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後継のギガダスト  作者: 産土
死酸島ニューゲーム編

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更新再開。

1話目です。

 

 黒い塵を貫く光と共に。

 ガングエイコン13号改27式が死酸島に舞い降りる。


 その姿にカカポモンスター達は狂乱する。内に眠る巨獣のダストが命ずるがままに宿敵である巨人の気配を濃密に纏うガングエイコンの落下地点を目指して殺到した。


 クチバシが届くまで待ちきれない。捨てたはずの空に舞い上がろうとカカポモンスターたちは跳躍し太く短い翼で羽ばたき重力に負けて落ちる。

 そんな同族を別の個体が踏み台にしようとしてバランスを崩し、更にその背を駆けようとした別の個体が羽毛で足を滑らせ、更に更に別の個体が踏みつける。


 空を目指したカカポモンスター達が積み上がり山となり。

 そこにガングエイコンが凄まじい速度で着地した。


 肉が潰れて骨が砕ける重く瑞々しい落命の音が奏でるオーケストラを踏み鳴らすガングエイコンは更に押し寄せる群ごと砂浜を貫通し埋没。

 次の瞬間、火山噴火のように赤く染まる砂と粉砕されたカカポモンスター達の残骸が衝撃で噴出した。


 砕かれた命が煙のように空中を舞い散り、砂浜に穿たれたすり鉢状のクレーターの底に立つのはガングエイコン一体だけ。


 そこに咆哮するズテンフェオンがクレーターを駆け下りていく。


 心を通わした同族を失った慟哭…その悲しみを遥かに上回る巨獣のダストが訴える神話の闘争心がズテンフェオンを全力で駆け下りさせて頭突き体勢を取らせている。それはアシッドブレイク6号に見せた様子見の一撃では無く、全力の頭突きに加えて重力も味方にした必殺の一撃。


 それをガングエイコンは片手で受け止めた。


 凄まじい轟音と相反する緩やかに僅かな距離だけ後退するガングエイコンの威容と結果に目を見開くズテンフェオン。


 一瞬の静寂が訪れる。


 天から光を受けて舞い散る赤い砂と無数の羽毛が、空間に神々しい滲んだ光を充満させ、黄金と見紛うほどに輝く羽が、睨み合うこの戦いを祝福するかのように降り注ぐ。

 巨獣の末裔は、突き動かす神話から受け継いだ闘争心を一時忘れ、力を込めても動かせない巨大樹のような巨人を…ギガダストを凝視した。


 ガングエイコン13号改27式…全身が緑色の巨大ギガダストの全長八〇メートル。

 その全体は、幼子が喜びそうな枝付きの青ドングリが雄々しい人型になった奇妙な形状をしている。

 そんな正確な名前も数値もドングリさえもわからぬズテンフェオンでも、今まで出会ったどのギガダストよりも大きく生命力溢れる存在と確信できる巨体と見下ろす強者の揺るぎなき視線を感じていた。


 頭突きを難なく受け止めた腕。巨獣は知らぬト型腕と呼ばれる独特なフォルムの剛腕は、樹木のように瑞々しい葉を生い茂らせ、腕の先端から飛び出す四本指の手がズテンフェオンの頑丈なパキケファロサウルスの額に痛みを与えるほどの怪力で固定しいる。


 巨獣がどんなに力を込めても前に押しきれない。


 どこか違和感を感じるその重さと力強さにズテンフェオンは呆然とするが、自身の額を掴んで固定する剛腕に生い茂る葉をかき分けて巨獣の見知らぬ果実…無数の枝付きドングリが幾つも顔を出し、その弾丸のような果実の先端が巨獣に向けられ高速回転し始めたのを見て、巨人の指を慌てて引き剥がし後ろに跳躍する。


「ぶぅぅぅぅぅ!?」


 まさに弾丸。銃という武器をズテンフェオンは知らないが、高速回転しながら羽毛を穿孔し皮膚を抉る灼熱の感覚で、発射されたドングリがどういう武器なのか強制的に理解させられていた。

 痛みに巨獣が思わず悲鳴を上げる。ガングエイコンは枝付きドングリ…ドングリランチャーを両手に出現させて容赦なく追撃のドングリを乱れ撃った。


 痛みを堪えてズテンフェオンは四本脚で飛ぶように駆け出す。

 まるで壁が迫るようなドングリの射線から逃れようとすり鉢状のクレーターを斜めに巨獣は駆け上がり、発射されたドングリはまるで意志があるかのように方向を変えてそれを追尾する。


 飛翔し追尾するドングリの半分がすり鉢状の壁面に衝突して動きを止めたのを見てズテンフェオンはクレーターから脱出せずに、駆け上がれるすり鉢の壁面を背に相手と対峙できるここで戦うことを決断した。


