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後継のギガダスト  作者: 産土
死酸島ニューゲーム編

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5話目、今回の連続更新はこれで最後です。


 

 空気が鋭利な刃のように肌とぶつかり通り過ぎていく。


 眼下には夜闇に包まれた星が見えていた。


 空と宇宙の境目を飛んでいた。


 現実の地球と違い大規模な街の明かりが見えないことで、ペスティサイダーはこれは後継のギガダストの星だと悟り、同時に夢を見ていると気づいた。


 光源は見当たらず点々と小さな光と島らしき影が幾つか見えるだけの星に夜明けが訪れる。


 ペスティサイダーは朝日に向かって星と宇宙の境目を飛び続けた。


 暫く夜明けに染まる世界を眼下に眺めていたが、そこに巨大な黒い傘が現れる。


 隕石によって砕かれ、大地が砕けて放射状に飛散した黒い塵が、星を覆う傘のように広がっていた。


 その手前に小さな何かが見えた。


 逆光の朝日を浴びて向かってくるそれに、ペスティサイダーは猛烈な存在感と胸を締め付けるような既視感を感じ取る。


 それは特徴的な大きな腕…四本指がプロペラのように手首を軸に高速回転する飛行装置を兼用したト型機巧腕を備えた…見覚えのある巨人の姿をしていた。


「ガングエイコン!?」


 ペスティサイダーは声を上げながら目覚める。


 空と宇宙の境目に居る巨人という幻想的な光景から、飾り気のない操縦槽で変わったことに一瞬脳が追いつかず混乱するが、隣で密着するように眠るデトネイの存在に気づいて彼は冷静になった。


 彼はアシッドブレイク6号の仕上げに熱中するあまりに完成と同時に操縦席で眠りに落ちていた。


 夢で感じた肌を切り裂き、毒のように手足を痺れさせる寒さが消え去り。

 暖かく頼れるギガダストの空調と、隣のデトネイの体温が彼に寄り添ってくる。


「夢か…」


 自覚するとまだ眠気があった。

 半分落ちた瞼で視界を細めて呟くペスティサイダーはデトネイの仮面を見つめる。


 その下に寝顔はあるのかと疑い、見極めようと見つめていた。

 暫くそうしていたがなんの反応もない。

 念のため近づき耳を傾けてみるが呼吸をしていないかと一瞬勘違いするほどの小さな寝息しか聞こえてこなかった。


 寝ていると納得した彼はそっと彼女を起こさぬように寝床となっていた操縦席から抜け出し、そのままアシッドブレイク5号の外に出て装甲外皮の上を登っていく。


 ジットリとした潮風がアシッドブレイクの肩にたどり着いたペスティサイダーの全身を撫でる。

 朝日を浴びて光合成が捗るが、周囲は夜明けを差し引いても薄暗く、生み出される力は弱い。


 空を見上げた彼は夢で見た光景が鮮明に蘇る。


 夢のように空が黒い塵に覆われつつあった。


 地平線の先で青い柱となっていた大陸の成れの果てが、上空を漂い死酸島に到達して黒い傘となって朝日を遮っている。


 ペスティサイダーはその黒い塵の向こう側に、星と宇宙との境界をさまようガングエイコン13号改27式の姿を幻視する。


「………………居るのか?」


 ペスティサイダーは記憶に新しい、死酸島に降り注いだエストメルドの残骸らしき光景を脳裏に思い描いた。


 鍛冶と溶岩の街エストメルドは、始まりの巨大都市ゲムズダートの西にあり、ガングエイコンと共に記念イベントを眺めていたペスティサイダーの拠点もゲムズダート内だが西側にあった。


