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10話までは毎日更新です。
11話までと一回お知らせしましたがストック数え間違えてました。
やっと攻略が進むかも知れない。
希望を抱いたその足取りは軽い。
そして希望は確かな現実となった。
セーフティエリアから躍り出たアシッドブレイク4号の装甲外皮を死酸が侵すが即座に行動不能にならずに普通に動けている。
これは強化された装甲と疑似生命のお陰もあるが、死酸島の環境ギミックによって大量に発生した黄煙が死酸の効果を希釈しているのだとペスティサイダーは解釈する。
二次発生する煙は死酸の効果を失っていたのだ。
応用が効きそうな発見で、少し萎えていた心を元気づける。
なぜエストメルド製ギガダストのゴーレムが空から降ってくるのか疑問だが、この暴力的な天恵が長く続くとは思えない。
ペスティサイダーは今のうちにゴーレムを回収せねばとアシッドブレイクを走らせる。
数は減ってきているが瓦礫とゴーレムの絨毯爆撃は継続中で危険度は高く、視界も悪い。
希釈されても装甲を侵す死酸の脅威は変わらず存在し、発生する黄煙も有害のようだ。
ギガダストの心肺機能も司る動力袋に異常な発熱と脈動を確認したペスティサイダーは慌てて機体の呼吸を止める。
空中が滞り操縦席はドンドン室温が上昇している。
煙で遮光され光合成の効率も悪かった。
おまけにエリア外から持ち込まれたモノは放置すると一定時間経過で消える。
イレギュラーな形だが、ゴーレムがこのエリアの外から来たことには変わりないと、ペスティサイダーを焦らせる。
「忙しい!」
急ぎ回収したいが眼の前は黄色一色。視界はとことん悪い。瓦礫よりも頑丈なギガダストは落下の勢いで島の内陸部、セーフティエリアから遠い森の近くまで吹き飛んでいく。
海に落ちたものは近くにも沈んでいるが死酸島エリア内の海中に入ると死ぬ。
アシッドブレイク2号で経験済みだ。
黄煙の効果もあまり期待できないだろう。
そんな状態に追い打ちをかける瓦礫と黒いギガダストの落着。ギガダストは受け止め回収したいが、今のアシッドブレイクの性能だと良くて相打ちだ。
直撃を避けながら落ちた物を探して拾うしかない。
視界は状態の良い黒いギガダストを探し、両腕は防御のためにドングリバルカンを空にばらまき、空中にドングリの弾幕を張る。
小さくとも高所から飛来する高威力の瓦礫を両腕のドングリバルカンを乱射する事で破壊しつつ、空中にばら撒いたドングリを即席の鳴子の代わりにして危険な大型目標を感知する結界とする。
そうして容易に破壊できぬ大きさの瓦礫や頑丈な黒いギガダスト飛来時にはドングリを集中させて破壊か軌道を逸らすか回避する。
アシッドブレイクの両腕でソレをこなしながら回収できそうな黒いギガダストを探して機体を走らせた。
そんな忙しいペスティサイダーを緊張させる、後方で一際大きく、ズシンと重々しい落下音。
「うぉぉぉぉぉ!?」
振り向いた視線の先から黒い大きな影が迫る。
弾幕を中止して咄嗟に横に飛び退かせたアシッドブレイク4号のすぐ隣、黄煙を押し退けて黒く大きなギガダストが通り過ぎた。
その様子は他の無抵抗な姿とは違っていた。
手足の四点で着地の衝撃を緩和し、殺しきれなかった勢いで砂浜に轍を刻みながら後ろ向きで森へと突き進む姿には目立つ破壊は見当たらない。
何よりその機体は身をかがめているのにアシッドブレイクよりも大きい。
「まさかヘビィゴーレムか!? 確保ぉぉぉ!」
ペスティサイダーはすぐにその正体に気づいた。
今まで降ってきていた機体が小型でアシッドブレイク4号が中型ならば今のは大型。エストメルド製なら重厚なので彼の好みに合うデザインの大型機。
しかも、無人状態で自力で機体制御を行い破壊を免れている。
本能で動ける塵面気…少なくともシュミラクラ塵面ではない疑似生命力にあふれた高級機の証拠だ。
同じレベルならば店売りよりもプレイヤーメイドの方が高性能。
普通のプレイならば値段と性能が釣り合わないが、何もかも足りないし手に入らない現状では大変ありがたい。
「代金はボーナス一括払い!」
空手形を叫ぶペスティサイダーは、着地の勢いを殺し切り、立ち上がりつつある黒い大型ギガダストの正面から、勢いそのままにアシッドブレイクで全力で飛びかかる。
よろめきながら直立した黒い大型ギガダストにアシッドブレイクの全身でぶち当たると黒い装甲の奥から何やら嫌な音が響く。
勢いをつけ過ぎたか?
