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2話目です
モンスターの姿はフクロウオウム…カカポに似ていた。
カカポとは本来、安全で閉鎖的な環境で空を捨て、世界で一番重いオウムと呼ばれる鳥類の名前。
木登りが得意で好奇心旺盛、陸棲の穏やかな鳥だ。
しかし、ここは後継のギガダスト。
この世界に蔓延るモンスターには混沌なる巨獣由来のダストを受け継ぎ、異なる生物同士混ぜ合わせたキメラの外見と見上げるような巨体を基本とする。
そして、ムービーモンスターのように生命力に溢れて凶暴だった。
胴体を貫通し、地面に縫い留められてもカカポモンスターは暴れるのを止めない。
「ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!」
その状態でもコチラを殺そうともがき続ける黄色の羽毛のカカポのモンスターには、生来の樹上生活を行うための太く鋭い鈎爪の二本足と退化した飛べない翼に加え。
全長二〇mのアシッドブレイクの胸にまで到達する全高。
鳥足を二本追加した四足獣のような骨格。
先端に四本の鋭いスパイクが生えた長い尻尾。
羽毛から飛び出した二列に並ぶ盾のような大きな背鰭。
ステゴサウルスの骨格にカカポの頭と羽毛を上から被せてレモンイエローに染めたような姿をしていた。
「恐竜? まさか恐竜なのか!?」
ペスティサイダーはその姿に思わず状況を忘れて声を上げた。
頭上から二体目の襲来を察知しながらも眼前のカカポモンスターを注視する。
アップデート前には存在しなかった恐竜要素に隠しきれない喜び、驚き、感動が溢れてしまっていた。
それに呼応するアシッドブレイクの機体各所に配置されたドングリフライホイールが全力回転。超常的に高まる機体のジャイロ効果はアシッドブレイクの疑似生命を増大させ、生み出された生命力が【過重】【重力】【落下】ソイルによって機体重量や位置エネルギーに変換される。
「二度も食らうか!」
二体目の襲撃。ズンッと腐葉土と巨樹の根のミルフィーユを押しつぶしてその場で沈下したアシッドブレイクの装甲外皮に、タイミングをずらされたカカポモンスターの鈎爪が叩きつけられた。
装甲外皮を引き裂こうと叩きつけられた爪は、気の抜けたタイミングで衝突し、二体目の襲撃者は逆に爪や足首を砕かれる。
「ぶぶぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!?」
「今、ワシは、感動しているんだ! 後継のギガダストで恐竜モドキとバトルできることに!」
「ぶぶ!!!?」
「情けない悲鳴だな! 咆哮しろ! ムービーダイナソーのように! 生命の要じゃないのは手応えでわかりきっている! 間髪入れずに殺しにこい巨獣の末裔! こっちはお前らの宿敵ギガダストだぞ!」
前足の足首を折り、飛べない翼で抱きつくように覆いかぶさる二体目のカカポモンスターを地面に振り落とし、指触手で串刺したままの一体目を鈍器のように叩きつけた。
「じゃないとこのまま殺し尽くす!!!」
何度も何度も叩きつけ、その度に黄色い羽毛が舞い散る。
「ぶぅぅぅ!!」
「おぉぉぉぉぉ!?」
アシッドブレイクの攻撃が太く頑丈な後脚での反撃で中断された。滅多打ちにされていた二体目のカカポモンスターは全身の筋肉を駆使した跳ねるような後脚の一撃を繰り出してきたのだ。
その威力は凄まじくドングリフライホイールで増加した重厚な体幹を崩してアシッドブレイクをのけぞらせた。
触手に突き刺さったままだった一体目のカカポモンスターは真っ二つに引き裂かれた。
水風船のように破裂したモンスターから血飛沫が飛び散り、アシッドブレイクの緑色装甲外皮に幾つもの紅い斑模様を描く。
「そうだぁもっつあぁあああああああ!?」
ペスティサイダーはその反撃に歓喜を乗せた暴力で応えようとした。
その出鼻をくじく灼熱の飛沫が機体を襲う。これは死酸だ。飛沫が若草色の肌や衣装を侵し、見慣れた黃煙が発生している。
克服した筈の環境ギミックが装甲外皮を貫いてペスティサイダーに再び牙を向いていた。
死酸島に棲息するカカポモンスターの肉体には濃縮された死酸が血となって流れていたのだ。
それは最も頑丈な手なら耐えられる威力だったが、装甲外皮の防御力と回復力を僅に上回り、死酸の雫がペスティサイダーの肉を貫く威力で操縦槽にまで届いてしまった。
「ぬぃぃぃ!? このギミックしつこい!」
「ぶん!」
モンスターの怒りの追い打ち。ペスティサイダーの望みが、歓迎できないタイミングで繰り出される。二体目のカカポモンスターは長い尻尾を身体ごと振り回してアシッドブレイクに叩きつけた。
空気を切り裂くバシンという音。勢いよく一回転した鋭いスパイクを有する尻尾の先端が、斬撃のように鋭くアシッドブレイクの胴体腹部を打った。
その一撃は尾の先端のスパイクが折れるのと引き換えに巨大ドングリを利用した装甲外皮を大きく穿つ。
破壊された装甲外皮の隙間。内槽骨格や蠢く動力袋…そして濃縮死酸を浴びた顔の左側を手で押さえたペスティサイダーが露出する。
互いの殺意と視線が交錯し、ペスティサイダーは肉眼でカカポモンスターを視認した。
装甲外皮の破損は二割にも満たず、防御力と気密性は維持されているが、プレイヤーという弱点をカカポモンスターは怒りと闘争心で染めた黒い瞳でにらみつけてくる。
「ぶぶぶ!」
ドングリに似た巨大クチバシがペスティサイダーに食らいつこうと肉薄してきた。
「ドングリランチャー発射ぁ!!」
それを迎え撃つ八連装ドングリランチャー。
生命力を【射撃】【乱射】【砲撃】ソイルを介して射撃エネルギーに変し、攻撃力をあげる様々な効果を付与した人体サイズのドングリが肉薄してくるカカポモンスターの顔面に殺到して滅多打ちにする。
ドングリと似たクチバシは砕かれ、両目は潰れ、羽毛を撒き散らしながら血を流す頭がかち上げられる。
強制的にのけぞらされ、無防備に晒されたカカポモンスターの胸部を、八つの発射口から尽きないドングリが乱れ飛び、容赦なく破壊していった。
「ドングリはなぁ! ワシの味方なんだよぉ!」
明らかに武器の容量を越えた数を吐き出し続けるドングリランチャーは、そのままカカポモンスターをひき肉に変えた。
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次回更新は明日18:00の予定です。




