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黄煙が晴れていく。
空から絨毯爆撃のように降り注いでいた瓦礫とギガダストは散発的となり、落着粉砕されたそれらの残骸も死酸島の環境ギミックにより溶け崩れ、あるいはゲームシステムにより異物と判断されて電脳の海に飲まれて消えていく。
静かな浜辺を取り戻すその中をエストメルドのウェルカム大看板が突き刺さり、身長が倍になった黒い大型ギガダストが歩いていた。
その足取りは左膝間接が壊れているようで片足引きずってぎこちなく、片足庇い、突き刺さる大看板のせいで重心がめちゃくちゃで、歩みは歪だった。
突き刺さった大看板が塵面気ごと頭部を真っ二つにしており、割れた面が宿す光は弱々しい点滅を繰り返し、装甲外皮の表面は死酸に侵され、破壊こそ免れているが黄煙を上げている。
セーフティエリアは目の前なのに力尽きる寸前といった不安を煽られる有様だった。
それでも黒い大型ギガダストはセーフティエリアにたどり着いた。
その途端に機体全身が弛緩して膝から崩れ落ちる。
その動きがどう作用したのか、重厚な装甲の内側に居たはずのペスティサイダーが黒い大型ギガダストの中から勢い良く弾き出されてしまう。
「ふんっ!」
グルグルと空中で回り、頭から地面に叩きつけられるとなった時、ペスティサイダーは拳で地面を突いた。
投げ出された勢いを拳一つで受けきった彼はそういう彫刻のようにその場でピタリと静止する。
【巨人の手】【巨人の骨】により頑丈な拳と骨を持つ彼には躊躇しなければ簡単な芸当だ。
拳で倒立するその後ろでは、派手な音を立てて無人となった黒い大型ギガダストがもんどり打ち、装甲の欠片や小さな部品をばら撒いて倒れ伏していた。
その際に刺さっていた大看板は宙を舞う。
「ギリギリだったぐぅん!」
腕の力だけで飛び上がり、倒立から直立姿勢に戻る彼の台詞の途中で大看板がペスティサイダーを直撃した。
衝撃でおかしな語尾になった彼は、そのまま大看板に押し倒され、砂と重々しい包容を交わす。
「…ビックリしたぁ!」
幸いセーフティエリアだったため下敷きにされてもダメージは無く、下が砂浜で脱出も容易だった。
砂場を寝床とする甲殻類ののようにガサガサと砂をかき分けて彼は這い出し、不意を突かれた驚きで激しい鼓動を感じる緑色の胸を抑えてその場に座り込む。
「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…はぁぁぁ…」
一息つくと、片手に小さなドングリを幾つも生成。
こぼれるのも気にせず一気に頬張り、ガリガリと欠片をポロポロこぼしながら噛み砕く。意地汚い咀嚼を続けながら、追加で拳大のドングリを生成して指先で回し始める。
口の中に広がるコーラフレーバーを味わいながらジャイロ効果で安定する丸いドングリをじっと無言で見つめた。
「よし、やるか」
五分間、取り憑かれたかのように指の上で高速回転するドングリを見つめ続けた彼は、回していたそれを海に向かって全力で投げ捨てる。
遅い昼食と食休みは済んだ。日が高いうちに新しいアシッドブレイクの作成に入るために彼は気合を入れて立ち上がる。
「おまえの犠牲には…もっと良いアシッドブレイクを建造することで報いるぞ」
アシッドブレイク4号は、ペスティサイダーが装甲を突き破った大看板の先端に小突かれ額を割られた衝撃で気絶している間にボロボロになってしまい回収できなかった。
海中に没したドングリは、ジュワっと音と黄煙を上げて溶けていった。
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次回更新は明日18:00の予定です。




