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このゲームの敵…モンスターは強大だ。
ゲムズダート…記念イベントという名のジェノサイドが行われたプレイヤーが最初に降り立つ街。
あそこから一歩でも外に出れば、いにしえの大型爬虫類なみの雑魚が普通に襲ってくる。
それらに対抗するにはギガダストが必須だった。
プレイヤー単体でも戦闘はできるが、そういうゲームバランスで後継のギガダストは設計されている。
ロボとクラフトが好きでやっていたゲームだ。
こんな状況で縛りプレイはしない。
「…そういえばゴブリンは支給されないのか?」
汎用小型ギガダスト・ゴブリン。
ゴブリンは、一定時間ギガダストを保有していないプレイヤーに配られる機体で、初ログイン時にも支給されるので普通にプレイすれば最初に乗ることになる。
ペスティサイダーは隕石により街ごと自身の拠点が吹き飛ぶのを目撃した。
ギガダストの性能はプレイヤーが乗ってこそ真価を発揮するため拠点に保存していたガングエイコンたちを思うと。
彼の胸は悲しみに包まれる。
ギリギリ街から飛び立つことだけは成功したガングエイコン13号改27式も、胸が締め付けられる思いだがペスティサイダーは諦めなければならない。
つまり、インベントリにはギガダスト収納用アイテムであるブリスター…手のひらサイズで樹脂のような質感の透明な箱…に封入されたゴブリンがゲームシステムによって支給されているはずだった。
「いや、インベントリには何もなかった…ギガダストの支給も無しでレベルもほぼリセットか」
どうやらログアウトや転移オブジェクトと同じで、まともに機能していないらしい。
キョロキョロと僅かな期待を込めてペスティサイダーは視線を巡らせた。
青い海に青い空、照りつける太陽で砂浜は眩しいほど白く、光合成が捗る。
見える範囲の島の内陸部は深い森が続いている。
その奥は暗くて何があるか見通せず、かすかに破砕音や獣の鳴き声が聞こえるが、人の気配…ギガダストの売買を行うNPCの姿は勿論、他のプレイヤーがセーフティエリアに現れる様子はない。
ログインしていたプレイヤー全員同じ状況だと仮定するなら、この現状はランダムに決定された可能性が高いとペスティサイダーは考える。
彼は死酸島のような新エリアが複数あって、乱数のイタズラでたった一人で配置されてしまったのだろう。
「誰かの助力は期待できない…そもそも買う金がなかった、逆にテンション上がってきたよ」
何も頼れないなら自家生産するしかない。
幸いなことにペスティサイダーは裸一貫でもギガダストを建造できるように能力をビルドしていた。
道具どころか文明の気配も失った若草色の裸族が巨大人型ロボットであるギガダストを建造するなど現実では不可能だが、このゲームでは非常に雑に実行できる。
大いなる巨人と混沌なる巨獣が相打ち、塵となって世界中に降り注いだという、この世界の神話から生まれた摩訶不思議な超自然的ミソロジカルパワーを秘める。
ダストとソイルがそれを可能とするのだ。
「…名前をどうするか」
一〇分後…指先でコマのように人の頭ほどのドングリを弄ぶペスティサイダーの眼前には、一体のギガダストが完成していた。
主要素材はドングリ。唯一レベルを保持するソイル【果実】でペスティサイダーが中に入って快適過ごせるサイズの巨大ドングリを生成して中身をくり抜き、それを胴体装甲に転用。
まるで絵本にでも出てきそうな手足がはえたオバケドングリな機体が完成した。
オバケドングリの表面は成熟した茶色ではなく、未成熟を思わせる緑色に染められている。
これは彼がギガダストを通して光合成するための処置だった。
光合成は初期化されたレベルの低いソイルで行なう。現状では微々たる効果しかないが、光を浴びるだけで機体の疑似生命力を少し増強し、レベリングもできるので強さを取り戻す一環だ。
「こんな急場しのぎにも程がある適当な機体にガングエイコンと付けるべきか否か」
ペスティサイダーは長年の愛着とその対象の消失により、ガングエイコンという名に対して非常に意識が高くなっていた。
この見た目でも初心者には決して建造できぬ性能を有し、支給されるゴブリン、失われた記念すべきガングエイコン1号よりも遥かに強いが、ペスティサイダーが本来扱うべき性能と比べるとハッキリ言ってゴミである。
「んぅぅぅ…」
無名のギガダストはそんな彼を、ドングリの帽子…殻斗部分に埋め込まれたシュミラクラ顔で見下ろしていた。
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次回更新は明日18:00の予定です。