ペスティサイダーは重量を増やす能力を複数に加えて、体当たりの威力を底上げする【突進】のソイルを保有している。
機体の出来が悪くても、重量を攻撃力に変換できるアシッドブレイクの体当たりの威力は凄まじい。
やってしまったかと不安がよぎるが、機体の確保を優先してそのまま正面から押し倒す。
「そのまま押さえてろ!」
ペスティサイダーはアシッドブレイクに命令し、開いた胸部から機体外に飛び出す。ジュワっと全身の皮膚が死酸で焼ける音がした。
カンストした【耐性】と黄煙のお陰で即死するほどじゃない…が、スッカリ忘れていた無防備な股間で信じられない痛みが発生して悶絶し横転してしまう。
まるで下半身を燃やされているかのように熱を帯びていた。
アップデート前は存在せず、希釈前の死酸ではほぼ即死だったため完全に失念していた。
「ぎ………!!」
歯を食いしばり鼻と口を押さえて悲鳴を飲み込む。
ここで喉を潰す訳にはいかないと立ち上がって走り出す。
目は閉じていたため瞼が痛むだけで済んでいた。
光合成の応用で曖昧だが全身で光を感知し、それを頼りに分厚い胸部装甲の上をドタドタと不格好に走り黒い大型ギガダストの顔に手を伸ばす。
「ワシを乗せろぉ!!!」
その一声で喉がダメになった。
ペスティサイダーよりも大きな、プラネタリウム先端のような幾つも子窓がある丸い塵面気に接触。機体が宿す疑似生命に命令すると近くで音が聞こえた。
光合成を利用した光センサーが、開いた丸いハッチらしきシルエットを発見。
急いでそこに潜り込む。
「ぶっ…げほ、だずがっだ…やばりみぜゔりばにらが」
操縦席に滑り落ちた彼は安堵した。
誰かが一定時間動かしたギガダストは宿した疑似生命が操縦者に最適化され、他人が容易に動かせなくなるセキュリティとなる。
その状態だと【巨人の脳】【巨人の頭】【寄生】【強奪】などのハッキングに適したダストやソイルが必要となり、今のように簡単に操縦席に座れない。
「おぎろぉ!」
疑似生命の本能で立ち上がろうと藻搔いていた黒い大型ギガダストにペスティサイダーは意識と神経を接続して叫ぶ。
他人の手で初期起動が終わっているためかピリピリと全身に電気が走るような弱い抵抗を感じるが、塵面気の幾つもある小窓が目として機能し光を集めて輝くと、ペスティサイダーの視界は肉眼視界と機体視界で二重景色となっていく。
無事に疑似生命と接続できた。
大型機の膨大な生命力と繋がったことで死酸のダメージで斑模様になった緑色の身体を癒され、やっと一息つけた彼は深く息を吐く。
「…よし、後はセーフティえっ!?」
気がつくと乗り込んだ黒いギガダストに勝るとも劣らない大きさの薄い長方形の物体が目前に迫っていた
回転しながら落ちてくるその物体には、このゲーム世界で使われる創作文字が刻まれている。
溶岩と鍛冶の街エストメルドにようこそ、と。
エストメルドにたどり着いたプレイヤーを最初に出迎える長方形のウェルカム大看板は、ペスティサイダーが乗り込んだ黒い大型ギガダストに直撃した。
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次回更新は明日18:00の予定です。