 残り半分のドングリに追われながら壁面を走り、クレーターの中央に堂々と立つ巨人を睨みつける。


 ガングエイコンは視線を意に介さず左腕ドングリランチャーをピタリと、走るズテンフェオンに照準をあわせて追加のドングリを絶え間なく乱射し、右腕は巨獣の進む方向を予測して偏差ドングリ射撃を行なっていた。


「ぶっ! ぶっ! ぶっ! ぶっ!」


 壁面にぶつかりながらも半分は追いすがってくる背後のドングリと直接狙ってくるドングリを稲妻のように躱し、レモンイエローの塊が壁面を疾走する。


 凄まじい運動負荷がズテンフェオンを襲っていた。

 このままドングリを躱し続けるのは困難だった。


 ガングエイコンの腕の動きは機械のように精確な癖に肝心のドングリの射撃精度はバラバラで不規則に大きくズレる。それとズテンフェオンには理解できない謎の追尾性能が合わさることで直接狙ってくるドングリは網を狭めるように様々な方向から予測できない動きで襲ってくる。


 被弾は最小限に抑えられているがこのまま押し切られる危機感があった。

 そんな結末はズテンフェオンも巨獣のダストも許せない。


 ズテンフェオンは登っていたすり鉢状の壁面を今度は斜め下に駆け下りて加速する。距離が近づくとその分ドングリの勢いは増すが、巨獣はUKMの頑丈さで無視して更に加速した。


 すると今度は不思議なことにズテンフェオンの被弾は減っていった。


 周囲をグルグルと回りながら急速に距離を縮めてくるズテンフェオンに対してト型腕による照準が間に合わなくなっていた。


 人型の構造とその巨体が邪魔をしている。ガングエイコンは戦車でも砲塔でもない。ある程度自由に動くとは言え、ドングリランチャーは回転砲塔ではなく可動範囲が限られた腕から生えているため砲身であるト型腕の照準が追いつかず、ドングリの追尾能力は目標に対して無駄に大きな迂回を強いられ命中率が大きく下がっていた。


 狙い撃つのを諦めたガングエイコンは方向転換する足を止める。


 巨獣が後ろに回り込むのも無視して両腕を真上に向けてドングリランチャーを空に向かって乱射。

 次々と天を目指したドングリ達はすぐに大地が恋しくなり、地を走るズテンフェオンに向かって雨のように振り注いだ。


 その大雑把な攻撃を見切った巨獣は大地スレスレまで身体を傾けて身体能力で強引に直角転進。ドングリの雨を背後に抜き去り、ガングエイコンの無防備な背後から足を刈り取るように低く鋭い頭突きで強襲する。


 真の力を…死酸島の頂点としての力を解放するための時間を作るために巨獣は巨人に肉薄したが、その一撃はあっさりと空振った。


「ぶぅん!?」


 目前の巨体が一瞬にして視界から消えた。


 慌てて速度を緩めかけたズテンフェオンだったが、頭上で膨らむ生命力の気配に気づき、そのまま全力で走り抜ける。

 背後で空気を踏み潰し地面と衝突する凄まじい衝撃音。比喩ではなくクレーターの底が一段と下がり、衝撃がズテンフェオンの疾走を鈍らせ、そこにすり鉢状の壁面表層が土砂となって襲いかかる。


 巨獣は折角の速度というエネルギーを自らブレーキをかける急激な方向転換を余儀なくされた。


 ズテンフェオンは自分の迂闊さに怒りを覚えた。


 外見を裏切るガングエイコンの飛翔速度は素早い。巨人が空から現れたことを失念していたズテンフェオンの横っ腹に両手の四本指を十字に開きプロペラのように高速回転させて飛翔する巨人の強烈なぶちかましを受ける。


「ぶぅぅぅぅぅ!?」


 巨獣と巨人はもつれ合いながら土砂崩れに飲み込まれて姿が見えなくなるが、直ぐに土砂を跳ね除けて右腕で巨獣の首根っこを掌握したガングエイコンが現れ、逆の手指をズテンフェオンの腰に減り込ませながら頭上に掲げる。


 ガングエイコンはズテンフェオンを力任せに引き千切るつもりだった。


 ミシリと巨獣の体内から嫌な音が鳴り、不気味な痺れを伴う痛みに苛まれるズテンフェオンだったがこれはチャンスだった。時間を稼げる。長い尻尾がガングエイコンの左のト型腕にグルリと巻きついた。


 動きを阻害するかのような動きに気づいたガングエイコンは掲げた両腕を一気に左右に勢いよく開く。


 噴き出した鮮血が滝のように巨人に降り注いだ。





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