3
本日三話目です。
「そうくると話が変わってくるな」
ペスティサイダーは失意で光が失われていた瞳を爛々と輝かせる。
それは目前の肉に飛びついて罠にはまる、飢えた畜生の瞳に似ていた。
ペスティサイダーはゲームが好きだ。
現実の全てが薄っすら嫌いで、現実逃避が好きで、現実とは懸け離れた場所に簡単に行ける世界で唯一のFDVRゲームで、ロボクラフトアクションという好みと一致している後継のギガダストが大好きだ。
そんなゲームが、現実に帰らなくて良いという免罪符を渡してきた。
ペスティサイダーには思考を放棄して受け取る以外の選択肢が無かった。
そうなると彼が真剣に考えるのはゲームの攻略…アップデートで追加された新コンテンツだ。
テキストメッセージには免罪符と一緒にそのヒントらしきものが提示されている。
「ユニーク・キラー・モンスター…UKMか、元から居るUMにキラーと物騒な単語が追加されたからには、なんか強くてレアなのだろう」
賢しさの欠片もない呟きをした彼は、ショックを受けた原因であるインベントリ、ダスト、ソイルの状態を改めて確認する。
全てを諦めてログアウトしようとしていた数秒前の姿は何処にもない。
「うっ」
溢れるやる気で相殺しても中々辛い光景だった。
このゲームのメインコンテンツであるギガダストに使う補修素材やアイディアをその場で試せるように用意していた大量の素材や確保していた希少な素材は見当たらず。
生産ジョブ相当の【巨人の手】、物理タンクジョブ相当の【巨人の骨】、二つのダストの内の【巨人の骨】がレベルリセットの憂き目に会い身体強度が大幅に低下している。
ソイルは更に酷く、数が多いのにリセットを免れたのはたった一つだ。
「今のワシは打たれ弱い上に生産職としても中途半端か…片方のダストが無事だから初心者向けのフィールドなら楽勝だが、ここが久しぶりの大型アップデートで追加された未知の高難度フィールドだとキツイなぁ、果実の拡張スロ内アイテムだけは無事か」
言葉とは裏腹に楽しそうに現状の手札を確認した彼は次に石柱に触れれ改めて調べ始める。
転移先がグレーアウトしていたのは確認済み。
だが肝心の場所の地名は見逃していた。
「死酸島セーフティエリア…死酸、島なのか。未知の場所で物騒な名前だが、何が待っているか分かりやすいし、人気は無い、独占のチャンスかもしれない…滅多にないことだ。解放済みのセーフエリアが全部灰色なのは、まさかあの隕石で全部破壊された? 遠くに見えるあれはその衝撃で舞い上がった塵か?」
ペスティサイダーがいる場所は島の外縁部の砂浜。
そこからは海の向こうに青い柱が立っているのが見えていた。
それは煙か巨大なミミズのように不気味に蠢動を繰り返して上昇しており、輪郭がぼやけて真っ青に染まるほどの遠景にもかかわらず、目と鼻の先に山が迫るかのような大きさで地平線の向こう側に存在している。
ペスティサイダーの想像通り、そびえたつ青い柱は一〇年以上プレイヤー達が遊びと冒険の舞台にしていた大陸の成れの果てだった。
巨大隕石の衝突によって粉砕され、塵となった大地の残骸が空に舞い上がっているのだ。
ゲーム世界とは言え凄まじい破壊の規模だ。
信じたくはなかったが、やはり彼の大事なガングエイコン13号改27式は失われたのだと強く印象付ける光景だった。
「…ワシには新たなガングエイコンが必要だ」
コメント、ブクマなど評価色々、募集中です。
次回更新は明日18:00の予定です。




