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後継のギガダスト  作者: 産土
死酸島ニューゲーム編

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22/25

22

更新二日目です

 



「ぶぶぶ」


 ズテンフェオンは、逃げ去るかつての同族の子孫達を交互に眺めた。


 そこには呆れと、ほんの少しの寂しさが浮かんでいる。


 とっくに諦めたことだった。両者の溝は険悪ではないがとても深く、進む道は二度と交わらない…はずだったが、一体だけその場に残っているカカポモンスターにズテンフェオンは興味を惹かれた。


「ぶぅぅぅん、ぶぅぅぅん」


 勇敢な奴だ。強い個体が生まれるのは良いことだと、少し弾んだ調子で鳴いて触れ合えるほど近づくが、残ったカカポモンスターの様子がおかしい。ピクリとも動かない。


 訝しんだ巨獣はソイツを前足の鈎爪の背で軽く突いた。


「ぶぶ!?」


 思わず仰け反るズテンフェオン。酷い有様だった。爪で押されてひっくり返ったカカポモンスターは羽毛に埋まるドングリのようなクチバシから舌がだらりと飛び出し、白目を向いていた。


 そして、やはりピクリとも動かない。


 慌てて頭をカカポモンスターに近づけたズテンフェオンだったが、すぐに呆れた感情を取り戻し、鼻息で降り注ぐ黒い雨を散らす。


 どう見ても死んでいるようにしか見えないが呼吸はあった。

 カカポモンスターは気絶しているだけだった。


 不機嫌な鼻息で再び降り注ぐ雨を散らすと、情けない同族の子孫を親猫が子猫を運ぶようにクチバシで咥えて、巨樹の上へとソイツを放り投げてしまった。


「ぶぅぅぅん」


 無駄な時間だった。人間でいえばそういう感想が含まれた間延びした鳴き声。背後で雨音に重なるバキバキと細枝が折れる音を聞きながら、ズテンフェオンは当初の目的である黒雨で灰色に染まる砂浜を見渡した。


 若草色の探し物は見当たらなかった。




 ペスティサイダーは気がつくと浅瀬に身を伏せて全身を死酸で焼かれていた。


 なぜよりにもよって海中なのか、彼は浅瀬に身を隠したことを後悔した。混乱は人から冷静な判断能力を奪い去り、外部から見るとアホとしか言いようがない行動をさせてしまう。


 巨樹の森から姿を現したズテンフェオン…今や甘美な獲物ではなく死と同義の巨獣を目撃したペスティサイダーは、道路に飛び出してから迫る自動車に気づいた動物のように動きを止めてしまったが、ズテンフェオンは左右に分かれて慌てて逃げ出すカカポモンスターに気を取られたことで、ペスティサイダーに身を隠すための僅かな猶予が与えられた。


 それがペスティサイダーを慌てさせ混乱させる。


 まず彼は「ギガダストに乗ってないならモンスターは敵対しない!」と、思い込もうとした。

 しかし、把握しているだけでも二体のUMが生身のプレイヤーを襲撃するアップデート前に伝えきいた事件と実体験がそれを否定する。


 特にセーフティエリアまでプレイヤーがUMをトレインした事件の方と状況が酷似していた。


 何よりも死と同然となったUKMと全裸で相対する覚悟が無い。


 ペスティサイダーは無駄な思考で時間を浪費し、やっと隠れなければと思い立つも砂浜にそんな場所はなかった。黒雨で薄汚れたが元々綺麗な白い砂浜。流れ着いた流木もないそこに人が隠れる場所はないと思い込んだペスティサイダーは海中へと飛び込んでしまったのだ。


 自分の身体能力なら人が隠れる穴なんて簡単に掘れることに気づいたのは海に飛び込んだ後だった。


 ズテンフェオンが引き起こす周囲の死酸が強くなる現象が、降り注ぐ大量の黒い雨で希釈されて弱体化していなければ、ペスティサイダーは死んでいたかも知れない。


「ぶぶぶ」


 いや、今からでも遅くない! ここから穴を掘って死酸の海から逃れるのだ! そう思った時には手遅れ。


 海水を突き抜けて聞こえるくぐもった低い鳴き声があまりにも近かった。


 塵に遮られ弱い日光、塵が黒い雨となり降り注ぎ、死酸のせいで生物が全く居ない透き通る海面はその雨で乱され汚されている。死酸と水中呼吸の問題がなければ、意外と隠れ場所としては理にかなっていたのだが、ズテンフェオンが何気なく海面を覗き込めば雨は遮られて海面の乱れは抑えられてしまう。


 海藻一つ生えていない海に沈む、若草色の肌と広がる髪の毛は目立ってしょうがなかった。




コメント、ブクマなど評価色々、募集中です。


次回更新は明日18:00の予定です。

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