出発地点へ戻ったと思った瞬間――


「えっ……?」


そこには最初の場所は存在しなかった。


代わりに、まったく別の景色が広がっている。


つまり。


この迷宮は、常に姿を変え続けている。


「それでも……!」


サリスは歯を食いしばる。


そしてもう一度、歩き始めた。


その決意は、さっきよりもずっと強くなっていた。


「……?」


どこからか。


澄み切った鈴のような音が響く。


「リン……リン……」


数歩進むと、青く輝く光球が浮かんでいた。


「これは?」


そっと手を伸ばえる。


光球は掌へ吸い込まれ、そのまま身体へ溶け込んだ。


「……何が起きたの?」


首を傾げながらも、さらに迷宮を進む。


その時だった。


何かがおかしい。


背後に妙な気配を感じる。


振り返る。


空を埋め尽くす鳥魔獣。


五年前の先代魔王。


自分を襲った双頭八脚狼。


そして――あの巨獣。


全部。


自分が恐れてきた存在だった。


「……!」


サリスは眉を寄せる。


鳥魔獣が一斉に地面へ降り注ぐ。


彼女は走る。


避ける。


走る。


避ける。


「風の矢よ――!」


グラセスに教わった詠唱。


魔法は、詠唱して放つ方がより強くなる。


緑色の矢が次々と鳥魔獣を撃ち抜く。


魔獣たちは羽根となって消えていく。


サリスは振り返らない。


背中へ指を向ける。


風の矢が後方へ飛ぶ。


狼の断末魔。


そして、それも消えた。


気付けば。


全ての魔獣が姿を消していた。


その瞬間。


景色が激変する。


「友達もいないなんて、あいつ終わってる。」


幼い頃の子供たちの声。


「魔法なんて勉強して何になる? 時間の無駄だ。」


高校教師の声。


「今のお前、何やってるの? 本当に情けない。」


両親の声。


心臓の鼓動が乱れる。


胸が苦しい。


「はぁ……はぁ……」


深呼吸。


そして。


また歩き始める。


「……え?」


今度は燃え盛る街。


人々の悲鳴。


仲間たちの死。


姿の見えない魔王の咆哮。


世界は溶岩に飲み込まれていく。


「…………」


サリスはただ見つめた。


まるで、安っぽい手品を見抜いたように。


「パリン――」


ガラスが砕けるような音。


幻は一瞬で崩れ去った。


目の前には、赤く輝く光球。


それもまた、彼女の身体へ溶け込んでいく。



その後も。


何時間も。


歩いて。


歩いて。


歩いて。


終わりは見えなかった。


……


……


……


気付けば。


迷宮の隅々まで歩き尽くした気がした。


「もしかして……」


「私は最初から、間違った道を探していたのかな……」


サリスは胸に手を当てる。


「私は……最強になりたいわけじゃない。」


「世界一偉大になりたいわけでもない。」


「強さには終わりなんてない。」


「どれだけ強くなっても、きっとその先がある。」


「私が願ったこと。」


「私が努力してきた理由。」


「全部、最初から一つだけだった。」


「――大切な人を守れる力が欲しかった。」


サリスはゆっくり顔を上げる。


そこには。


紫色に輝く光球が浮かんでいた。


光球が彼女へ触れる。


次の瞬間――


現実へ戻っていた。


現実では、まだ十五秒しか経っていなかった。


「どうやら……成功したみたいですね。」


グラセスが微笑む。


「あなたは、何色を見ましたか?」


彼女は用意していた判別書をサリスへ差し出す。


サリスは読み上げる。


「青は……『忍耐』。」


「赤は……『勇気』。」


「紫は……『覚悟』。」


「…………」


「うわぁぁぁ、知恵がないじゃん!」


サリスは少しだけ不満そうに頬を膨らませる。


「ふふっ。」


グラセスは小さく笑った。

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