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後継のギガダスト  作者: 産土
死酸島ニューゲーム編

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18/20

18

3話目です

 


 時間は夕方。


 空を覆う塵は、夕焼けを飲み込んで血のように赤黒く不気味な色に変わっていた。


 見ていると不安になる不吉さを感じる色だ。


 赤黒い塵に遮られた森は、夜の訪れよりも早く闇に沈んでいる。


 その中をペスティサイダーは進んでいた。アシッドブレイクは装甲外皮に蓄光していた輝きを解き放ち周囲を照らしていた。


 これまで絶え間なく襲ってきたカカポモンスターの姿は鳴りを潜めている。


「結構レベルが上がってきたな」


 五〇体程度の死体と、アシッドブレイクに傷を積み上げたが、まだまだカンストには程遠い。それでも合計レベルの平均が中級者程度になり、ソイルの確認やアシッドブレイクの損傷が生命力による自己修復でほぼ全快できるほどの余裕と静寂が訪れていた。


「おあつらえ向きの広場、カカポの皮を被った恐竜モドキの襲撃もなくなった…いよいよか」


 ここは恐らく島の最深部。巨樹の姿は進むほど更に雄々しく太くなるが、比例して数が減り、遂にはたった一本で森か山と見紛うほどの巨大樹が姿を現したことでアシッドブレイクの足を止めた。


 あれほど存在感のあった木々は遠く離れ、闇と一体化し壁のようだ。山のような巨大樹を中心にまるで戦うために用意したかのように広々とした場所が広がっている。


 静かだ。


 アシッドブレイクに匹敵する大きさの木の葉が落ちてきて、サクリと黒土に突き刺さる。


 嵐の前の静けさ。


「いや、嵐も恐れて沈黙を選ぶか」


 ここはカカポモンスターが巨人への敵愾心を無視して近づかない場所…モンスター達の上位種、混沌なる巨獣の力をより強く受け継いだ存在の縄張りだと彼は察していた。


 ここが決戦の場所だ。


 UKMが…死酸咆哮ズテンフェオンがここに居る。


「まぁ、プレイヤーどころかモンスターからも全く感知されず自由に徘徊してた奴もいたが…デトネイの話を効く限りじゃ、ズテンフェオンはアイツとは真逆の正統派だろう」


 正統派。

 単純に強く、生命力豊富。


 小手先の技が通用しない強者の直ぐ側までペスティサイダーはやってきている。


「それで戦うか、小手先でなんとかごまかしているアシッドブレイクで…面白くなってきた」


 ペスティサイダーは期待に胸が踊っていた。

 一〇年以上プレイしている古参を自称する彼でも…所持していたユニークアイテムはたった一つだけ、それもガングエイコンと共に失っている。


 UMは単純に強い。


 目撃情報はゲーム初期から数多く存在しているのに有名な個体の多くがプレイヤーを退け存命していた。


 こんな異常な状況で追加投入されたUKMが弱いなんてことはありえない。


 戦いは厳しく、ユニークアイテムの取得は困難を極めるだろう。


 ペスティサイダーは自身とアシッドブレイク6号が負けると確信していた。


 そして、いずれは勝ち、その手にユニークアイテムを手にする未来が見えた気がした。


 アシッドブレイク6号が負けようとも7号を建造すれば良い。

 7号が負けようとも8号を建造して戦う。

 9号が負けても10号が倒されても。


 新たなアシッドブレイクを建造し、ペスティサイダーは戦い続ける。


 死酸咆哮ズテンフェオンを殺すまで。


「アシッドブレイクの屍を積み上げ、その頂上でお前を殺した証を掲げてやるぞ」


 後継のギガダストに閉じ込められたペスティサイダーに現実に圧迫されるプレイ時間という名の枷はもう存在しない。


「…来たっ!」


 唐突に脳裏に溢れ出す映像。

 肉体も、ギガダストの感覚も、映像に飲み込まれたかのように様変わりする。


 それはこの世界の神話の断片。


 恐ろしく巨大な黒い巨人、それに匹敵する絶え間なく姿が変わり続ける不気味な黒い巨獣。


 両者は今まさに雌雄を決しようと相対する。


 プレイヤーが初見のUMと遭遇した際に流れる演出動画だ。


 素材を使い回すゲームらしい部分を垣間見て、ペスティサイダーに郷愁とよく似たなんとも言えない気持ちが生まれるが、ナイフのように鋭利な残響を残す巨人と巨獣の咆哮で映像が打ち切られると同時に、そんな気持ちは何処かへ行った。


 感覚が元に戻ると同時にズテンフェオンらしきモンスターの敵意が叩きつけられる。


 恐ろしいモンスターが既に敵としてペスティサイダーを認識していた。装甲外皮で感じた。ただ睨みつけられているだけで、ビリビリと冷酷な風が吹き付けるようにギガダストを物理的に震わせていた。


 勝てるかわからない甘美なる強敵。興奮は心臓がシャーベットのように凍りつく緊張に様変わりして、甘く冷たい味が舌まで登ってくる。


 ペスティサイダーは操縦槽内で震える手を抑えるために壊れそうなほどドングリレバーを強く握った。


 ギシギシと音を立てる強化されたドングリレバーは壊れる様子はなかった。

 着実に力を取り戻しつつあることを実感して勇気が湧いてくるのを感じた。


 ただの蛮勇だったがそれで良かった。

 ドングリは味方で決して裏切らない。


 ここで負けても、このドングリのように更に強くなり戻ってこられるのだ。




 〈条件を満たしました、情報が開示されます〉




 そう思った瞬間、場違いな機械音声がペスティサイダーの脳裏に唐突に流れ始める。




 〈ユニーク・キラー・モンスター…略称UKMは、ユニーク・モンスター…略称UMと同様に撃破することで、貴方だけの特別なユニークアイテムを取得できる代わりに同一個体が存在しない特別なモンスターです〉


 〈UKMはそれに加えてプレイヤーを殺害する能力を持ちます〉


 〈UKMに殺されたプレイヤーは、現実世界でもUKMに負わされたのと同じダメージを受けて死亡します〉


 〈弱者に後継者の資格無し〉


 〈後継のギガダストよ〉


 〈巨人の歩みを進めよ〉




「…そうくると話が変わってくるな」


 ペスティサイダーを縛る枷は無いが、代わりにその首に絞首台に繋がるロープがギリギリ食い込んでいた。



コメント、ブクマなど評価色々、募集中です。


次回更新は明日18:00の予定です。

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