 もしかすると可能性があるんじゃないか、夢の影響を強く受けたペスティサイダーの身体が熱くなっていく。


 エストメルドのゴーレムシリーズよりも、ガングエイコンは頑丈だという自負がある。


 それにガングエイコン13号改27式は空を飛べる。


 厳しいのはエストメルドのゴーレムよりも遥かに隕石衝突による爆心地に近かったことだが、条件が揃えばその爆発も追風となるだろう。


 ガングエイコンの性能なら致命的な破壊から逃げ切り、夢で見た空と宇宙の境界にまで到達できる…かもしれない。


 再現なく熱く昂ぶる感情はペスティサイダーをアシッドブレイク6号に操縦槽に飛び込ませた。


 機体を震わせて暴れようとしたアシッドブレイク6号を完全に制御し、昨日行わなかった初期起動は静かに完了する。


 塵面ガチャはおあつらえ向きの咆哮型だった。


 アシッドブレイク6号でセーフティエリアの外…浜辺の海側に歩み出た。


 装甲外皮が死酸に侵されて僅かに薄く黄煙が上がるが死酸の破壊速度よりも疑似生命による自己再生が上回っている。行動に支障はない。ザブザブと死酸に満ちた海水に触れても同様だ。


 海水に足を沈め、朝日に向かって仁王立ちしたアシッドブレイク6号の中でペスティサイダーは叫んだ。


「こぉぉぉぉぉい!ガングエイコォォォン!!」


 その叫びは、アシッドブレイクの咆哮型塵面気が増幅し、物理的破壊力を伴う収束超音波の咆哮…ソニックブラストに変換して静かだった浜辺に轟かせる。


 超音波の激しい振動で砂浜や海面が波打ち、離れた位置の森の入口の木々が恐れるように葉をざわめいた。

 モンスターを粉砕する激しい振動の余波で加熱された空気や波飛沫が火の子のように赤く発光して踊りだし、放たれたソニックブラストに引きずられて渦巻き飛散していく。


「………」


 しかし、望むことは起こらなかった。


 物言わぬ玩具にして寡黙な戦友の力強い返事も。

 ペスティサイダーが建造した最高の姿形も現れない。


「………………来るわけ…ないか」


 自身の試みが上手く行かなかったことを心底残念に思いながら、なんでもない風を装うペスティサイダー。


 そんな彼に突然、力が湧き上がる。


 死酸島上空を覆い尽くしつつある黒い塵に隙間が生まれ、遮られていた朝日が顔をだしていた。


 薄暗い海に佇む死酸を超克した巨人をスポットライトのように明るく照らすそれは、葉緑素の緑に染まる装甲外皮の光合成を促進し、今までのおざなりな機体とは明確に違う、異形だが力強い輪郭を持つ影を背後に描いた。


「………やっと、冒険できるなアシッドブレイク!」


 光合成で湧き上がる力で気持ちを切り替えたペスティサイダーは、再びセーフティエリアのアシッドブレイク5号の操縦席に戻り衣服を作った。


 デザインは失った装備を再現した、詰め襟学生服と制帽、それにひし形の葉っぱ束ねたようなマントを羽織るアレンジを加えた大正ロマンなバンカラスタイル風。

 衣装の色は光合成を行うために緑色、制帽の正面にはどこかの校章のようにドングリをあしらったレリーフを付けた。


【蓄光】ソイルによって明るい場所で溜め込んだ光を任意で解放でき、対死酸耐性を始めとした現状では最高の特殊効果を付与してある。


 彼の元のレベルを考えれば弱すぎる性能の装備だが、酸などの腐食ダメージに対してはアップデート前では類を見ないほど強い装備となった。


 装備で強化された耐性はギガダストに乗り込むことで更に増幅され死酸に対抗する強固な盾となる。


 起き抜けに蜜のように甘く絡んで来たデトネイに対死酸付与を行ったアクセサリー…蓄光ドングリのペンダントを投げつけて追い払い。


 遂にペスティサイダーは死酸島の奥を目指して出発した。


コメント、ブクマなど評価色々、募集中です。


次回更新は未定です。


たぶん来月になります。

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