first mission③
三人は再び森へ向かった。
「うーん……いないなぁ」
サリスは周囲を見回しながら歩く。
「!」
その時、彼女は何かを見つけた。
サリスは空へ飛び上がり、近くの切り株へ向かう。
慎重に触れてみる。
そこには、何か大きな獣が噛みついたような跡が残っていた。
「これは……重要かも」
サリスはスマホのカメラを向け、二人に見せる。
「待って!?」
ササス・サスサの声が急に焦ったものになる。
「サリス、あなた……森の奥まで入りすぎてる!」
「え?」
サリスは周囲を見渡した。
いつの間にか、彼女の周りには深い森しかなかった。
「戻ってこい!」
沢恩の声がスマホから響く。
その瞬間。
サリスは何か違う音を聞いた。
警戒しながら、ゆっくりと後ろへ下がる。
「……グルルル……」
低く響く唸り声。
「近くにいる……!」
サリスの表情が真剣になる。
「聞こえた。小さい音だけど……分かる。普通の魔獣じゃない」
沢恩が告げる。
「グオオオオオ!!」
突然、森の奥から巨大な影が飛び出した。
「きゃっ!」
サリスは驚いて声を上げる。
「ふっ!」
空へ飛び上がり、二人の元へ向かおうとする。
しかし魔獣は執拗に追いかけてくる。
「っ!」
サリスは身体を横へ逸らした。
魔獣がすれ違った瞬間。
彼女はその姿を確認した。
二つの頭。
八本の足。
灰色の毛。
「双頭八脚灰狼……!」
「くっ……!」
サリスの心臓が激しく鳴る。
バランスを崩し、地面へ落下した。
背中と膝を強く打つ。
双頭狼はゆっくりと近づいてくる。
サリスは悔しそうに目を閉じた。
「大丈夫だ! 今行く!」
沢恩の叫び声。
「お嬢ちゃん! あと三十秒だけ耐えて!」
ササス・サスサの移動音が聞こえる。
その時だった。
サリスは昨日覚えた魔法を思い出す。
震える手を前へ出す。
すると、手のひらから緑色の光が溢れた。
「……!」
「グル?」
双頭狼が不思議そうに鳴く。
次の瞬間。
地面から伸びた木の枝が、勢いよく魔獣の身体へ絡みついた。
「捕まえた!」
「ドンッ!」
その瞬間。
サリスの背後から大きな音が響く。
沢恩が空中から落下し、サリスの前へ着地した。
片膝をつきながら、目を見開いて双頭狼を睨む。
「Poison and fast,attack!」
紫色の液体が次々と魔獣へ叩き込まれる。
双頭狼は苦しそうに吠えながら暴れ回る。
そして――
地面が揺れた。
「!」
次の瞬間、魔獣の顎が地面へ叩きつけられる。
「この野郎……!」
ササス・サスサが二つの頭の上へ降り立った。
そのまま尻尾を掴む。
「飛べ!」
彼女は魔獣を空へ投げ飛ばした。
「Air cannon and heavy,attack!」
空気砲を利用し、沢恩は再び高く跳ぶ。
空中で魔獣へ向けて一撃。
さらに重力を重ねる。
「!!」
沢恩自身の重力を利用した拳が、魔獣を地面へ叩き落とした。
大きな煙が舞う。
そして――
双頭八脚狼の姿が変化する。
巨大な魔獣は二匹の普通の狼へ分裂した。
二匹は別々の方向へ逃げ出す。
「逃がすか!」
沢恩は銃口を向ける。
「Teleport,attack!」
地面へ向けて撃つ。
二つの魔法陣が現れる。
「まだ終わってないよ!」
ササス・サスサは空中を駆け抜ける。
狼は必死に走る。
弾丸がその周囲の地面を次々と吹き飛ばす。
しかし、狼の目的は明確だった。
開けた場所へ逃げること。
「そこ!」
サリスが手を伸ばす。
「バキバキッ!」
土の中から大量の根が伸び、狼の身体を縛り上げる。
サリスは緑色の光を纏いながら、その狼へ向かって飛ぶ。
その隙を逃さず――
「今!」
ササス・サスサの銃弾が狼の頭部へ命中した。
一方。
沢恩は魔法陣の上に立っていた。
身体が光に包まれる。
次の瞬間。
狼の背中に出現した魔法陣から沢恩が現れる。
突然発生した重力により、狼は地面へ押し潰された。
沢恩は静かに着地する。
そして――
引き金を引いた。
巨大な光線が狼を包み込む。
――
「大丈夫?」
ササス・サスサはサリスを優しく支える。
「私たちが来たから、もう安心だよ」
サリスは白い歯を見せて笑った。
そして、沢恩の額に浮かんだ汗を拭う。
「私は平気」
サリスは迷いなく答えた。
――
「ありがとう。本当に助かった」
ギルドへ戻ると、依頼主の男性は深く頭を下げた。
「これは報酬だ。受け取ってくれ」
沢恩たちは報酬を受け取る。
外へ出る。
三人はしばらく何も言わなかった。
今日の戦い。
初めての依頼。
そして――
これから始まる未来。
三人は理解していた。
自分たちの勇者の旅は――
今、始まったのだ。




