SOS、シェルターへの避難作戦②
瓦礫と化した街の中を、三人は全力で駆け抜ける。
「ガアアッ!」
牙をむき出しにした牙獣が、一行へ飛びかかってきた。
「待ちなさいっ!」
ササス・サスサはその場で身体をひねり、一回転。その勢いのまま鋭い蹴りを牙獣の顎へ叩き込む。
牙獣の身体が宙へ浮いた。
「パンッ!」
その一瞬の隙を逃さず、首筋へ正確な一発を撃ち込む。
牙獣は地面へ崩れ落ちた。
「今、一番警戒しなきゃいけないのは猛攻獣よ!」
そう叫んだ直後だった。
目の前へ巨大なビルの瓦礫が崩れ落ち、近道を完全に塞いでしまう。
「最悪……嫌な予感ほど当たるのよね。」
ササス・サスサは小さく舌打ちした。
「私を信じて!」
サリスはそう言うと、自分の身も顧みず空へ舞い上がる。
上空から見えたのは、魔獣だらけの曲がりくねった一本道だけ。
しかし、それが唯一進めるルートだった。
「行ける道は一本しかありません!」
「……任せて。」
そう一言だけ残し、ササス・サスサの表情が一瞬で戦闘用のものへ切り替わる。
「ササス・サスサさん! 猛攻獣がすぐ後ろです! まだこちらには気付いていません!」
沢恩が振り返って叫ぶ。
「まずい! 急いで! 時間がない!」
その瞬間、二匹の牙獣が左右から飛びかかる。
「パン! パン!」
二筋の閃光が空気を切り裂き、それぞれの頭部を撃ち抜いた。
一匹はその場で倒れる。
もう一匹はふらつきながらも突進を続ける。
「はあっ!」
ササス・サスサは跳び上がり、その背中へ着地。
銃口を後頭部へ押し当てる。
「パン!」
発砲と同時に身体を蹴り上げ、そのまま美しいバック宙で着地した。
「……っ!?」
振り返った、その瞬間。
シュッ――!
三本の白い軌跡が顔をかすめた。
頬へ三本の血筋が走る。
「くっ……!」
傷口を押さえながら顔を上げると、そこには牙獣の亜種――利爪獣が低く唸りながら睨みつけていた。
「ふっ!」
一方、沢恩は全身の力を振り絞り、巨大な岩を押し倒す。
轟音とともに道が塞がれ、人間だけが何とか越えられるほどの隙間だけが残った。
「牙獣と利爪獣だけです! 遠くに鉄身獣が一体いますが、まだかなり離れています!」
息を切らしながらサリスが状況を報告する。
「ササス・サスサさんを助けに戻ろう!」
「うん!」
二人は迷わず引き返した。
「ちっ……しつこい!」
ササス・サスサは歯を食いしばる。
地面へ押し倒され、両腕で利爪獣の前脚を必死に押さえ込んでいた。
腕は震え、限界が近い。
利爪獣は唾液を垂らした牙をむき出しにしながら咆哮し、その息が顔へ吹きかかる。
「ガアアアッ!」
――その咆哮が突然、悲鳴へ変わった。
「えっ……?」
見上げると、利爪獣の片目に銃弾が突き刺さっている。
その一瞬の隙を逃さない。
「はあっ!」
渾身の拳を顔面へ叩き込み、利爪獣を吹き飛ばす。
そのまま転がるように拳銃へ飛びつき、拾い上げる。
「パン!」
最後の一発が首元を貫き、利爪獣は完全に動かなくなった。
「ササス・サスサさん、大丈夫ですか?」
沢恩が駆け寄り、彼女を起こす。
「私は平気。でも……あれは何?」
ササス・サスサは前方を指差した。
その先には、青く半透明で、まるで液体そのもののような奇妙な生物がゆっくりと蠢いていた。




