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今回の連続更新はこれで最後です
強いギガダストを作るには高性能なギガダストが必要だ。
後継のギガダストによくあることである。
この世界はダストやソイルの力で簡単に大いなる巨人の模造品ことギガダストが作れる。そのため作業用の機械などが殆ど存在しない…という設定を採用していた。
とりあえずゲームを楽しむならメインコンテンツであるギガダストを作れという運営からの熱いメッセージ。
その熱さたるや、人型巨大ロボット建造をほぼ手作業でプレイヤーにやらせる灼熱の高火力である。
「さぁ、大仕事だぞ、アシッドブレイク5号」
一時間ほどで作り上げた作業用ギガダスト、アシッドブレイク5号の初期起動を終えたペスティサイダーは黒い大型ギガダスト…ヘビィゴーレムの改修作業を開始する。
まず行うのは破損している塵面気の撤去だ。
縦に割られた大いなる巨人の劣化魂魄を宿し疑似生命の核である仮面は…瀕死の状態だがまだ生きていた。
無傷なら再利用したいが、ここまで破損していると修復より新造の方が手間が少ない。
それに塵面気は自作の方が馴染みやすい。
「苦しいだろう、すぐに楽にしてやる」
割れた塵面気のふちに指をかけて一気に引き剥がそうとアシッドブレイクの腕に力を込めた。
さほど時間をかけずに一部が砕けながら仮面は剥がれ、機体との固着面から血のように灰色の塵を噴き出して宙を舞う。
塵面気…顔を失ったことで擬似生命の方向性を失い急速に衰弱した機体は沈むように弛緩した。
「簡単に剥がれたな、やはり替えどきだ」
内槽骨格によって頭と定められた場所の前面にある限り融合したかのようにガッチリと固定される塵面気を剥がすのは本来は大変な作業だ。
このあっけなさはヘビィゴーレムに宿る疑似生命が死にかけの証しだった。
うんうんと自分の見識の正しさに一人うなづき、砂浜の上で全体が崩れて塵となった仮面には目もくれず、続いて内槽骨格を覆う装甲外皮を剥がしにかかる。
これは中々神経を使う。
疑似生命が生きている間は塵面気と同じく部品同士が一体化したかのように不可思議な接続と柔軟で弾力に気密性まで併せ持つ装甲外皮は、今は素材由来の強固さしか見せず、固定具はこれでどうやって激しく動き回るギガダストに固定していたのかと呆れる代物だ。
これでは下手に剥がすと恐らく内槽骨格が無駄に破損する…とまで考えたペスティサイダーだったが別によいかとバキバキ音を立てて剥がした。
大事なのは装甲外皮…に使われている素材だ。
「レベルの低さに不安はあるが骨格は巨人の骨でどうとでもできる、コイツの関節はもう限界っぽいしな、痛い目にあった分、余分な素材も確保できたし…改修というよりはもう解体だなこれ」
胴体部分に操縦席を収めた内槽骨格を剥き出しにするとやはり関節のダメージが大きい。
目に見えてグシャグシャの左膝は言わずもがな、どこもかしこも補修よりも新造したほうが早い状態だ。
背骨部分も移動途中で折れてもおかしくないダメージで…【巨人の骨】の自重から受けるダメージを無効化する能力がなければ、セーフティエリアに戻る前に動けなくなっていた可能性が高い。
もっとも背骨部分は着地の衝撃ではなくアシッドブレイクでの全力突進による破損だったが。
「これだけデカイダメージの着地後に塵面気にクリティカルじゃ、瀕死にもなるわ」
そうこう言ううちに装甲外皮を剥がし終わり、残りは下腹部や四肢の要所にぶら下がる動力袋と内槽骨格だけとなった。
両肩に配置されているまだ熱を持ち湯気を上げる、動力袋の一つを慎重に外して中を改める。
「ナマモノだなー…」
むわりと血なまぐさい臭気が混ざり合う熱がアシッドブレイクの塵面気をなでる。
ペスティサイダーの予想通りモンスターの筋肉や肺などの臓器が血と一緒に袋に詰め込まれていた。
精肉しか見ない現代人の彼には少し気味悪く感じるが、この筋肉や肺はギガダストの動力や心肺機能、血は本当に機体全身を巡るわけじゃないが潤滑液や冷却液としての役割がある。
動力袋のそれらの素材は、モンスターから得るのが一番簡単で性能が高い。
ペスティサイダーはこの島でまだモンスターとまだ出会えておらず、仕方なくアシッドブレイクの動力袋にはソイルの【樹液】で生成して加工した樹脂が詰まっていた。
筋肉などのナマモノが最適だが、伸縮する素材を袋にまとめて内槽骨格に吊り、装甲外皮の内側に収めれば、動力として認識されるのがギガダストの良いところだ。
その分、性能は微妙で数と大きさでアシッドブレイクは補っていた。
機体の遊びが少なくなり、部品同士の干渉や排熱の問題がでてくるため、動力袋はできるだけ数は少なく、小さな物に置き換えたい。
エストメルド周辺のモンスターは身体が重く力強い。
その筋肉を詰め込んだ動力袋はペスティサイダーが現状で作れる物よりも高出力となるだろう。
環境ギミックを越えた先に何が待つのかわからない現状では、死酸に負けない装甲外皮の次に貴重な部品だ。
ギガダストの疑似生命が生きている内は腐らないが…死に体から塵面気を剥ぎ取った今はできるだけ早くインベントリにしまいたい。
ペスティサイダーは慎重かつ迅速に内槽骨格から全ての動力袋を取り外しインベントリに収納していく。
「これだけ揃えば嘘偽りないアシッドブレイクを建造できる…くっくっく」
余りにも有利な物が無さすぎた状況からの転機は彼のテンションを際限なく上げ、この島の全てを手中に収めた気分にさせていた。
地を這うように低い不気味な声で笑いながら作業に集中するペスティサイダーは、背後で灰色の石柱が淡く光り、仮面と外套で全身を隠す怪しい人物がセーフティエリアに転移してきたことに気づかなかった。
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次回更新は今月末か来月くらいになります。
1週間ごとに1話投げたいなぁという気持ちはありますが未定です。




